データを分析してみると経験的に得た知識が正しいことがわかる
ついに、この日が来てしまった。めくるめくスナック連載、最終回である。
スナック好きが高じて2015年に「スナック研究会」(
http://snaken.jp)を立ち上げた首都大学東京の法学系教授・谷口功一氏。スナック好きが高じてスナック検索サイト「スナッカー」(
http://snacker.jp)を開設した平本精龍氏。
「『スナック』という名の愉悦」を最初から読む当連載では、この二人にスナックの魅力をさんざん語ってもらった。ならば、最終回はスペシャル対談にしたい。
谷口 平本さんにはスナックのデータ分析についてご指導いただき、本当に感謝しています。おかげさまで、他の色々な統計との相関をとったりして遊んでしまうぐらい面白いデータベースを作り上げることができました。
平本 こちらこそお役に立てて嬉しいです。
谷口 データを分析してみると経験的に得た知識が正しいことがわかったりもします。たとえば、農漁村は人口あたりのスナック軒数が多いとか。
平本 高知県に奈半利(なばり)町という海沿いの町があるんですが、人口は3000人ちょっとなのに人口比にすると日本で4番目にスナックが多い(笑)。
谷口 ところで平本さん、初スナック体験は何歳の頃ですか?
平本 たしか、22歳とかでした。会社の忘年会の二次会で連れて行かれて、「あれ、スナック楽しいじゃん」ってなりました(笑)。
谷口 僕は実家が別府の歓楽街のど真ん中なので、子どもの頃からスナックに囲まれて育ったんです(笑)。父も飲み歩く人でして、道すがら出会うスナックのママと挨拶したりしていたのを子供ながらによく覚えています。初めて入ったのは、大学生になってから父に連れられて行った時ですね。
スナックは社会勉強の場としては最適だと思います
平本 さんざん通ってわかったのは、スナックはとにかくママ次第ということ。
谷口 いいママが切り盛りする店は、わざわざ遠方から来る客もいるもんですよね。
平本 私はふらっと入った店で客が誰もいなくて、かなり年配のママの愚痴を延々と聞かされるという目に遭ったこともあります。もちろん、その店だけは二度と行きませんけど(笑)。
谷口 旅先でのスナック巡りもたまりませんよね。
平本 一時期、出張で地方によく行ったんですが、郡山、富山、金沢、沼津、諏訪、たしかに、それぞれの街と訪れたスナックはセットで思い出になっています。
谷口 そういや、名古屋の錦三丁目のスナックで名刺を渡したら、後日お礼状とネクタイが届いたことがあってビックリしたことがありました。ものすごい営業力で感服するしかないですね。
平本 そこまでされると抜けられないですね(笑)。行ったことはない店でも「スナッカー」絡みでママとメールのやりとりをすることがあるんですが、できるママの文面はまあ丁寧です。
谷口 夜の街では不思議な経験をすることも。20年ぐらい前に高知に行った時、とある店の前で知らない男性に声をかけられて「この店は高知に初めて出来たキャバクラなんだけど、キャバクラってよくワカンナイから、よかったら一緒に入ってもらえない?」と。
平本 それ、怪しくないですか?(笑)
谷口 いや、直感で信用できると思って入りました。いっしょに飲んでいるうちに意気投合して、二軒目はその人の馴染みのスナックに移動。結局、お会計は全部出してくれました。いい思い出です(笑)。
平本 いずれにせよ、スナックは社会勉強の場としては最適だと思います。
谷口 若者には敷居が高いように感じられるかもしれないので、ぜひ年上の人が連れて行ってあげてほしいものですね。これ以上の社会勉強の場はないですから。
平本 さらに、外国人にも、この日本独自の文化を知ってほしいですね。2020年の東京オリンピックに向けて海外からの観光客もますます増えるでしょうし。
谷口 そうなんですよ。外国人向けのガイドブックを作ればイイぐらいです。スナックこそが日本が世界に誇る「おもてなし」の心を体現した存在でしょう!
熱いスナックトークはまだまだ続く。二人ともじつに楽しそうだ。この連載で少しでも興味を持ったあなた、今宵こそスナックの扉を開けてみてほしい。扉の先には「スナック」という名の愉悦が待っている。
取材・文/石原たきび