風呂とオッサン vol.5
家庭を持つオッサン世代にしてみれば、風呂はひとりになれる数少ない場所。日々の疲れを癒やし、明日への英気を養うためのエナジースポットだ。しかしそのことを意識せず、ただ“気持ちよく”入っているだけの人がほとんどでは? いやいや、風呂の楽しみは深い。身体の調子を整える健康効果、そしてエンタメ溢れる小さな個室。すなわち、探求の余地がある“風呂ンティア”なのだ!
「風呂とオッサン」を最初から読むプロサウナー御用達! 極上の「ロウリュ」が味わえるサウナとは?
最近、サウナが熱い。いや、サウナが熱いのは当たり前だが、ムーブメントという意味でもじつにホットなのである。多くの著名人がサウナ好きを公言し、「サウナー」と呼ばれる愛好家が集まる「サウナサミット」は、回を追うごとに参加人数が増えているという。数年前には、大手出版社からサウナ専門誌も発刊された。
こうした盛り上がりを受け、サウナ施設自体も進化しているようだ。朝夕のダブルヘッダーを含め週14でサウナに通う“プロサウナー”のヨモギー氏はこう語る。
「古き良き昭和サウナが次々と姿を消す一方で、何種類ものサウナが楽しめる大型施設が増えています。また、本場フィンランドのロウリュや、ドイツのアウフグースなどを採り入れるところも本当に多くなりましたね」
「ロウリュ」はフィンランド式サウナ入浴法。サウナストーンにアロマ水をかけて熱い蒸気を発生させ、室内の温度を一気に上げて発汗を促す。また、「アウフグース」は、その水蒸気を“熱波師”がタオルで仰いで攪拌し、客に熱風を浴びせかけるものだ。ロウリュやアウフグースは「客を呼べる」(ヨモギー氏)ため、導入するサウナが増えているというが、設備のクオリティや熱波師の腕には、施設によって差があるという。
そこで、ヨモギーさんに極上のロウリュ、アウフグースが味わえるおすすめの施設を教えていただいた。
熱波師の技術は国内屈指!「大阪ニュージャパン・スパプラザ」「日本で最初に本格的なロウリュを展開し、その名を全国に広めたのが大阪のニュージャパン(大阪府大阪市中央区道頓堀2-3-28 ニュージャパンビル)です。梅田に1店舗、難波には専門のビルがあって、フロアごとに価格・雰囲気の異なるサウナが入っています。
ここの魅力は、何といっても熱波師のレベルが高いこと。本場まで研修に行き、それをさらに研究して磨き上げた独自の技術が光ります。特におすすめなのが、難波のビルに入っている『スパプラザ』という業態ですね。30分に1回、3~4人の熱波師が入れ替わりでアウフグースを担当しているんですが、それぞれタイプが異なる。ひと振りひと振りが重たいハード系の人もいれば、エレガントな風を送る人もいるんです。僕が好きなのは松本店長ですね。ドスンドスンとパワープレイ型で、サウナーの支持を集めています。
また、サウナ自体もikiサウナというスペックの高いシステムを導入していて、申し分ないです」(ヨモギー氏、以下同)
ロウリュの最先端がここにある!「サウナ&カプセル ウェルビー 栄店」
「名古屋でサウナ&カプセルホテルを展開するウェルビー(愛知県名古屋市栄3-13-12)も、正統派で良い施設です。熱波師のレベルも高く、全店舗でロウリュの研修を行うなどして切磋琢磨しながら研鑽を積んでいます。
自分でサウナストーンに水をかけて温度を調節できるセルフロウリュやヴィヒタ(※)などもかなり早くから導入していましたし、サウナ内でヨガをやったりと、革新的な取り組みで存在感を示していますね。ウェルビー発信で全国に広がっていったサービスも多く、ロウリュの最新トレンドをいち早く味わえるサウナでもあります。特におすすめは栄店、名駅店の『森のサウナ』で、セルフロウリュ&セルフヴィヒタを採り入れた本格的フィンランドサウナ体験が楽しめます」
(※ヴィヒタ……白樺の小枝を束ねたもの。ロウリュ後の火照った身体を叩くことにより血行を促進する)
■大規模リニューアルでロウリュも強化!「スパ ラクーア」
「東京ドームシティにあるスパ ラクーア(東京都文京区春日1-1-1)は最近(2017年10月)、大規模な改装が行われました。2003年のオープン以来、初めてのリニューアルですね。まあ、そもそもリニューアルする必要がないくらいキレイで館内設備も充実していたのですが、15年という節目を前に大きく手を入れたのは、今後も長く続けていこうという意志表示ですよね。
こちらの魅力は、サウナの種類の多さ。室温の異なる3つのサウナに、リニューアルで新たにフィンランド式サウナも加わりました。ちなみに、新しいサウナは、セルフロウリュになっています。
アウフグースは1日3~4回。熱波師は技術そのものも高いんですが、シンプルで無駄のない所作もいいですね。淡々と、パワフルに振り回して室内にまんべんなく熱波を届けてくれます。個人的にも好みのタイプのアウフグースですね」
アウフグースからの水風呂で昇天
では、サウナーが激推しするこれらのサウナではどんな体験が待っているのか? 実際、ヨモギー氏とともに筆者もスパ ラクーアを訪れ「アウフグース」を体験してみたところ、これがスゴかった!
熱波師はまずタオルを頭上で振り回し、空気の流れを作る。すかさずヒノキのアロマ水をストーンにかけ、再びタオルを回して熱い水蒸気をサウナ室全体へ送り込んでいく。頭上から降り注ぐ凄まじい熱風を背中で受けとめると、瞬間、大量の汗が噴き出した。これを2セット繰り返すのだが、2回目はさらに体感温度が上昇。方々から「オッフ…」「ヒャー…」といった、恍惚(?)の声が漏れる。汗腺がぶっ壊れたんじゃないかというほどの汗が流れ出て、体内の毒が一気に排出される感じ。めちゃくちゃ熱いが、とてつもなく爽快だ!
そして、すぐさま飛び込む水風呂がこれまた最高。開ききった毛穴をキュっと引き締め、天にも昇る心地良さ。アウフグースで火照りまくった身体にキンキンに冷えた水風呂が染みわたり、トランス状態へと誘ってくれる。
家風呂では決して到達できない圧倒的な爽快感、リフレッシュ感。心身ともに充実し、生まれ変わったような気分だ。ロウリュ、アウフグースがもたらす感動、あなたもぜひ味わってほしい。
取材・文/榎並紀行(やじろべえ)