OCEANS

SHARE

  1. トップ
  2. ライフ
  3. こんな部下どうする? レベル12「買収した会社の社員が部下」

2017.04.17

ライフ

こんな部下どうする? レベル12「買収した会社の社員が部下」

「今度来る上司はどんな人?」 あなたへの“好奇の視線”にどう対処するか

レベル1「自己評価がやたら高い部下」から始まったこの連載も、いよいよ最終回。レベル12は「買収した会社の社員が部下」をテーマにしたいと思います。いくらなんでも“買収した会社のマネジメント”なんて、大企業や外資系企業じゃない限り、かなりレアなケースじゃないの?と思ったあなた。そんなことはありません。
「そんな部下でもイケてる上司でいられますか?」を最初から読む
人口減少やグローバル化の波の中で、日本の企業が競争を勝ち抜くには、新しい事業領域や市場を開拓していく必要があり、かつスピードを持って推進しなければならない。そうなると事業買収、いわゆるM&Aという手法がこれまで以上に重要となり、大企業だけじゃなく中小企業の経営戦略でも“当たり前”のように検討されていきます。
一口にM&Aと言っても、いろんなケースがあります。対等な買収だったのか救済的な買収なのか、国内なのか海外なのか、事業領域が似ているのか異なるのか――いずれにせよ、あなたが買収先にマネージャーとして送り込まれたときに直面するのは、「今度来る上司は、いったいどんな人間なのか」という好奇の視線。しかも、その視線は好意的なものでないことを覚悟する必要があります。
“買収された会社”の社員の心理は、「これまでと仕事の仕方が変わるのか、変わらないのか」「自分たちのどこが評価され、評価されなかったのか」「給与や待遇は下がらないのか」「評価や査定が厳しくなるのか」「会社の文化や風土まで変わってしまうのか」といったもの。自社に愛着を持っている社員ほど、新しいマネジメントに対し反発する心理が強くなる傾向がありますが、一方で変化によって会社がよりよくなるのなら、とあなたに期待を抱いている社員も必ずいます。
さて、あなたならこんな部下たち、どのように対処しますか?
正直、買収先のマネジメントに正解はありません。数年後に統合したことで事業の価値が上がっていれば成功で、そうでなければ失敗。結果論でしかありません。それでも、結果を出したM&Aの事例を見ると、一つのキーワードが浮かび上がってきます。それは「エンパワメント」です。
個人や組織が、そもそも持っている潜在的な力をどう引き出すかが、買収先でのマネジメントの腕の見せ所

「信じて、任せる」マネジメントこそ、“イケてる上司”が目指すべき指標

「エンパワメント」とは、社会福祉の領域では「支援を必要としている人の本来もっている能力を引き出し、本人が主体的に抱える課題に対処できるよう支援すること」とされます。これをビジネスに翻訳すれば「人や組織の潜在力を引き出し、主体的に自社の課題を発見し解決していくようにマネジメントを行う」となるでしょうか。平たく言えば、「信じて、任せる」ということです。
ここで「エンパワメント」の代表的な事例を2つ紹介したいと思います。まずは“奇跡の職場”といわれた新幹線清掃チームです。正確に言えば買収事案ではありませんが、取締役に就任して改革に取り組んだ矢部輝夫氏は、普通のおじさん・おばさんの行う“たかが清掃”の仕事を、“新幹線劇場”と再定義し、誇りを持ってもらうことに成功しています。矢部さんが現場に飛び込んで語り続けたのが「(社会の)川下(の仕事)と卑下しないでほしい。みなさんがお掃除をしないと新幹線は動けないのです。だから、みなさんは、お掃除のおばちゃん、おじちゃんじゃない。世界最高の技術を誇るJR東日本の新幹線のメンテナンスを、清掃という面から支える技術者なんです」という言葉。これぞまさに「エンパワメント」を意識した上司の発言でしょう。
次にリクルートの海外事業買収「indeed」の事例です。この買収後のマネジメントを行った出木場久征(いでこば・ひさゆき)氏の言葉も印象的なのでご紹介します。「ゴルフに例えると、オーナーは、カップの場所を決めて、パーの数を決めて、プレーヤーを選んで、あとは任せる。パー4と決めたら、途中どのルートを通ろうと、4打で入ればいい。これが「優れたオーナーシップ」です。任せる範囲と期間を決め、ベストとワーストの幅、ワーストの場合のリスクを見極める。そのうえで育てたいと思うリーダーを任命すること。リーダーの次は目標を決める。パー4なのか5なのか。そして方向性を示し、相談に乗る。あとは信じて任せる。たとえ1打目にパターを持って出てきたとしても任せることです(笑)」
「信じて、任せる=エンパワメント」は、別に買収先のマネジメントだけの話ではありません。“人を、組織を、会社を動かすための最もシンプルな考え方”だといえます。オーシャンズ世代のイケてる上司は、このシンプルだからこそ難しいキーワードを指標に、日々の仕事に取り組んでいただければ。。。なーんて、偉そうなことを12回も書いてきた私ですが、正直まだまだ“イケてる上司”にはほど遠い状況です。みなさんと同様、日々悩みながら精進して行きたいと思います。
参考文献:
東洋経済オンライン 「『新幹線のお掃除』に一流が学びを求める理由」
http://toyokeizai.net/articles/-/134844?page=2
Newspicks SPEEDA Conferenceレポート「【出木場久征】Indeed買収の際に意識した「統合をしないPMI」
https://newspicks.com/news/2085547/body/
取材・文/藤井大輔(リクルート『R25』元編集長)



SHARE

次の記事を読み込んでいます。