万能とは言うけれど、暗に漂う艶っぽさと自分のキャラとのギャップに距離を置く大人もいる黒。ただ、年齢を重ねてきた今なら、きっと真摯に向き合える。40代も半ばを迎えた種市さんも、最近それを実感。参考にしたのは、90年代のNYファッションを彩ってきたあの人だ。
「種カジのタネあかし」を最初から読む今回は、珍しくほぼ全身黒で登場した種市さん。「昔は避けていた」という色である。ただ、年齢を重ね、髪やヒゲにも白いのがチラホラ。それが黒の艶っぽさを抑制してくれるという。
難なく取り入れられると話す着こなしはデニムオンデニム。黒×黒の不良(ワル)さをやわらげるべく、インナーのタンクトップには白を選んでいる。だからシャツも、サラッとカーディガンを羽織るイメージでフロントをオープン。ソリッドだけどソフトなモノトーン。これがタネ。
そのイメージは、’90年代のNYファッション。ケイト・モスがキャンペーンをやっていたカルバン・クラインや、ハーブ・リッツが広告を撮影していたDKNYだ。まさに、オッサンだからこそできる’90sモノトーン、ここにあり! である。
シャツのボタンは留めるなら真ん中らへんをふたつまで。だいたいインナーのタンクトップがチラッと見える程度。中途半端ぐらいが丁度いいのだ。これだと、首元のゴールドアクセも嫌味なく覗き、枯れ感に効くアクセントとなる。
足元は無造作にブーツインさせるのもひとつの手。それにより程よくワイルドになる。ポイントは豪快にクシャッとさせること。ちょいハミ出てもいい。逆に丁寧に折りたたんで入れるのは、チマチマ見えるのでやめておこう。
「本棚から引っ張り出してパラパラと見ていたら、黒が着たくなりました」と種市さんを触発した一冊。1995年にブランド10周年を記念し刊行された、ハーブ・リッツ撮影のDKNYの写真集「Modern Souls」で、まさにオッサンモノトーンの参考書。
自分の“枯れ感”と黒との良好な関係を実感し始めたという種市さん。シャツはウエスタンタイプ、ブーツは黒でデニムの裾はアウトと、随所に渋カジのテイストも盛り込んでいるから余計親近感が湧くでしょ。オッサンになったからこそ着たい。それが黒なのである。これ、きっと多いに賛同してもらえるのでは?
PROFILE
たねいちあきら●1972年生まれ、東京下町出身。大学は法学部にもかかわらずなぜかビームスに入社。現在はB印ヨシダ/ビームス プラネッツのディレクターとして辣腕を振るう。趣味はサーフィン。海でも人生でも!? 波に乗る男。インスタのアカウント @taneichiakira もチェック!
山本 大=写真