店員の人に愚痴っていたり、ずっとスマホをいじっていたり、さびしいと思われるのが心配だったり……。いやいや、男のひとり飯ってもっと自由で格好いいもんなんです! そこで目指すべきは“グルメ・ヒトリスト”。すなわち自由に食を謳歌する一匹狼です。女性が思わず惚れるような“グルメ・ヒトリスト”を目指すべく、ひとり外食の楽しみ方や振る舞い方を、達人に教えてもらいましょう!「ひとりで店には入れない」なんて後ろ向き。イメージが180度変わる、ひとり飯のすごい世界とは⁉︎
「ゼロから学ぶオッサンひとり飯」を最初から読む見知らぬ土地を、ひとりでぷらぷらと散策するのって楽しいですよね。自分を知っている人はほとんどいない場所で、自由に振るまえるのは気持ちのいい時間です。ひとり旅のときはもちろん、ひとりで出張に出たときも時間を見つけて散歩して、その土地ならではのお店を訪問するのが楽しみです。
とはいえ……慣れた土地の店でひとり飯をすることも緊張する人にとっては、見知らぬ土地で「ひとりで食事をする」のはかなりハードルが高いもの。お店を紹介してくれる知人もいないし、入店してアウェイ感が漂ったらどうしようと気になって、結局チェーン展開の定食屋やファストフードで済ませてしまう。そんな気持ちもわかります。
日ごろから出張の多い生活を送っている、本連載のアドバイザー・本郷義浩さんに、地方出張や旅行のときの「ひとり飯どころ」の探し方や選び方を教えてもらいましょう!
富永:本郷さんは出張に出たとき、どうやってお店を探してるんですか?
本郷:僕の場合、Facebookで複数の飲食グループを運営しているので、まずはそのメンバーに「今度、○○という土地に行くのだけれど、どこかおいしいお店を教えてください」と声をかけます。各グループでメンバー数は異なりますが、800人以上いるグループもあって、食通の方が多いので、誰かしら返信をくれます。ときには、お店に「知り合いの本郷さんが行くから」と連絡をしてくれる方もいて、ぐっと入店しやすくなりますね。
富永:知らない土地でひとり飯をする場合、紹介があるとハードルはかなり下がりますよね! 私も試したことがあるのですが、SNSを使って友達や知人に「いいお店を教えて」と声をかけてみると、案外レスポンスがあるんですよね。大きめの都市であれば、誰かしら出向いたことがあるので。
本郷:それがない場合は、ぷらっと歩いて目についた店に入るか、ネットでおいしい店を探して入ります。僕は数軒の店をはしごするのが楽しみなので、今度は一軒目に入った店の人に「このあたりで二軒目におすすめの店ないですか?」と聞いて、次の店を紹介してもらうんですよ。
富永:それはいいですね~。お店をやっている人なら舌も肥えているし、その土地で長く続いているお店であればあるほど、地元ならではの情報をたくさん持っていそうです。
本郷:愛媛県の松山に行ったときは、調べて入ったお寿司屋さんのご主人に「おいしいバーはないですか?」と聞いて、松山で古くから知られている老舗のバーを教えてもらいました。バーは評判通りにとても素晴らしかったので、今後はそのバーの店主に「もう一軒行こうと思うので、どこかいいところないですか?」を教えてもらって、三軒目に行きました。どれも大当たりでしたね。こういう“数珠つなぎ”で紹介してもらう方法は、知らない土地に行った場合に便利です。
富永:最初の店が見つからないときは、宿泊するホテルの人に聞いてもいいですね。「この土地出身で、おいしいものに詳しい人はいませんか?」と尋ねて、教えてもらうのも手。
本郷:地方出張の思い出でいうと、福岡の博多に行くといつも屋台に入ります。天神にある屋台はクオリティが高くて、とくに「雲仙」っていう屋台が断然うまい。味もさることながら、そこはお店の人がお客さん同士をつないでくれるんですよ。気づいたら、全員で会話していることもあります。はしご酒をせず、この屋台だけで夜が更けてしまいますね。
富永:地方でひとり飯をするときのこだわり、ほかにもありますか?
本郷:ちょっとマニアックですけど、その土地に残る「場末」感を楽しむのも快感です。地下街にある古い食堂とか、看板の色あせたスナックとか、昭和の路地裏にあったような「場末」の雰囲気……今は都市部にはほとんど残っていないけれど、そういう場所に行くと不思議な懐かしさがあります。そういう「今でもこんなとこ、あるんやな」っていう別世界に身を置いて、懐かしさに浸る。これは、ハマる人はハマると思います(笑)
今回、本郷さんが紹介してくれたお店は、上記のトーク内に出てきた、愛媛県松山市にある老舗のバー「露口」! 来年(2018年)でなんと60周年を迎えるそうです。
「ご夫婦ふたりで営む、1958年創業の老舗バーです。最初に行ったお寿司屋さんに教えてもらって、すぐに行きました。ご主人の露口さんは『ハイボールの達人』として知られていて、とてもおいしいです。これを頼まないとすぐ『お客さん、初めてですね?』とバレてしまうほど。かのイラストレーターアンクルトリスの柳原良平さんも飲んだそうです」
「素晴らしいバーでしたので、露口さんのおすすめを聞きたくて『もう一軒、バーに行くとしたらどこがいいですか?』と聞いて教わったのが、同じく松山にある『St Bar(セントバー)』というお店。そこを訪ねて、バーテンダーに『露口さんに聞いて来ました』と伝えたところ、『あの露口さんに推薦してもらえるなんて、こんなに光栄なことはありません! バーテンダーになってよかったです』と涙を流さんばかりに喜んでいました。露口さんは、バーテンダーの神様なのでした」
なんとも心温まるエピソード! 自分ひとりで調べているより、こうして地元の方々に協力してもらったほうが、せっかくの「地方ひとり飯の夜」を満喫できそうですね。さあ、次の出張や旅行のときは、あなたも“数珠つなぎ”ではしご酒、してみませんか?
「バー 露口」問:089-921-5364
住:愛媛県松山市二番町2-1-4
営:19:00~0:00
休:日曜、祝日
取材・文/富永明子
フリーライター。レシピ本の企画・編集、グルメ記事の執筆など、食に関する仕事のほか、美容やヘルスケア、ダイエットに関する書籍・記事も多数。趣味はクラシックバレエ。
取材協力/本郷義浩
毎日放送プロデューサー。1964年、京都生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、88年毎日放送に入社。「真実の料理人シリーズ」「ラーメン覇王」「ビビビのB級グルメ覇王」「あまからアベニュー」「水野真紀の魔法のレストランR」など、多くのグルメ番組に携わる。番組関連で取材した飲食店はのべ1万軒、プライベートでの食べ歩きも1万軒以上。近年は、世界でただひとりの麻婆豆腐研究家を名乗り「麻婆十字団」を結成。著書に『うまい店の選び方 魔法のルール39』(KADOKAWA)、『自分をバージョンアップする 外食の教科書』(CCCメディアハウス)がある。
『自分をバージョンアップする 外食の教科書』
本郷義浩(CCCメディアハウス)
「外食」を通して世界を広げることが、仕事もプライベートも今より充実させ、自分をバージョンアップさせる! 本郷さん自身の経験をもとに「冒険的外食術」「リーダーとしての外食術」「モテる外食術」など、具体的な外食の方法を解説した一冊。