音楽好きのオッサンが今こそ聞くべき曲とは。
ビームスレコーズ ディレクターの青野賢一さんがセレクトする、珠玉の10曲をご紹介。
ここ数年で日本の若手の作品に“いいもの”が多くなっている。そこで今回は、主に2010年代以降に活動を開始した人々にフォーカス。
大きなひとつの傾向というのは明示しにくいが、強いていうなら、海外からの影響を受けた’70年代、’80年代の上質な日本のポップスを参照していそうなところ。そこに日常と地続きの歌詞やリリックをのせているあたりから、新旧や国境をフラットに捉えているようにも感じる。
懐かしくも新鮮な2010年代の音楽に、ぜひ触れてみては。
「オーシャンズコンピ」を最初から読む#1.SSWB / D.A.N.タイトかつミニマルなクラウトロック的にも思えるサウンドに、透明感たっぷりのボーカルがメロウネスを添えるトリオ、D.A.N.。これを生演奏でやっているのが彼らの持ち味だ。一昨年、昨年と連続でFUJI ROCK FESTIVALにも出演。
#2.Youth / Young Juvenile YouthMETAFIVEのフロントアクトも務めたYoung Juvenile Youthは、包み込むような質感の中にエモーションを感じるゆう姫のボーカルと、緻密で実験精神に溢れるトラックを作り出すJEMAPURからなるユニット。クラブミュージックを理解した音にしびれる!
#3.Once / yahyelJames Blakeなどのポスト・ダブステップを通過した現在のムードを的確に表現しつつ、ボーカルは思いがけずソウルフルという独特のサウンドを展開するyahyel。ヨーロッパツアーを敢行するなど、精力的な活動で今後も目が離せない。
#4.Beach / Qrion 1994年生まれ、札幌出身で現在はLAを拠点に活動する女性トラックメイカー、Qrion。10代の頃からウェブで作品を発表し、2015年にはサカナクション「さよならはエモーション」のリミックスも手掛けている。こちらは初期ハウスのようなムードが最高の曲。
#5.Real Love feat. JUA & Shun Ishiwaka / WONKサンプリングビートを生演奏で再構築するという近年のジャズ~ヒップホップ~ネオソウルとリンクする東京サウンドを発信しているのがWONK。昨年発売の1stフルアルバムから、変則ビート、スリリングなラップとどれをとっても世界水準の一曲を。
#6.CITYGIRL / TOKYO HEALTH CLUB2010年より活動している3MC+DJのヒップホップグループ。シティポップ的フィーリングのあるトラック、日常のスケッチを思わせるリリックなど実にクオリティが高い。’10年代の東京っぽさが詰まった彼らの楽曲はどれもオススメ。
#7.Daydream / YOSA※試聴プレイヤー未対応楽曲
DJ/プロデューサーYOSAの楽曲も今の東京的なサウンド。2008年、19歳のときにヨーロッパのレーベルからリリースした曲から火がつき、逆輸入的に日本でも人気になった。この曲はLaid Back「Fly Away」ネタのメロウハウス。最高だ!
#8.Stay Tune / Suchmosソウル、ジャズファンク、ディスコといったブラックミュージックを吸収しつつ、オリジナリティのあるサウンドで人気沸騰中のバンドSuchmos。音楽の要素として黒人音楽を取り入れているのが一昔前の黒人かぶれと全然違うところ。この姿勢が現代的。
#9.TONIGHT! / LUCKY TAPESLUCKY TAPESもソウルやファンクからの影響を感じさせるが、黒人音楽に影響を受けた日本の往年のシティポップというフィルターを通してのそれ、というような印象。疾走感と高揚感のあるこの曲のストリングスアレンジなどはまさにそう。
#10.あこがれ / ミツメ現在進行形のインディロックとノスタルジックな日本の上質なポップスが融合されたようなミツメの2016年のアルバムから、脱力した感じのシンプルな一曲を。ギターのリフやベースラインにソウルやファンクの匂いがあって、それがグルーヴ感を醸している。
<プロフィール>
青野賢一1968年東京生まれ。ビームス創造研究所 クリエイティブディレクター、ビームス レコーズ ディレクター。ファッション&カルチャー軍団ビームスにおける“知の巨人”。執筆やDJ、イベントディレクションなど多岐にわたる活動を展開中。
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