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2018.10.27

時計

末長く愛される不完全性を求めて。陶芸家がラドーに感じるシンパシー


他に先駆けてセラミックスを外装に用いるなど、時計界に革新的な風を送るラドー。その在り方は、各界で異彩を放つイノベイターと共通するものがある。
5回にわたって、そんなイノベイターたちに「クリエイティブ」についてインタビュー。4人目は……
竹村良訓 Yoshinori Takemura
1980年、千葉県生まれ。自由な作風を貫き、インテリアショップ、ファッションブランドから熱い視線を浴びる気鋭の陶芸家。武蔵野美術大学在学中に木工や漆工を学びながら、陶芸を独学で始める。東京藝術大学大学院にて文化財の保存修復を学んだ経験から、修復家としての一面も。
一つひとつ異なる色や形。陶芸家・竹村良訓さんの作品はどこか愛らしく、それぞれが生き物のように個性的だ。見る者を楽しませる自在な表現に欠かせないのは、粘土や釉薬を操る技術と失敗を恐れないチャレンジ精神。それは非金属であるセラミックスを高級時計に導入したラドーの姿勢にも類似している。
「僕は失敗が大好き(笑)。失敗をしなくなったら、つまらないし、進歩もできません」。
そう語る竹村さんは、師匠につくことなく独学で作陶を身に付けている。窯とろくろを自ら用意、作っては捨てを繰り返し、現在のスタイルにたどりついた。とりわけ釉薬の調合は、化学の実験さながらの試行錯誤だったという。そうして生まれた60を超える色彩と、ひとつとして同じものがない形状に、彼の魅力の粋が詰まっている。
基本的にまったく同じ形状がない一点もの。「自由な物作りをお客様やお店の方に面白がってもらえているのでありがたい」と語るように、楽しさが伝わる独特な形状と色使いが魅力。
「物の価値というのは、所有者の愛着の深さ」。陶器修復も受け付けている竹村さんが、顧客の復元に懸ける強い思いから気付いたことだ。
「だから“末長く愛されたい”という気持ちが僕の作陶の根源なんです」。それゆえ彼が作るのは、器やオブジェといった生活に寄り添う陶器なのだ。
「僕が目指しているのは、タイムレスでボーダーレスな陶器。50年、100年後に僕の陶器を見ても“竹村のものだ”と気付かれないようにしたい。だから、作品にシグネチャーを入れていません」。自由な物作りを続ける竹村さんが、ダイヤマスター最新作に共感するのは、“愛着が湧く”という点だ。
自在にろくろを操る様はまるで生物を創造しているかのよう。楽しみながら失敗を繰り返した結果の賜物だ。
「左右非対称のデザインや、人間の手を必要とする機械式ムーブメントの不完全性。加えて着けたときの存在感、艶やかなセラミックスは愛着を感じる個性がある。また通常隠されている歯車をあえて表に出していることや、宙に浮いているかのようなインデックスなど、オリジナリティのある意匠にも惹かれます。僕の作品に通じる部分が多々ありますね」。
セラミックスの扱いの困難さを知るからこそのシンパシー。竹村さんは、ラドーを手に、物の価値の本質について語ってくれた。
 

“不完全性”は愛着を感じさせるひとつの要素だと思います

プラズマ ハイテクセラミックスケース、43mm径、自動巻き。29万5000円/ラドー(スウォッチ グループ ジャパン 03-6254-7330)
ダイヤマスター ハイ ライン
針を駆動させる輪列(=歯車の列)のみをコートドジュネーブと呼ばれる、美しい縦縞模様の仕上げ加工を施した地板にセット。それにより、他に類を見ないアシンメトリカルなデザインとなった。文字盤の優れたオリジナリティと、金属のような輝きを誇るプラズマ ハイテクセラミックスが相まって、革新性を表現。また、セラミックス素材特有の軽さも大きな魅力である。
「メタリックなのに温かみがあって、腕元で存在感を放つ。これはセラミックスならではの魅力といえるのではないでしょうか。時計本来の役割である正確な現在時刻を知る、つまり精度を考えたら必要ないのかもしれないけれど、審美性や着け心地に配慮されている点が気に入りました」。
 
[問い合わせ]
スウォッチ グループ ジャパン(ラドー)
03-6254-7330
www.rado.com
 
星 武志(エストレジャス)=写真(静物) 鈴木克典=写真(取材) 石川英治(Table Rock. Studio)=スタイリング 髙村将司=文

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