20代から好かれる上司・嫌われる上司 Vol.39
2021.03.26
LIFE STYLE

大河ドラマの偉人を事例に説教してくる上司は20代からうざがられる

「20代から好かれる上司・嫌われる上司」とは……
 

大河ドラマは中高年のドラマ?

今回(2021年)のNHK大河ドラマ『青天を衝け』は日本の資本主義の父とも称され、今のみずほ銀行、東京海上日動、東京電力、東京ガス、王子製紙、大日本印刷、サッポロビール、帝国ホテル……と500社以上もの名だたる会社の設立に貢献した渋沢栄一が主人公です。

大河ドラマは人の一生を一つひとつ追っていくので、人事を生業とする自分としてはよく視聴しています。しかし、ここしばらくの大河ドラマの視聴者調査をみると、30代以下の視聴率は3%前後と低く、逆に50代、60代以上では20%前後と、観ている世代に大きな開きがある番組であることがわかります。

 

大企業の中間管理職がこぞって観ていそう

前回(2020年)の大河ドラマはメジャーな明智光秀(私は好きです)が主役だったこともあり、若手社員などに「昨日の大河のあのシーンは泣けたよね」「君ならどうする」などと、つい相手も観ていることを前提に話してしまったのですが、「すみません。観ていません」とそっけない返事をもらうことが多かったのです。

しかし今回の渋沢栄一は上述のように、多くの大企業が関係していることもあり、いろいろな会社の中間管理職の方々が「我が社の創設者の話だ!」と熱心に観ているのではないかと思います。

むしろ観ていないと、会長とか社長とかの「大河を必ず観ている」「観ていない人はおかしいと思っている」層と話が合わず困るかもしれません。

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「論語と算盤」がおそらく多用される

そのため、今年は、若者と中高年の間で、渋沢栄一を間に挟んで世代間ギャップが露呈しまくる年になるかもしれません。特に、話の内容もビジネス界のことですから、朝礼とか1on1のミーティングなどでも渋沢栄一がよく出てくることでしょう。

彼の著書である『論語と算盤』の内容などを持ち出して、「渋沢栄一も、些細なことを粗末にするような大雑把な人では、しょせん大きなことを成功させることはできないと言っています。だから皆さんも机の周りをきれいに掃除するなど、整理整頓に気をつけてください」というような光景が日本のあちらこちらで見受けられるのではないでしょうか。

 

偉人が言ったことは、全部今でも正しいのか

さて、若者はそんなとき、どう思うでしょうか。

まず「渋沢栄一は1万円札になるし、教科書で習ったから偉い人だとは知っているけど……」程度のことは思うでしょうが、同時に「結構前の人の言っていることだし、時代背景が違うのだから、渋沢栄一が言っている“から”と言われてもなあ」とも思うのではないでしょうか。

もちろん、ちゃんと『論語と算盤』を読んでいれば、前後の文脈や本質がわかって、渋沢栄一の言葉も刺さるのだと思うのですが、そうではないのに、途中の理屈を全部すっ飛ばして「渋沢栄一が言っていた」で、何かを主張しても、納得感がなくなるのも当然です。

 

「虎の威を借る狐」にならないために

もちろん、大河ドラマを観たり『論語と算盤』を読んだりして、渋沢栄一をよく知っている中高年の側は途中の理屈も理解して語っているつもりでも、相手はそれを知らないのです。

そうなると、結局「虎の威を借る狐」のような感じになってしまい、大層格好悪い人に見えてしまうことでしょう。渋沢栄一に関するものを観れば、すごい人だなと思い感動するのですが、だからと言って、にわかファンが「とにかくあの栄一が言っているんだから」で押し通してはいけません。

ひと呼吸置いて、渋沢栄一という偉人の名を使わずに、彼が言った内容だけに注目して、途中の理屈を飛ばさずに、自分の理解したことを自分の言葉で話す方が、若者には伝わるでしょう。

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ローコンテクスト社会化を受け止める

要は、日本はもともとハイコンテクスト社会(共通の文化基盤が多い社会)でしたが、どんどんローコンテクスト社会(共通の文化基盤が少ない社会)になってきていることを深く理解すべきということです。

中高年は大河ドラマをよく観ていても、若者はあまり観ていないのです。大河ドラマは過去の偉人が主人公なので、「これぐらい知っているだろう」と思うかもしれませんが、知っている度合いが問題です。

渋沢栄一が日本資本主義の父だと知っていても、その生涯や思想までは知らないということです。もうみんなが同じTV番組を観ていて、翌日それが話題になるという時代はとうの昔に終わっているのです。

 

ファクトとロジックだけで話す

これから若者と話す際は(本当は若者だけに限らず同年代間でも)、過去の事例を持ってコミュニケーションを省略することをせず、普遍的な言葉や誰もが絶対に知っている事実だけを使って、きちんとしたロジックで話をしていくことが必要なのです。

今後は日本でも「あうんの呼吸」「以心伝心」は通じなくなりますし、テレワークで「空気を読む」ことも難しくなるわけですから、ファクトとロジックだけで、丁寧にきちんと説明する能力は誰にも必須なのです。

ちなみに、世界で最もローコンテクスト社会と言われるアメリカ人の書く本が分厚いのは、「大体わかるでしょ」がないからではないかと、私は思っています。

 

連載「20代から好かれる上司・嫌われる上司」一覧へ

「20代から好かれる上司・嫌われる上司」とは……
組織と人事の専門家である曽和利光さんが、アラフォー世代の仕事の悩みについて、同世代だからこその“寄り添った指南”をしていく連載シリーズ。好評だった「職場の20代がわからない」の続編となる今回は、20代の等身大の意識を重視しつつ、職場で求められる成果を出させるために何が大切か、「好かれる上司=成果がでる上司」のマネジメントの極意をお伝えいたします。
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組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス
『組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス』(ソシム)
曽和利光=文
株式会社 人材研究所(Talented People Laboratory Inc.)代表取締役社長
1995年 京都大学教育学部心理学科卒業後、株式会社リクルートに入社し人事部に配属。以後人事コンサルタント、人事部採用グループゼネラルマネジャーなどを経験。その後ライフネット生命保険株式会社、株式会社オープンハウスの人事部門責任者を経て、2011年に同社を設立。組織人事コンサルティング、採用アウトソーシング、人材紹介・ヘッドハンティング、組織開発など、採用を中核に企業全体の組織運営におけるコンサルティング業務を行っている。

 

石井あかね=イラスト

# 20代から好かれる上司・嫌われる上司# 大河ドラマ
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