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2017.10.06

ライフ

コスパ最強の疲労回復術! 40℃で10~15分の“風呂活”に注目

風呂とオッサン vol.1
家庭を持つオッサン世代にしてみれば、風呂はひとりになれる数少ない場所。日々の疲れを癒やし、明日への英気を養うためのエナジースポットだ。しかしそのことを意識せず、ただ“気持ちよく”入っているだけの人がほとんどでは? いやいや、風呂の楽しみは深い。身体の調子を整える健康効果、そしてエンタメ溢れる小さな個室。すなわち、探求の余地がある“風呂ンティア”なのだ!

ストレス過多な現代人。多忙な日々で疲弊した心と身体をじんわり癒してくれるのが、「お風呂」だ。入浴により疲れが取れるのは、実は医学的にもしっかりとした根拠がある模様。そこで、お風呂が疲労回復にもたらす効果について、日本で数少ない入浴の専門家・東京都市大学の早坂信哉教授に教えていただいた。

風呂の「温×圧×浮」のトリプルコンボは最高の物理療法のひとつである

お風呂の効能の前に、そもそも「人間の疲労」ってどんな現象なのだろうか?
「人間の身体は細胞が酸素や栄養分を受け取り、それを燃やして活動しています。その際に出る燃えカスがいわゆる二酸化炭素や乳酸などの『老廃物』と呼ばれるもので、これらが疲労につながると考えられています。しかし老廃物は多種多様で、そのメカニズムは一言では語れません。楽しいスポーツをすれば疲れないけれど、嫌な肉体労働をすれば疲れるなど、同じくらいの労力の活動をしていても、疲労の感じ方は異なるからです。ただ、少なくとも何かしらの燃えカスが疲労感の要因になっていることは明らかです」
この燃えカスがスムーズに代謝されず、蓄積されることで疲労感も強くなるそう。ちなみに、加齢とともに代謝が悪くなると、燃えカスも増え続けるという。
そこで、疲労回復に有効なもののひとつが“風呂”である。
「老廃物の排出方法としては、血流を良くすることが挙げられます。そこで、大きな効果が期待できるのがお風呂の『温熱』『静水圧』『浮力』の3つの作用。『温熱』については、身体が温まることで血管が広がり、血流促進につながります。また、『静水圧』はお湯の重さや圧が身体にかかることで、身体が締め付けられ血流を促します。そして『浮力』ですが、身体が浮くと筋肉の無駄な緊張が取れ、これも血管の拡張につながります」
疲労回復には血の巡りをスムーズにすることが最も大切。そのために、入浴ほど身近でリーズナブルな方法はないといいます。
「皆さん、栄養ドリンクやサプリメントの摂取など、疲れを取るためにいろいろなことにトライされますよね。ただ、入浴は医学的な言い方をすれば、『物理療法』のひとつに分類されるので、他の方法と異なりストレートに身体に効くものなんです。毎日入ったとしてもコスパは抜群ですよね」
早坂教授によれば、水が貴重な国では「入浴=特別な治療行為」として扱われるそう。自宅に浴槽があり、毎日の入浴が当たり前という環境は世界的にも珍しく、恵まれているのだとか。

風呂の効果を高める「湯の温度」「入浴時間」「タイミング」

では、さらに疲労回復効果を高める「理想的な入浴方法」とは、どのようなものなのだろうか?
「心臓が悪い、呼吸機能が落ちている、など特別な注意が必要な場合は別ですが、基本は全身浴がベストです。一時期は半身浴ブームもありましたが、全身浴の方が『温熱』『静水圧』『浮力』のすべてにおいて効果は2倍です。また、湯の温度は40度が理想で、10分から15分を目安に浸かってください」
ちなみに、熱いほうが好きだからといって42度以上の設定にするのは避けたほうがいいそう。身体が熱さに対抗するべく交感神経が優位になり、リラックスとは逆方向の興奮状態になってしまうようだ。
また、風呂に入るタイミングも重要とのこと。
「食後30分から1時間は空けてから入浴してください。というのも、入浴すると皮膚の表面が温まり、血液が集まってきます。そのため、本来は消化のために胃腸に向かうべき血液が皮膚に取られてしまい、消化不良につながりかねません。また、寝る90分前の入浴が理想です。入浴するといったん0.5度から1度体温が上がり、その後に下降していきます。その、ちょうど体温が落ちてくるタイミングで眠りに入ると、良質な睡眠が取れます」
整理すると、仮に23時に眠りたい場合、20時までに食事を済ませ、21時半までに入浴するというスケジュールが望ましいということになる。なお、入浴ではおよそ800mlの水分が失われるため、前後でしっかりと水を飲むこともお忘れなく。
仕事が忙しいとついシャワーだけで済ませてしまいがち。しかし身体のためを思えば、毎日の計画的な“風呂活”が、健康に大きく貢献してくれることは間違いなさそうだ。
【取材協力】
早坂信哉さん/東京都市大学人間科学部教授
1968年生まれ。自治医科大学医学部卒業後、地域医療に従事。2002年、自治医科大学大学院医学研究科修了、同大学医学部総合診療部、浜松医科大学医学部准教授、大東文化大学教授などを経て、現職。博士(医学)、一般財団法人日本健康開発財団温泉医科学研究所所長、温泉療法専門医。著書に『たった1℃が体を変える ほんとうに健康になる入浴法』(KADOKAWA)、『入浴検定 公式テキスト お風呂の「正しい入り方」』(日本入浴協会)がある。
http://hayasakashi.wixsite.com/bath/resume
末吉陽子(やじろべえ)=取材・文


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