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2021.12.29

ライフ

「さて、どう生きようか」余命宣告を受けた“その日”をダースレイダーはどう過ごすのか

「37.5歳の人生スナップ」とは……  

前編の続き>
2年半前のインタビューと今回で、ダースレイダー自身の考え方に大きな変化はない。ただ、以前より彼の言葉が心に響くのは、コロナ禍を経たことで我々の理解が深まったからかもしれない。

後編となる今回は、彼がコロナを機に始めたことや新著『武器としてのヒップホップ』について、また、余命5年の境目となる4月11日への気持ちを聞いた。

すべては“残す”という作業のため

「今日できることは来週にまわさない」を基本方針に、ダースレイダーは日々を忙しく生きている。ボーカルを務めるバンド「ザ ベーソンズ」のライブは月に1回、本の執筆やメディアでの連載のほか、週に3〜4回のハイペースでYouTube動画をライブ配信している。

「ステイホーム中は忙しい人でも家にいるから、普段アポが取れない人に話を聞くチャンスだ! って思って、自分からいろんな人に声をかけ、YouTubeで対談する動画配信を始めました。

こういう動画配信も本を書くのも、音源を出すのも、このインタビューだって、僕にとっては残す作業なんです」。



残す作業――。

今日の自分の行動は、誰かに何かを残すためにやっている。それは、命の限りを意識する人たちこそができる行為で、余命5年を宣告されたダースレイダーもいつからかそれが行動原理になっていた。家族や子供、次世代に何を残そうとしているのか。

「自分が感じたことや考えたことは、娘を中心とした若い世代、音楽の世界でいうと若いラッパーたちに伝えたいし、自分が習得したノウハウも教えておきたいなっていうのはありますね。

僕より後の人たちがなるべく楽しく生きられるような世の中にしておきたいじゃないですか。娘たちとはコンビニやスーパーに行くにもあえて散歩しながら、彼女たちの歩調に合わせていろんな会話をするようにしています。

それに、たとえ僕が死んでも再生できるものを残しておきたいんです」。

“再生”してくれる友達がいれば大丈夫

余命5年を宣告されたダースレイダー

「再生するものを残す」とはいったいどういう意味なのか。2021年の最新アルバム「LAST YEAR」に収録された「5years」の中でも、ダースレイダーは次のように歌っている。

ちゃんと生きていればいつその時がきても大丈夫
ちゃんと生きていればその向こう側に生きていける
再生してる仲間を作って、再生できる友達を作って

大事なのは再生、再生、再生
いつやってきても大丈夫

「僕は、死ぬイコール“終わり”だとは思ってなくて、例えば死んだミュージシャンだったらレコードで再生できるし、話した内容や喋り方、一緒に遊びにいった場所とか景色とかを思い出してくれる友達がいれば、死んでも僕はそこに生き返ることができると思ってます。

だから、再生できるものを残して、再生してくれる友達を作ろうって提案してるんです」。

その人に会えないという物理的な寂しさはもちろんあるが、誰かが自分のことを思い出してくれる限り、その人の存在は再生できる。前回のインタビューでは聞けなかった、ダースレイダーの新たな死生観がそこにあった。


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