今回の放送禁止用語、「いやそれは言ったことないわ」という殿方と「……結構言ってるかも……」のかたとだいぶ両極端に分かれるのではないかと思っている。私が普段いる、メディアや広告、そういったジャンルの業界にいる人に多く見られる傾向なような気も、なんとなくしている。と、少し偏った感じの放送禁止用語となるが、私を含め女性陣にはだいぶ気になる(気に障る?)ひと言なのでお耳をお貸しくださいませ。
「37.5歳的 放送禁止用語」を最初から読むフワッとした“何か面白いこと”…… ってなんやねん。例えば久しぶりに会った学生時代の友人や昔の職場の人、お仕事が同じ業界の年下女性などとの別れ際、「じゃあまたね!」と同じ感覚で発するこちら。
「今度なんか面白いこと一緒にしようよ!」もしくは何かの折に突然こちらに向きなおってあたかも何かとてつもなくスペシャルなことを思いついたように言う「そろそろ何か一緒に面白いことしようよ!」。
聞いたこと、もしくは言ったこと、ありますか?
もしくはFacebookなどのお誕生日メッセージなどでもつい、こんなの使っちゃっていませんか? 「お誕生日おめでとう! そろそろ何か面白いこと一緒にしよう!」と。
これは使い方が“トリッキー”であるという意味で放送禁止用語に制定したいワード。
本当に何か同じジャンルで活躍している人同士、「最近一緒に仕事してないね、何か共同でプロジェクトをやろうよ」などと具体的な意味がこもっているのならばそれはもう、こちらはぐうの音も出ませんし何も申し上げることはありません状態なのだが、これを言う人の大抵はフワッとした具体的な案もない“何か面白いこと”を描いているし、これまた大抵の場合……というか99%実現しない。
そもそも「何か面白いこと」という言いかたをしている時点できっとその「何か面白いこと」を考え出せる面白い人ではないのだなという感じを露呈してしまっているのが残念だし、謎の“ネオ意識高い系”な雰囲気が滲み出てしまって「あれ……この人こっち系だったのか……」とつい評価が下がってしまいがちなのである。
“YES”しか出口のない誘いの暴力反対!そしてこれには“断れない誘いの暴力”が含まれていると思う。
社交辞令で言っているだけとか、慣習でまぁそう言ってしまうとかの理由もあるかとは思うが、つい私のように見た目によらず真面目な人間は“断れない誘いの暴力”にただひたすら屈してしまうのだ。
つまり、「今度何か面白いことしようよ!」は一見とてもポジティブで未来に光がありそうな言葉だし、言外に“誰もがこの提案にはYESと言うだろう”というプレッシャーを含んでいるのでいくらその人と「何か面白いこと」がしたくなくても「あ、いえ、結構です」とは絶対に100%言えないのである。
少なくとも我々の生きる今の社会構造の中では、無理である。だから私はこういう年上男性に出会うと、こんな強気な文章とは裏腹に「は、は、は……はい、そそそそそうですね……し、しましょう、な、何か面白いこと……!!!!!」とやけくそで自ら放送禁止用語を叫び倒す結果に終わるのである。
“どや顏丸投げ”だけをやめればOK! ではどうするか。
何をその人としたいか具体的に思いついた時点でお誘い、でいいのでは。
当たり前のことを言っているようだが、そうなんです。つまりこの放送禁止用語は当たり前じゃない何かを発している、だからNGなのだ。
あなたの頭に浮かんでいるその“何か面白いこと”が具体的になった時点でお誘いを。
仕事でもプライベートでも世の中には“何か面白いこと”なんてそこら中に転がっていますので……どうぞぜひそちらを少しでもピックアップしていただいてからお誘いを、どうか……どうか。
もしくは、一緒に何か面白いことを探そうよ!であれば別れ際にどや顏で丸投げせず「仕事で一緒にこんなことしたいね」や「休みにみんなでこんなことしようよ」とか。
とにかく“何か面白いこと”という言葉をどや顏で言い放たなければ、放送コードに引っかかることもない、のである。
文:岡野ぴんこ
N35inc.に所属するテレビ・ラジオの構成を手掛ける放送作家。
担当番組に、ZIP!(NTV系列)、another sky(NTV)、SENSORS(NTV)、マッチングラブ(TBS)などがある。
ファッション、ライフスタイル、レストランカフェ、旅、アウトドア、DIY・・・など興味は多岐に渡り感度絶好調のアンテナを持つ。女性がときめく情報、ビジュアル、瞬間は逃さず受信。自らのスタイル、文章、写真、映像、様々な表現で発信している。
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