20代から好かれる上司・嫌われる上司 Vol.23
2020.07.24
LIFE STYLE

女性に特別な配慮をしすぎる上司は、20代から怪しまれる

女性に特別な配慮をしすぎる上司は、20代から怪しまれる

「20代から好かれる上司・嫌われる上司」とは……

女性が活躍していない国、日本

先日、私が採用をしていた頃に入社された女性がリクルートホールディングスの取締役になられたというインタビュー記事がありました。別に私がすごいわけでもなんでもないのですが(笑)、とてもうれしく思いました。そもそもリクルートには男女の差別どころか区別すらほとんどありませんでした(良し悪しは別として)。

そんなリクルートでも、女性が役員になるのはなかなか難しく、ニュースになるというわけですから、日本全体の女性活躍の現状も推して知るべし。最新の世界経済フォーラムの「ジェンダー・ギャップ指数」においても、153カ国中121位(前回は149カ国中110位)というのもさもありなんです。

日本は、未だに女性の能力を活かしきれていないというのは事実とせざるをえないでしょう。(参考:内閣府男女共同参画局HP

 

取り組みをしていないわけではないのに

ただ、難しいのは、上述のようなことは誰でも知っており、しかも「ダメなこと」という認識もあり、対策も取ってきているのに、この体たらくだということです。

古くは、男女雇用機会均等法がありますが、これも施行後すでに30年以上経ちます。ダイバシティ&インクルージョンというかけ声も広く浸透し、出産などのライフイベントの多い女性が働きやすいような、多様な働き方を受け入れる姿勢も続いています。

近年の「働き方改革」の一連の施策も、目的のひとつに女性の活躍があります。ほかにもさまざまな女性活躍を推進するような動きがあるのに、なぜこのようなことが起こってしまうのでしょうか。

 

ポジティブ・アクションの功罪

よく言われているのは、女性に対するポジティブ・アクション(改善措置)の副作用というものです。これまで虐げられてきた人々の地位向上を図るために、ポジティブ・アクションは必要なことです。しかし、慎重に行わなければいろいろな副作用があります。

例えば「逆差別」。女性の管理職比率を高めることを目的として、積極的に女性を登用すれば、ある種の男性からは「本当は俺が昇格するはずだったのに、差別だ!」と思われることもあるでしょう。

また、属性を重視して何かを行うことは、能力を軽視することにもつながります。これが、先の差別意識とつながれば、「能力がないのに、女性という理由だけで厚遇される」という誤った意識になり、女性への差別意識がむしろ蔓延してしまう可能性すらあります。

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人事は口々に「女性のほうが優秀」と言う事実

しかし、それは当然ながら完全なる誤りでしょう。アカデミックな研究においてもそのような結果が出ていますし、人事採用担当者の皆様のほとんどが口を揃えて「女性のほうが優秀」「同じ基準で採用をしていたら、女性ばかりになってしまう」と言っていることからも推定できます。実際にSPIの能力面などの客観的な指標においても、女性のほうが高得点を取っている会社は多そうです。

つまり、ポジティブ・アクションとは「実態に合わせているだけ」であり、ゲタを履かせているわけではないはず。そう考えるとポジティブ・アクションという言葉が、「何かプラスαの加勢をしている」という誤解を生んでいるかもしれません。女性は、活躍を阻害している要素を省けば、ふつうに活躍するのです。

 

ケアをするよりも、障害を取り除くことが重要

ですから、すべきことは女性に対する「妙な配慮」を加えることではなく、何か別の「本当の障害」を取り除くことです。

それをしないまま女性に対して楽な仕事をアサインしたり、(本当に必要な場合を除き)特別扱いをしたりして、ことさら女性をケアしていることをひけらかす上司は、先に述べたポジティブ・アクションの副作用を助長する首謀者のようになってしまって、若者や女性自身から鼻白む思いで見られていることでしょう。

ポジティブ・アクションの「ありがた迷惑」は、表面的には批判しにくいことなので(動機は善でしょうから)、余計たちが悪いとも言えます。

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本当に大切なことは言葉にしない

それでは、女性活躍に対する「本当の障害」とは何でしょうか。私は、それは日本人のハイコンテクスト文化(文化の共通基盤が多い)と、それに従った非言語的コミュニケーションだと思います。

エドワード.T.ホールやエリン・メイヤーなどの研究を見ると、日本はハイコンテクストの極にある国で、言語に依存せず「あうんの呼吸」「以心伝心」「空気を読む」などのコミュニケーションで相手にものを伝えるとされています。直接的表現よりも曖昧な表現を好み、言語量も少なく、仮定と結論までの間の論理を丁寧に語りません。

この国民性と、一度男性優位で固まった戦後社会が結びついて、それが女性にとって「本当に大切なこと」を知る機会を奪い、能力の発揮を阻害しているのではないでしょうか。

 

ローコンテクスト化が女性を活かす

飲みニケーションが減り、タバコ部屋が無くなり、さらにはテレワークが進展することで、日本のビジネス社会は徐々にローコンテクスト化していく土壌になってきています。これは、コンテクスト依存で仕事をしてきた(そして女性の進入を無意識的に排除していた)男性社会にとっては面倒なことかもしれませんが、女性にとってはチャンスだと思います。

働き方の変化がローコンテクスト化を促進することで、コミュニケーションは直接的・明示的・論理的・言語的になり、特殊なコミュニティにいることでコンテクストを共有せずとも、大事な情報に触れることができます。

上司が女性を活躍させるためには、コンテクスト依存のコミュニケーションをやめて、言語依存のコミュニケーションを取ることは本質的な解決策ではないでしょうか。

 

連載「20代から好かれる上司・嫌われる上司」一覧へ

「20代から好かれる上司・嫌われる上司」とは……
組織と人事の専門家である曽和利光さんが、アラフォー世代の仕事の悩みについて、同世代だからこその“寄り添った指南”をしていく連載シリーズ。好評だった「職場の20代がわからない」の続編となる今回は、20代の等身大の意識を重視しつつ、職場で求められる成果を出させるために何が大切か、「好かれる上司=成果がでる上司」のマネジメントの極意をお伝えいたします。
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組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス
『組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス』(ソシム)
曽和利光=文
株式会社 人材研究所(Talented People Laboratory Inc.)代表取締役社長
1995年 京都大学教育学部心理学科卒業後、株式会社リクルートに入社し人事部に配属。以後人事コンサルタント、人事部採用グループゼネラルマネジャーなどを経験。その後ライフネット生命保険株式会社、株式会社オープンハウスの人事部門責任者を経て、2011年に同社を設立。組織人事コンサルティング、採用アウトソーシング、人材紹介・ヘッドハンティング、組織開発など、採用を中核に企業全体の組織運営におけるコンサルティング業務を行っている。

石井あかね=イラスト

# 20代から好かれる上司・嫌われる上司# 上司
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