ここ最近、始める人がひそかに増えている楽器がある。それは、ハワイアンでおなじみのウクレレだ。音楽が多少好きなら、ジェイク・シマブクロの名を思い浮かべるかもしれない。彼の演奏でもわかるとおり、いまやウクレレはハワイアンにととまらず、ジャンルを越えて多彩な広がりをみせている。
そんなウクレレに魅せられた男が、湘南・七里ヶ浜にもいる。元は大手自動車メーカーのデザイン部、いまはウクレレ教室と工房「ukulele studio 七⾥ヶ浜」の代表を務める三井達也さんだ。
ちょうどウクレレが進化をはじめていく90年代後半に、現在の教室を継いだ三井さん。なぜ自分の城を構えるまでにウクレレに惹き込まれたのだろうか?
「ウクレレと出会ったのは大学時代。下宿先でポロポロと弾いている仲間がいて、その音色が気に入ったんです。本格的に始めたのは社会人になってから、23歳のときですね。27年前、ウクレレが全然流行っていない時代だったので、たまたま大阪出張で見つけた教本を頼りに加山雄三さんの『お嫁においで』を弾いていました」
そして、ウクレレ界の先駆者・ハーブオオタさんの演奏と、ukulele studio 七⾥ヶ浜の前オーナーとの出会いでのめり込むようになっていく。
「それ(1990年代)まではウクレレって、コードでジャカジャカとハワイアンを弾くだけだったんです。でも、メロディを弾く先駆者みたいな方、ハーブオオタさんが来日されたときの演奏をたまたまラジオで聞いて、衝撃を受けたんですね。そのあとすぐのタイミングで、七里ヶ浜でウクレレ教室やっているところがあるって同僚から聞いて。見学にきたら、メロディを弾いていたんですよ。それですぐに習い始めました」
さらに、前オーナーはウクレレのリペアやカスタムもやっていた。工業デザインの仕事をしていた三井さんは心を一層掴まれることになる。木を譲ってもらい作ったのを皮切りに、ビルダーの道にも足を踏み入れることになった。
転機が訪れたのは31歳。講習会で助手として手伝うようになっていた三井さんは、オーナーに教室を継ぐことを勧められたのだ。
「その頃、本業に迷いが出ていました。僕はどちらかというと自分で手を動かしたいタイプ。でも上に行くとデザインの決定権はあるんですけど、自分で絵を描いたり、モデルを作ったりはしなくなる。それって自分のやりたいことだったろうかって自問自答したりしていました。
あと僕はバブルの絶頂期に入社して、それが弾けて下降の一途を辿る時代を経験しました。自動車メーカーのデザイン部でしたが、販売強化をしなきゃってことで販売店に出向になって、2年間販売もしていたんです。でも作り手側だからいろんな事情を知っていて、わだかまりがありながら車に乗せている自分がいて。これってなんか正直じゃないなって。
じゃあ自分で作って、自分で売れば、正直でいられるな、とか。自分が責任を持ってちゃんとケアできたらそれが理想だよなって。その時に教室・工房を継ぐ話をもらって、ああそれができるんだなって思ったんですよね。それで決心したんです」
教室を継ぎ、工房を切り盛りし始めてから16年ほどが経った。けれど、ウクレレへの思いは尽きることはない。そこまで三井さんの心を離さないウクレレの魅力とは?
「やはり、ほどよく肩の力が抜けた音色と、存在感ですよね。バイオリンやサックスなどは自分の生活より高尚な位置にある。生活と切り離されているイメージ。でも、ウクレレってその辺に吊したりとか、ソファにチョンと置いてみたり。疲れたなって思ったらポロポロ弾いてみたり。自分の生活の中に音楽があるってことなんですね。それに、おもちゃみたいですけど、ハワイアンだけなく、スタンダードな曲やジャズもできるので、そういう意味で奥が深いというか、飽きないんです」
インタビュー中、三井さんは何気なく弾き語りをしてくれた。その音色と歌声は、自然体で軽やか。そしてウクレレへの愛が溢れていた。
取材・文=芋川健
写真=澤田聖司
※第7回の募集は終了いたしました。たくさんのご応募ありがとうございました。
【オーシャンズとレジャーの会 第7回イベント】ゼロからはじめる「ウクレレ講座」
【講師】三井達也さん(ukulele studio 七⾥ヶ浜代表)
【募集概要】日時:11月26日(日) ①午前の部 ②午後の部場所:BOMA Tokyo
〒150-0042 東京都渋谷区宇田川町33-8塚田ビル8F
TEL : 03-3464-2544
※直接会場までお越しください
定員:24名(午前の部/午後の部の入れ替え制)
参加費:
・雑誌OCEANS定期購読者:無料
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*雑誌OCEANS定期購読者の方は、お連れ様1名まで無料です。
*当日会場にて現金でのお支払いとなります。必ずご用意ください。
締め切り:2017年11月1日(水)
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