スポーツ、アウトドア、ワーク……ファッションはさまざまなシーンとの関係を密接にすることで発展してきた。
その触手は今、畑にも及んでいる。
本業の傍ら、神奈川県に農園を借りて農作業に勤しんでいるファションモデルの岡田章吾さんが、仲間たちと、ファッションと農業を紐付けたブランド「カイメン(KEIMEN)」を立ち上げた。
ちなみにカイメンとはドイツ語で“発芽”という意味である。
「ウェアやギアを探しても、なかなか良いものが見つからなかったんですよね。そんなとき、畑仲間でもある友人が『うちで作りましょうよ』と言ってくれたんです。
彼はアパレル企業で働いているのですが、今は『代官山青果店』という店もやっています」。
こうして、ライフワークを通じて、自然とブランド発足に繋がっていった。
リリースされたアイテムたちは、タウンユースでも通用する洒落たワークウェア。岡田さん曰く、農作業をするときに汚れや擦れてもいいよう、タフな素材や作業しやすいディテールを研究したという。まさに彼が着たいと思う農作業服が形になったのだ。
例えば、こちらの靴下は、土いじりでは避けられない「汚れ」がなるべく目立たないように制作。
「お洒落感覚で発色のいい靴下を履きたくても、どうしても靴の中に土が入って汚れてしまう。なので、靴で隠れる部分だけ濃色にしました」。
数回使ってすぐ廃棄されがちな軍手は、大胆にブランドロゴを配したおかげでアイコニックな印象に。捨てずに長く愛用してもらえるよう、デザインにこだわっている。
そのほか、パンツは地面に膝をついても破れにくいようにニーパッチを3枚地にしていたり、ロンTはたくし上げた袖が下がってこないように袖口のリブを長くしたりと、随所に工夫が施されている。
また、使われなくなった農具をもう一度“発芽”させる取り組みも。
「すごくいい道具が、廃棄されたり、倉庫に眠っていたり。それを有効活用するため、イベントなどで引き取って、改めて整備することで必要としている人にまた届けられたら、農の価値を引き継いでいくこともできると思っています」。
ちなみに、カイメンのメインラインはすべて日本製で、国内産業を少しでもサポートできればと考えている。一方で、海外生産のコストパフォーマンスに優れるアイテムも今後展開し、それらはホームセンターで取り扱ってもらいたいとも。
「農作業をするとき、いちばんお世話になるのは地域のホームセンターだったりします。そこで、カイメンを一緒に手に取ってもらいたいんです」。
最後に、岡田さんはこう話してくれた。
「畑をやっていると、隣の畑のおじいちゃんやおばあちゃんと自然に交流が生まれる。そこで農業に関するさまざまな話を聞き、日本の耕作放棄地が増加している実情も知ることができました。このブランドをきっかけに、農業がもっと魅力的なイメージになって、畑をやる人が増えたらいいなと思っています」。
農作業だけでなく日常でも身に着けたくなるカイメンのワークウェア。趣味人にも、ファッション業界にも嬉しいニューカマーが今、“発芽”した。
[問い合わせ]カイメン03-6804-2695ONE-HALF=文