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2021.04.16

ライフ

「座ったら心地良すぎてついオーダー」したジョージ・ナカシマの椅子

「藤井隆行の視点。私的傑作批評」とは……
ずっと憧れていたモノが目の前に現れて、しかも頑張れば買える価格だったら?そんな夢のような出会いがありました。
数年前、LAのメルローズ通りにある家具店で見かけたジョージ・ナカシマの「グラスシートチェア」。シャルロット・ペリアンやボーエ・モーエンセンなども並ぶ店内で、LA独特の光を浴びたジョージ・ナカシマのチェアは、それまでのイメージを覆すほどモダンで、かっこ良くて、神々しかった。
価格を聞いたらヴィンテージだったこともあり、たしか1脚60万〜70万円くらいの6脚セット。さすがにあきらめたものの、それ以来ずっと、いつか手に入れられないかと考えていました。
ノンネイティブ・藤井隆行がずっと憧れていた“木とい草”のモダンなダイニングチェアとは
気になり始めてからジョージ・ナカシマの本をいろいろ読んで、彼がどんな生き方、考え方なのかをじっくり研究してみたのですが、知れば知るほど面白いんです。
アメリカで生まれた日系二世で、来日したときは吉村順三と同僚で、建築家から家具職人に転向した経緯にもドラマチックなストーリーがあって。でも、昨年11月にたまたま銀座に行く用事があったので、ジョージ・ナカシマの作品を受け継ぐ桜製作所に立ち寄って「グラスシートチェア」に座った瞬間、そうした予備知識が吹っ飛ぶほど感動したんです。
座面が“い草”でクッションになっていて、曲げ木の背もたれが優しく体を支えてくれる、なんというか、すっぽり感がもう!思わず価格を聞いたら、決して安くはないけれど、LAで聞いた価格と比べたら破格で、思わず4脚オーダーしてしまいました。
H700/SH430×W575×D500mm 19万8000円/ジョージ・ナカシマ(桜ショップ 銀座店 03-3547-8118)※4月1日より価格が改定されています。
「ジョージ・ナカシマ」のグラスシートチェア
ジョージ・ナカシマの家具を作っているのは、ペンシルベニア州のニューホープにあるアトリエと、日本の桜製作所のみ。ウォールナット無垢とい草を組み合わせたダイニングチェアは、4kgと軽量で運びやすい。
同じジョージ・ナカシマの椅子でも、「コノイドチェア」は定規で引いたような直線が特徴ですが、「グラスシートチェア」はなんだか愛嬌があります。背の丸いカーブと、テーパードした背柱、真四角のい草の座面の絶妙なバランスが、どんな家具とも似ていない独自の存在感なのです。
もちろん高い買い物なので、妻にも相談したところ無事OK。このデザインを「かわいい」と言ってくれてなんだかうれしかった。いいモノを毎日使う喜びは、やはり家族とシェアしたいですよね。
[藤井隆行 プロフィール]
東京を代表するブランド「ノンネイティブ」のデザイナーで、ファッションからライフスタイルまで一貫したこだわりを持つ。
「藤井隆行の視点。私的傑作批評」とは……
世の中のありとあらゆるプロダクツから、「ノンネイティブ」藤井隆行さんが独自のセンスと審美眼でモノをセレクト。デザインとは? 実用性とは? 買い物の醍醐味とは? ブランド名や巷の情報に惑わされず、本当に自分に必要なモノと出会う方法を指南。
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竹内一将(STUH)=写真 町田あゆみ=文


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