20代から好かれる上司・嫌われる上司 Vol.36
2021.02.12
LIFE STYLE

謝罪がやたらにうまい上司は20代からうさんくさがられる

「20代から好かれる上司・嫌われる上司」とは……

トラブルシューティングこそ上司の役割?

平時にはあまり働かなくても、危機の際には力を発揮してくれて、チームを救ってくれる上司は良い上司である……というのは一見すると否定し難いように思えます。

平時であれば、部下に権限を移譲して自由にやらせてくれるというのも良い感じですし、有事の際には逃げることなく勇気を持って先頭に立つ。確かに素晴らしいではないですか。

そう思って、世の中の上司の方々は、ピンチになると俄然やる気になって、腕まくりをして出てきます。極端に言うと、日々「何かまずいことが起こらないだろうか」と待っているかのようにも見えます。

ファインプレーの落とし穴

しかし、有能な若手部下であれば、そもそもそのトラブルシューティングというファインプレーは必要だったのかと思っているかもしれません。

以前、「ミスタープロ野球」長嶋茂雄氏が観客を魅了するために、守備の際にあえて一歩遅れて飛び出し、最後はダイビングキャッチをするというようなことを話していたような記憶があります。

確かに、ひとつのショーでもあるプロ野球においてはそういうことも価値あることでしょう。ちゃんとしたタイミングで飛び出せば、普通のゴロに見えて、ドキドキも何もしないからです。

ところが、それはビジネスでは必要なことでしょうか。

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「ノー・サプライズ」がビジネスの基本

ユニクロの柳井氏が「バイブル」だと帯に書いた『プロフェッショナルマネジャー』というハロルド・ジェニーン氏の経営論では、その基本ポリシーのひとつとして、「びっくりさせるな!(ノー・サプライズ)」と説きました。

それは、企業でびっくりさせられること、つまり想定外のことが起こることはほとんどが良くないことであるからです。ビジネスにおける問題は、早期に発見し対処するほど解決は容易になります。プロスポーツでは驚きも感動につながります。

ビジネスでも目標達成しなさそうというときに、意外なアクションによってギリギリ達成し感動することもありますが、それは良いことではないというのです。

 

「謝る機会」などないことが良いに決まっている

そう考えると、上司が「謝罪する機会が腕の見せどころ」などと考えているのはどうかと思えてきます。

謝罪をしなければならないような機会を生み出してしまったこと自体を恥じるべきなのです。

失敗とトラブルとは違います。高い目標にチャレンジして、頑張ったにもかかわらず、失敗してしまったことは恥ではありません。むしろ誇るべきことでもあり、謝ることなど何もありません。胸を張って、再度チャレンジすればいいのです。

謝らなければならないのは、ちゃんと計画したり段取りをつけたりする準備を怠ったがゆえのトラブルが起こってしまった場合です。そういうときに「謝罪」しなければならなくなるのです。

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謝罪に慣れていることなどは恥

つまり、冒頭で述べた謝罪があまりにうまい上司像は、一見すると良いことのように見えますが(もちろん、本当に謝罪すべきときに謝罪から逃げないのは当然ですが)、「これまでどれだけトラブルを起こしてきたんだよ」というようにも取れるということです。

それよりも、もっと日頃から事前に先を読み、トラブルが起こらないようにして的確な準備を行っておいてほしかった、というのが部下の本音ではないでしょうか。

「負けて潔い」ことが美徳であった日本では、清々しい謝罪ができることはひとつの徳にも見えるのですが、それが許されたのは昭和くらいまで。これだけ長い間停滞し、ひとつのトラブルで会社の屋台骨がグラつくような今の日本では、もう通用しない美徳かもしれません。負けは負けです。

 

「すごい凡人」を見逃すことなかれ

逆に考えると、日々、トラブルもなく、謝罪などという「晴れ舞台」もなく、淡々と仕事をこなし続けている上司を、凡人と捉えて、その丹念な準備や対応能力を見逃してはいけないともいえます。

ビジネスでは、ひとつの派手なイベントで成果を出すことよりも、「無事、これ名馬なり」と、長期にわたってトラブルを起こさず、成果を地道に出し続けることのほうが大切です。大きな仕事になればなるほど、長期戦になるからです。

ところが、本稿のように、トラブルを起こさない人は目立たない人でもあります。そういう社内の「すごい凡人」を見逃してしまわないようにしなければならないのではないでしょうか。

連載「20代から好かれる上司・嫌われる上司」一覧へ

「20代から好かれる上司・嫌われる上司」とは……
組織と人事の専門家である曽和利光さんが、アラフォー世代の仕事の悩みについて、同世代だからこその“寄り添った指南”をしていく連載シリーズ。好評だった「職場の20代がわからない」の続編となる今回は、20代の等身大の意識を重視しつつ、職場で求められる成果を出させるために何が大切か、「好かれる上司=成果がでる上司」のマネジメントの極意をお伝えいたします。
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組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス
『組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス』(ソシム)
曽和利光=文
株式会社 人材研究所(Talented People Laboratory Inc.)代表取締役社長
1995年 京都大学教育学部心理学科卒業後、株式会社リクルートに入社し人事部に配属。以後人事コンサルタント、人事部採用グループゼネラルマネジャーなどを経験。その後ライフネット生命保険株式会社、株式会社オープンハウスの人事部門責任者を経て、2011年に同社を設立。組織人事コンサルティング、採用アウトソーシング、人材紹介・ヘッドハンティング、組織開発など、採用を中核に企業全体の組織運営におけるコンサルティング業務を行っている。

石井あかね=イラスト

# 20代から好かれる上司・嫌われる上司# 謝罪
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