「37.5歳の人生スナップ」とは…… 2007年、トランポリン競技の世界選手権で優勝し、2008年には北京オリンピックで4位入賞。その後も五輪への出場を目指して活動してきたが、東京五輪の延期が発表された2020年、現役引退を決めた外村哲也さん。
外村さんのアスリートとしての活躍と葛藤を紹介した
前編に続き、今回は引退後に始めて新たな挑戦について聞く。
引退後のセカンドキャリアを模索
引退を決め、発表したのは2020年6月。意外にも、現役引退への未練や悔しさはほとんどなかったという。むしろ制約の多いトップアスリートの生活から解放されて「少しほっとした部分もあった」そうだが、休む間もなくセカンドキャリアのための一歩を踏み出した。
頭の中には、既にビジネスプランがあった。
「スポーツ界にとどまらず、世間一般を対象にビジネスしようとしたとき、僕が皆さんに提供できるものは何か。どう考えてもトランポリン向きではないメンタルの持ち主にもかかわらず、スランプを何度も乗り越えて世界一になれたことだと思ったんです。
人はそれぞれに目標を持ち、実現するために努力をしたり、壁にぶち当たったりしながら生きています。僕にはいくつもの壁を乗り越えてきたという自負がある。自分の『壁を乗り越える方法』そのものには汎用性がないかもしれないけれど、『乗り越える方法の見つけ方』なら、誰にでも真似してもらうことができるんじゃないか、と」。
外村さんが小学生で初めてスランプに陥ったとき、それを乗り越える方法や、方法の見つけ方を教えてくれる人は周りにいなかった。
個人の悩みや要望にしっかり耳を傾け、乗り越える方法を一緒に考えてくれる誰か。かつての自分が切望した人に、外村さんはなりたかった。
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