ただ暖かいだけのコートにうんざりなオッサンたちへ。ここで取り上げるのは、どれも派手さはないが、秀逸なエピソードを持っているものばかり。記された「自己PR」を読めば、どれもこれも採用したくなってしまうから、ご注意を。
「レギュレーション ヨウジヤマモト メン」のドクターズジャケットモードを象徴する色といえば、黒。そのきっかけを作ったのが、のちに「黒い衝撃」と称されるショーを1981年に行った山本耀司さんだ。こちらは「大人になっても不良の心を忘れない男たちの制服」をイメージしたラインで、ヨウジ流のベーシックで長く着られるアイテムを提案している。このドクターズジャケットは、コートとジャケットの中間的存在。
素材はシワ加工を施したカジュアルなウールで、シルエットはゆったり。ゆえに、都会的なスタイリングはもちろん、海上がりにガウンみたいに羽織ってもいい感じだ。ヨウジ初心者にも、究極に普遍的な黒いコートを求める人にもおすすめ。
「カンタータ」のダッフルコート漁師の作業着が起源で、英国海軍が採用したという背景もあって、トラッドスタイルにも欠かせない。ダッフルコートは、男のワードローブを語るうえで避けて通れないのだが、とんでもないものを見つけてしまった。キログラムメルトンと呼ばれるズシリとした重量級の生地は、なんとカシミヤ100%製。触れたときのスベスベ感は官能的で、ある種のエロスを感じられる。
こんな禁断の品を作ってしまったのは、数々のブランドに携わった松島紳さんが始めたカンタータ。日本最高峰の機屋や工場とのリレーションで作られたコートは、一生モノどころか、何代にもわたって継承できそうなスゴみがある。
「オーバーコート」のドルマンスリーブコート「サイズレス」「ジェンダーレス」を掲げ、NYに拠点を置くコートに特化したブランドから。なんとこれ、襟下から肩先に独特なプリーツがあって、例えば男女のように体格・身長が異なるそれぞれの肩幅に合う、手品みたいに不思議な仕掛けなのだ。
身長186cmガッチリ体型のモデル着用写真は上のとおり。これを170cmの人が着用したら、膝下丈のたっぷりしたサイズ感になって格好良い。脇下が大きい理由は「極寒のNYでコートの下にダウンジャケットを着られるように」。大小2サイズ展開で、シェアする相手や着方に合わせてお好みで選んでほしい。メルトン素材の重厚感もいい雰囲気だ。
「ヘルノ」のシングルベルテッドコートお洒落なアウターに興味はある。けれど、見た目の個性が強いやつが多くて「気が引けてしまう」。そんな同輩もいるだろう。そこでとっておき。70年近い歴史を持つ名門で、昨今ダウンウェアでも支持を集めるヘルノのアーティストコラボだ。
毎シーズン、心待ちにしているファンもいるという取り組みで、今季は印象的なパッチワーク柄のスカーフで有名な、フランス人デザイナー、ピエール=ルイ・マシアとのもの。一見ベーシックな見た目のコートの裏地には、ブルーを基調にしたさまざまな柄をパッチワークしたプリント生地が! こういう密かな特別感を待っていた人、実はすごく多いはずだ。
「ニール バレット」のシングルトレンチコート「男は背中で語る」を地で行きたい、バックシャンコートを求める方へ。シンプルなシングルトレンチコートの背面と左胸に大胆にプリントされた人物は、ニール・バレット本人が学生時代に傾倒した英国パンクバンド、スージー・アンド・ザ・バンシーズのボーカル、スージー・スーのもの。
発表されたミラノコレクションのショー会場でも、ひと際印象的だったコートで街角に飛び出してみたら、何かが変わるかも!?
「オフィシン ジェネラル」のチェスターコート気温はさほど低くなくても、冬の凍てつく寒さの原因は、多分、風。そんな防風対策をクラシカルなチェスターコートで。
ウール100 %でありながら防水・防風性に優れるロロ・ピアーナのスポーツファブリック「ストームシステム」を使用。さらに背の裏地に風を遮断するボンディング素材を使用。もうこれで寒さはどこ吹く風、だ。
個性がないのはつまらない。奇をてらったのはちと困る。そんなオッサンの心情に寄り添う、何年先までもワードローブに残るコート。そんな1着を身にまとって過ごすと、冬がもっと楽しくなるはず。