2021.05.21
LIFE STYLE

新たな移動手段? 公道が走れる電動キックスクーター、14万円台「LOM」に乗ってみた

当記事は「東洋経済ONLINE」の提供記事です。元記事はこちら

日本のメーカー・グラフィットが、日本の法律・道路事情を見据えて開発した「LOM」(一般販売予定価格は税込14万9600円)。クラウドファンディングで1億5400万円以上の支援を集めた電動キックスクーターだ(筆者撮影)

長く続いているコロナ禍。同じ場所に多くの人が集まることを避けるようにと、国をあげてさまざまな取り組みが行われている。

注目したいのは新しい移動手段のあり方だ。警察庁の「多様な交通主体の交通ルール等の在り方に関する有識者検討会」は、近場の移動に関して混み合う公共交通機関を使わずにすむようにと、道路交通法等の改正によって新たな車両区分を作ることを検討している。4月15日に公開された中間報告の段階では、以下の区分となっている。

1.時速6km程度までの歩道通行車
・電動車いす相当の大きさまで
・歩行者扱いとして歩道、路側帯の通行が可能

2.時速15km程度までの小型低速車
・普通自転車相当の大きさまで
・車道、普通自転車専用通行帯、自転車道、路側帯の通行が可能

3.時速15km以上出せる既存の原動機付自転車など
・車道のみ通行が可能
・免許やヘルメットなどのルールは維持

電動キックスクーターが公道を走れるようになる?

注目したいのは、2の「時速15km程度までの小型低速車」の項目だ。早歩きくらいの速度しか出せないが歩道が走れる車両、ママチャリ(軽快車)くらいの速度域で車道が走れる車両であれば、免許なし・ナンバーなし・ヘルメットなしで乗っていいとするモビリティを認めようとする流れ。

これは世界的に普及してきた、1人乗り電動キックスクーターを日本でも気兼ねなく走れるようにするという宣言と見える。

電気で走る1人用のモビリティといえば、車輪が横に2つ並んだ並行2輪車のセグウェイを思い出す方も多いだろう。2001年にリリースされたセグウェイは残念ながら日本では普及しなかった。

その理由は価格と、日本の道路交通法とマッチしなかったこと。日本に輸入された車両価格が私道や建物内でのみ走れるモデルですら88万2500円(税抜)と高価だった。そのうえで日本の原動機付自転車として認められるように整備するとさらに高額な車両となってしまい、庶民の足としては不向きだ。

そんなセグウェイは、現在スマートフォンメーカーとして急成長してきたシャオミのグループ会社であるナインボットが2015年に買収。現在は4万円台からの比較的安価な電動キックスクーターから10万円を超えるハイエンドモデルまで、多数の車両を開発・製造している。

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セグウェイ・ナインボットの「Kickscooter MAX」(税込14万3000円)は濡れた路面でも安定した走りで、EVのような回生ブレーキも採用し、運動エネルギーをリサイクル。公称航続可能距離は約65kmだ。現時点では公道走行不可だが、今後の道交法改正で状況が変わるかもしれない(筆者撮影)

事実、電動キックスクーターは大手量販店や大手ECサイトで3万円台あたりからよりどりみどり、近距離の移動に限るならば、もっとも適した乗り物となりえる存在だ。セグウェイが夢見た世界がいま、実現しようとしていると思うと胸が熱くなる。

新しいモビリティを使わなくても、電動アシスト自転車や公道が走れる電動バイク、ガソリンエンジンのバイクでいいじゃないかという声もあるが、駐輪場を用意できない家庭もある。

スタンダードな自転車よりもコンパクトに作ることができる電動キックボードは、室内や玄関内での保管がしやすいし、マンションのエレベーターにも載せやすい。小回りも利くし、一般的な自転車より坂道に強いというメリットもある。海外での普及を見れば、日本でも新たな庶民の足として認知される期待感がある。

同時に、電動キックスクーターとは安全な乗り物なのかという不安を感じる人もいるだろう。

クラファンで電動キックスクーターを購入

昨年5月、筆者はクラウドファンディングで新型の電動キックスクーターの事前予約購入に申し込み、今年の4月に実車が手元に届いた。

グラフィット(本社・和歌山市)が開発した「LOM」という車両で、電動キックスクーターとしてはやや大ぶりなサイズだ。最高時速は30km以上。セグウェイと比べるとパワフルで、あらかじめ公道走行が可能なように開発された電動キックスクーターだ。

専用アプリがLOMの鍵であり、走行可能距離と地図を確認できるディスプレーとなる。車両にスマホ充電用ポートは備わるが、スマホホルダーは別途用意しなければならない(筆者撮影)

スマートフォンの専用アプリが鍵となり、画面上には地図とバッテリー残量、走行可能距離の目安が表示される。体重・衣類・荷物を含めて55kgの荷重であれば、1回の充電で約40km走れる。筆者の体重は90kgと重いが、それでも23kmは走れると表示された。

日本の道路交通法に合わせて日本で開発・生産された電動キックスクーターで、ヘッドライト、ウインカーをはじめとした保安部品も装備。ヘルメットや自賠責保険が必要となるが、原付バイクと同じナンバーを後ろにつけて、公道を走ることができる。

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ハンドルを折りたたむと、大型のコインロッカーに収まるサイズになる「LOM」(筆者撮影)

ハンドルは折りたたみ式で、折りたたんだ状態であれば大型のコインロッカーにも入るサイズだ。

BMXやスノースクートのような頑丈なフレームを使っているためか、重量はバッテリー込みで16.5kgと重め。リチウムイオン電池を採用したバッテリーのため飛行機への持ち込みはできないが、タイヤが隠れるバッグに入れれば電車を使った輪行が可能だ。

購入して以来、筆者はこの電動キックスクーターで近所を走っている。やや遠くのスーパーや精肉店、鮮魚屋への買い物が主な使い道だ。

立ったまま乗るため、スキーやスノーボードのように風を全身に受ける感覚が気持ちいい。自分の身長プラスアルファの高さとなるため視界が自転車以上に高く、目線を遮るものはほぼない。周囲の車からの視認性も高い。というか、まだ公道では見慣れないものなのだろう。興味の視線をひしひしと感じる。

幹線道路を走ってみたら…

アクセルはやや反応が鈍い。3つのパワーモードのうち、自動車道を走るのであれば最もパワフルなモードを使いたくなる。それでも50ccのホンダ・カブより加速は鈍いというのに、後輪駆動ゆえに、わずかでも上りの坂道だと一瞬ウイリーするほどのパワー。メーカーとしてはいま以上の過敏なセッティングは無理と判断したものと考えられる。

アクセルはレバー押し込み式。ストローク量が多く、アクセル全開となるまでかなり奥まで押し込まなくてはならない。メーカー曰く、安全性を考慮した設計となっているとのこと(筆者撮影)

前輪に荷重をかけたほうが安定するため、身体を前に寄せるようにして乗ると、ハンドル端に備わったミラーがほぼ見えない。なんとか斜め後ろが見える位置に調整しても、走行中の振動で固定ネジが緩んでくるのか、1kmも走らないうちにずれてしまう。

そして特筆したいのが、幹線道路での走行は罰ゲームかと思えるほどの怖さがあること。時速30km以上は出してはいけない原付一種枠の車両というのもあるのだが、制限速度ギリギリでの走行をすると路面のわずかな段差やヒビ、マンホールの上を走ったときの振動が大きい。

後ろからくる車やトラックが勢いよく抜いていくので、風圧で思わずハンドルが取られそうになる。走行中、一瞬たりとも気は抜けず、神経がすり減った。少なくとも東京の環状七号線のような、片側2車線で歩道との間にある路肩も狭い幹線道路の走行はまったくもっておすすめできない。

また夜間の走行もストレスがたまる。テールランプの位置が低いために、自分の存在をアピールしにくい。反射素材が使われたウェアやバッグを使うなどして夜間の視認性を高め、自己防衛する必要がある。

ネガティブなことも記したが、あくまでチョイノリのためのモビリティであり、幹線道路を使ってほかの街まで行くといった使い方をしなければ、電動キックスクーターは扱いやすい乗り物だと感じた。ならばこそ期待したいのが「時速15km程度までの小型低速車」の車両区分新設だ。

近所の移動に使うなら時速30kmもの最高速度は必要なく、ヘルメットいらずで乗れる小型低速車のメリットは大いにあるだろう。

 

武者 良太:フリーライター
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記事提供:東洋経済ONLINE

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