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2017.05.30

あそぶ

職場でも家でもない、サード・プレイスを探す!世界が広がる、ひとり飯~前編


店員の人に愚痴っていたり、ずっとスマホをいじっていたり、さびしいと思われるのが心配だったり……。いやいや、男のひとり飯ってもっと自由で格好いいもんなんです! そこで目指すべきは“グルメ・ヒトリスト”。すなわち自由に食を謳歌する一匹狼です。女性が思わず惚れるような“グルメ・ヒトリスト”を目指すべく、ひとり外食の楽しみ方や振る舞い方を、達人に教えてもらいましょう!「ひとりで店には入れない」なんて後ろ向き。イメージが180度変わる、ひとり飯のすごい世界とは⁉︎
「ひとり飯」を最初から読む
「これといった趣味がない」。 今まで何度か、そんなことを男性にボヤかれたことがあります。かつてはもっと映画を観ていた。仲間とフットサルをやっていた。英会話の勉強をしていた。ビールが好きで、究めたいと思っていた。月一回はライブハウスに通っていた……。でも、忙しくて時間が取れないまま時が過ぎ、「趣味」と言えるものがひとつもない。会社と家の往復で日々が過ぎていく。
彼らがなぜ私に「趣味がない」とボヤいたかというと、私自身が多趣味な人間だからだと思います。自由時間が多いというわけではなく、仕事と趣味のバランスが取れていないとメンタルが落ち着かないタイプなので、少々無理をしてでも趣味の時間を確保しています。それを見て「なんでそんな時間があるの? 俺も昔はさ……」とボヤき始めるわけです。
確かに「趣味」となると、定期的に時間を確保する必要があって大変。でも、ボヤいた人の話をよく聞いていくと「人に語れる趣味が欲しい」というより、「仕事と家庭以外の場所が欲しい」「新しい人と出会って世界を広げたい」と思っているように聞こえることがあるんですね。そのためのとっかかりとして「趣味があればなぁ」と感じている。
そんなとき、世界を広げるために気軽に使えるのが「ひとり飯」ではないか? と私は思います。今回も“ひとり飯の達人” 本郷義浩さんと一緒に、世界を広げるためのひとり飯の方法や店選びのテクニックを考えてみました。
富永:この連載初回で「男性は40代に入ると定年が見えてきて、仕事と家族を引いたら、自分には何が残るかを考えるようになる」と言っていましたよね? つまり、男性は「もうひとつの世界を広げたい」と思うようになる。そこで役立つのが「ひとり飯」と本郷さんが考えるのは、なぜでしょうか?
本郷:最近読んだ本の中に「ウィーク・タイな関係の友達が多ければ多いほど、幸運がもたらされる」。という内容がありました。ウィーク・タイとは、弱い結びつきのこと。仕事や生活に密接した関係ではなく、ちょっとした顔見知りやSNS上でやり取りしている人など「知人」レベルの関係の人をうまく活用して生きていくと、たくさんのラッキーがありますよという話です。僕はまさにその、ゆるいつながりを通して、世界が広がったという実感があります。
富永: 弱い結びつきというのは、まさに飲んでいて知り合った関係の人も含まれますよね。たしかに、普段の生活圏内にとどまって、よく知っている人と話している限り、得られる情報の種類は似たり寄ったりになりがち。でも、生活圏外の人と話すと「その職種では、そんなことが話題なんだ!」とか「その土地では、そういうものが流行ってるんだ!」とか、知りようもなかった話を聞けることがあります。
本郷:食事の場を通すと、普段は知り合えないような人とつながりやすいので、ウィーク・タイな関係の知人が増えていきます。お酒の場なら、なおさら。そうして、彼らから得た情報を通して世界が広がり、だんだん職場でも家庭でもない「サード・プレイス」が増えていく。居場所はたくさんあるに越したことはないと思うんです。
富永:誰かと一緒にお店に行くと、お店の人と話すことはあっても、なかなか隣のテーブルの人たちと仲よくなる機会はありませんよね。ひとりで、しかも数時間滞在する食事の場だからこそ、知り合うチャンスは多い。
本郷:そうなんです。だから僕は、人とのつながりを広げるのに最適なのは、お寿司屋さんのカウンターで、ひとり飯をすることだと思うんですよ。
富永:お寿司屋さん、ハードルが高そうに思えますが……。
本郷:お寿司屋さんって、店のご主人が間に入ってくれやすいんです。たとえば、隣の人に出しながら「これも食べてみます?」ってこちらに聞いてくる。それで、隣の人がそれを食べているのを見て「どうですか?」って聞いて、話が始まるとかね。ご主人を中心に会話が広がっていって、カウンターの数人で意気投合して、二軒目に行く……なんてことも多いです(笑)。
富永:お寿司屋さんのご主人って、お話上手な方が多いですよね。空気を読むのに長けていて、こちらが話し好きだなと伝わると、いろいろ教えてくださることが多い。
本郷:僕は若いころ、対人消極性傾向を克服するために、ひとりで銀座のお寿司屋さんに通った時期があります。入店時は不安でいっぱいでしたが、1時間も過ごすと場慣れしてくることを覚えました。それを5回ほど繰り返した頃には、ずいぶん度胸がついて、一皮むけた気がしたものです。世界を広げる意味でももちろんですが、自分をバージョンアップさせる意味でも「ひとり寿司」はおすすめですよ。
ウィーク・タイな関係のなかには、SNSを通して知り合った人たちも含まれますが、本郷さんはそこを通しても、ひとり飯の世界がぐっと広がったそうです。その話はまた次回……。
さて、今回本郷さんに紹介してもらう「世界を広げるひとり飯」のお店は、もちろんお寿司屋さん! 東京・銀座にある「青空」さんは、「はるたか」と読みます。名店・数寄屋橋次郎で修業されたご主人は、一見のお客さんにも優しい方だそう。

「ほろ酔いになったころに、かならずお隣のビジネスマン風のお客さんに声を掛けられます。以前、そうして知り合った方と2軒目に行き、あとから青空のご主人も合流され、にぎやかな夜を過ごしました(笑)」と本郷さん。
ちなみに、銀座で寿司をいただくとなると気になるのがお値段。本郷さんの経験から「銀座で、ビールと冷酒2合に、お任せの握りをいただいて、だいたい3万円くらいと見ておけばいい」とアドバイスをいただきました。
ちょっと勇気は必要ですが、好きなお寿司をつまみ、お店のご主人や常連さんとの会話も楽しみ、そのうちにその場所が「職場でも、家でもない、自分の世界を広げるサード・プレイス」になる。そんなひとり飯ができる男性は、まさに格好いい「グルメ・ヒトリスト」! たまには思いきって、ひとり寿司に出かけてみませんか?

「青空(はるたか)」
問:03-3573-1144
住:東京都中央区銀座8-3-1 銀座時傳ビル 6F
営:17:00~24:00
休:日曜、祝日
取材・文/富永明子
フリーライター。レシピ本の企画・編集、グルメ記事の執筆など、食に関する仕事のほか、美容やヘルスケア、ダイエットに関する書籍・記事も多数。趣味はクラシックバレエ。
取材協力/本郷義浩
毎日放送プロデューサー。1964年、京都生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、88年毎日放送に入社。「真実の料理人シリーズ」「ラーメン覇王」「ビビビのB級グルメ覇王」「あまからアベニュー」「水野真紀の魔法のレストランR」など、多くのグルメ番組に携わる。番組関連で取材した飲食店はのべ1万軒、プライベートでの食べ歩きも1万軒以上。近年は、世界でただ一人の麻婆豆腐研究家を名乗り「麻婆十字団」を結成。著書に『うまい店の選び方 魔法のルール39』(KADOKAWA)、『自分をバージョンアップする 外食の教科書』(CCCメディアハウス)がある。

『自分をバージョンアップする 外食の教科書』
本郷義浩(CCCメディアハウス)
「外食」を通して世界を広げることが、仕事もプライベートも今より充実させ、自分をバージョンアップさせる! 本郷さん自身の経験をもとに「冒険的外食術」「リーダーとしての外食術」「モテる外食術」など、具体的な外食の方法を解説した一冊。



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