ここに2冊の短編小説がある。
『運命の人かもしれないけど「じゃあ、ここで」』と、『あたしはまだ到着していない』というタイトルだ。
2つの物語はそれぞれ短編として完結しつつも相互にリンクしていて、女性の生き方、地方出身者の日常、そして情感豊かな恋がリアルに描かれている。
著者は作家の山内マリコさん。「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞し、デビュー作の『ここは退屈迎えに来て』や、『アズミ・ハルコは行方不明』は映画化されている。
味のある表紙イラストで装丁されたこれら2編は、名を「ほろよい文庫」という。
さて、この「ほろよい文庫」はどこで手に入るのかというと、まず書店では手に入らない。実はこの小説、なんと日本酒とセットになっており、「ほろよい文庫」公式サイトや、新潟県長岡市のふるさと納税サイトだけで販売されているのである。
小説も酒造りも、舞台は新潟屈指の酒どころである長岡。日本酒は明治30年創業の「お福酒造」こだわりの純米吟醸だ。
男性の視点で描かれた『運命の人かもしれないけど「じゃあ、ここで」』には、クリアな風味のお酒が、女性の視点で描かれた『あたしはまだ到着していない』には、キレのある風味を際立たせた酒が寄り添っている。その酒が造られた土地の風土や歴史といった“物語”を感じながら、小説を楽しめる構成になっているという。
一人ひとりの人生に物語があるように、酒にも物語がある。酒とフードのペアリングはよくあるが、酒と小説の組み合わせも、新感覚のマリアージュで面白い。ここはぜひ男性瓶だけでなく、女性瓶もあわせて堪能し、その味わいに深く酔いしれたい。
[問い合わせ]お福酒造0258-22-0086https://horoyoi-bunko.jp中山秀明=文