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2017.11.06

あそぶ

手軽に味わえる非日常。ガスコンロから旅立つ「俺の燻製クエスト」


37.5歳、はじめての燻製vol.1
美味しく楽しめて、工作感がある。しかも、お酒のアテにぴったり。そんなオッサンの欲望を満たしてくれるのが“燻製”。アウトドアではもちろん、自宅でも作ることができて、高い人気を誇る男の趣味である。しかし、はじめの一歩踏み出すにはちょっとしたハードルを感じることも……。そんな燻製初心者へ、最初のハードルを越えるための短期連載をお送りしよう。
燻製器の蓋を開けると、えもいわれぬ薫香が立ち上る
独特の風味が食欲を刺激し、酒もまた魔法のように進ませてしまう燻製。このところ、様々なところで話題になっている。アウトドア料理として古くから知られているド定番な存在だけに、いまさら“ブーム”と評するのもためらわれるが、この1〜2年は燻製を売りにした店が増えただけでなく、燻製を題材にした漫画も人気。大手家電メーカーが燻製用ロースターを売り出すなど「燻製がキテる」ことには違いはない。
そこで燻製作りにはどのような魅力があるのか、水道橋にあるアウトドアをコンセプトにしたカフェ「cafe&ber BASE CAMP」の店長にして11月17日に『THE男前燻製レシピ77』(山と渓谷社)を上梓する、A-SUKEさんに聞いてみた。

「領域侵すべからず!?」燻製で手軽な日常を楽しむ

「燻製の楽しみを一言で言えば『手軽に非日常を味わえる』ってところですかね? 最近は、台所でも燻製が作れるスモーカーなども出ているので、実はかなり手軽なものになっています。それでいて毎日食べるようなお母さんの料理ではないところがいい」
A-SUKE。1978年生まれ。自身のアウトドア好きから、同じ趣味の人が出会い、集う場所作りを仕事にしたいと考え、プロダクトデザイナーからアウトドアカフェの代表に転身。
「それに男が料理をしすぎると、時に面倒なことになる場合があるでしょう? パートナーの女性も料理できる人だと得意な領域を侵すことになるし、そうでなければ『得意ならやって!』なんて全料理の担当にされるとそれはそれで負担になるじゃない。まあ当人が料理好きなら問題ないんだろうけど(笑)。
さておき最近は、燻製をやる女性は増えたとはいえ、まだまだ『男の料理』のイメージだし簡単でありながらどこか『本格的』なイメージもあるから、出せばまず間違いなくウケる。日常の料理と切り離して考えられるし、程よく手間と時間がかかるから成し遂げた感もある。男性が趣味的に手を出す料理として丁度いいわけですよ」
もちろん、その風味も他の調理では得難いものではあるが、燻製には他の料理にはないこうしたメリットがあるようだ。
ところで「燻製作りに使う木材、チップには素材ごとに適した種類がある」だとか、「燻製のやり方には種類があり、保存性が異なる」というような話を聞いたことがあります。初心者であれば、どのあたりの知識を身についておけばよいのでしょうか?
今ドキ燻製は、ガスコンロの上で手軽に作る。写真はA-SUKE氏が実際に店で使っているスノーピーク社のコンパクトスモーカー。使い込んだ「男の道具」感にそそられる
「初心者、というか家庭で楽しむ分には細かいことは気にしなくていいんじゃないですかね? 燻製のハウツー本にしろ、ひと昔前は例えば肉なんかだと1週間は塩漬けして、次に塩抜きして、乾燥だーなんてやってからようやく燻すべき。なんて、保存を第一に考えた説明ばかりでしたけどね。狩猟で肉を得ていた時代と違って今は店に行けばいつでも肉は買えるし、冷蔵庫だってあるんですから。あんまり難しく考えず、保存は度外視してとりあえずやってみればいいんです。チップにしたって、肉なら何それ、魚なら何それじゃないと向かない〜なんて知識で悩むこともない、というのが私の持論です。細かいことは、やってみて好きになってからこだわればいい。そんなある種のいい加減が許されるのも燻製の魅力といえるかもしれません」
さらに続けて「スモーカーだって、要するに煙を閉じ込める燃えない入れ物があればいいのだから、必ずしも専用のものを買わなくてもいい。中華鍋でもできるし、直火を当てないようにすればその辺の段ボール箱でもいい」そう語るA-SUKE氏であった。
ザ・男の料理。取材時に振舞っていただいた燻製料理も話を聞くうちにあっという間に完成
始めた後には、広大な世界が待っている。しかし、入り口はあくまで広く、低くというのが現代燻製スタイルの模様。
「ちなみにウチの燻製はどんな素材にも無難に使え、燻製初心者にもおすすめとされているサクラのチップを使ってます。それを知るとちょっと燻製に詳しいお客さんが、がっかりしたような反応をされることもあるんですけどね。
ぼくはさんざん試した結果、例外はあるものの、木材ごとの違いは香りというより、煙の量の側面が強いと感じた。だからチップを素材ごとに使い分けるのではなく、燻す時間で調節するスタイルに辿りついたんです。燻製はまだ誰も試していない素材とか、やり方がきっとあるはず。失敗もしながら、まだ存在しない正解を自分で見つけていくってワクワクするじゃないですか」
さしずめ、燻製とは未開拓のオーシャンへフロンティアを探しにいくといったところか。男ゴコロをくすぐる冒険の旅へ出発してみては?———などと、煙に巻いたようなオチに騙されたつもりで、未体験の方も燻製作りに挑戦して欲しい。決して損はしないはずだ。
取材・文=宇都宮雅之
写真=澤田聖司
<監修者紹介>
A-suke。アウドドアをコンセプトにしたカフェ「cafe&ber BASE CAMP」代表。アウトドアスポーツ、アウトドア料理の知識を生かし、雑誌への寄稿も多い。また、燻製やフライフィッシングなど各種ワークショップも手がける。
cafe&ber BASE CAMP
住所:東京都千代田区三崎町2-22-8 梨本ビル1F
電話番号:03-5213-4884
営業:11:30〜24:30(L.O24:00)
土・日・祝定休
 


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