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2020.04.01

ライフ

新年度、良い人間関係を築くのに役立つ故・野村克也監督の名言3選

「春のなんでも3選’S」とは…
野村克也氏がこの世を去ってから、早くも2カ月が経とうとしている。輝かしい記録を残した名捕手にして名スラッガー。ただ、やはり監督としての姿が我々世代には馴染み深い。
野村監督といえば、的を射た数々の名言もよく知られところだ。その言葉は、ときに選手たちの発奮材料となり、ときに現代を生きる大人たちの指針となってきた。
野村監督の名言の数々は幾度となく書籍化されてきた。[左]『野村克也の「人を動かす言葉」』(新潮社)1250円、[右]『野村克也100の言葉 〜人を育て、動かすヒント〜』(宝島社)1000円。
そんな野村監督の珠玉の名言集は、新年度を迎える大人たちにこそ必要である。ということで、「良好な人間関係を築くための心構え」を説いた名言を厳選してお届けしよう。

野村監督の名言①
「信用を得るには時間がかかる。しかし、失うのは一瞬だ」。

プロ1年目(と言ってもほぼ練習生扱い)の終わりにクビを切られそうなところを寸でのところで免れ、2年目に鬼気迫る猛練習の末、結果を残した野村氏。その甲斐あって、3年目には1軍のハワイキャンプに帯同することができた。
しかしそこで、周囲の先輩たちが遊び呆け、あまつさえ怪我までしてしまう体たらくを目撃。それでも野村監督は一心不乱にバットを振り続け、結果を出したのである。
「今回のハワイキャンプは散々だったが、野村に使えるメドがたったのが唯一の収穫だ」。
当時の監督、鶴岡一人氏が記者団に対して言い放った言葉を、野村氏は忘れることはなかったという。
後日、先輩捕手は母親とともに鶴岡監督のもとへ謝罪に訪れたが信頼回復には至らず、シーズンの開幕戦は野村氏がマスクを被ることとなった。先輩のそんな姿を見て、時間をかけて築き上げた信用も一瞬で失われることを思い知らされたのだとか。
野村氏自身が、好きな言葉に「信は万物の基を成す」を挙げるのも、そんな背景があってのことだろう。ではどうやって“信”を得ていくか。
野村氏は「真摯に物事に取り組み、力を蓄えていくことで自然と周囲から得られるものだと思っている。小手先のテクニックや追従などで得られるものでは決してない」と説く。良好な人間関係。その礎には何よりも信用、信頼がある。それを生むのは、謙虚な気持ちなのだ。
 

野村監督の名言②
「人生は、縁に始まり縁で終わる」

一期一会とはよく言うが、野村氏もまた“縁”というものを非常に大事にしていた。
「縁に始まり、縁で終わる。人生みんなそうだ」と語り、「縁を感じてドラフトで獲得した選手もいるし、そういう選手があとになって恩返ししてくれることもあるのだから、出会いは大切にしなければいけない」と話している。
稲葉篤紀選手の獲得秘話などはつとに有名だ。
当時、明治大学の選手だった息子の野村克則氏に「一度でいいから自分の試合を観にきてほしい」と懇願されて足を運んだが、その試合で大活躍したのが法政大学で4番を務めていた稲葉選手だったのである。その縁が両者を巡り合わせ、以後、ともにリーグ優勝や日本一を経験することとなる。
野村監督の「マーくん、神の子、不思議な子」という“迷言”でも知られる田中将大選手との師弟関係も広く知られるところだ。ドラフトで4球団競合の末に獲得した、当時の駒大苫小牧高エースの田中選手。マーくん獲得時に、野村監督は次のメッセージを送っている。
「人生は縁。弱い球団だから、やりがいがある。楽天に行って(俺が)強くしてやろうという意気込みを持ってきてください。一緒にやりましょう」。
東京遠征時、とある中華料理店でのランチ中に知人から紹介されたという野村沙知代夫人との出会いもまた同様だろう。
「縁が縁を呼ぶ」と語るように、ひとつの出会いを大切にすることが、やがては良い縁に恵まれることにもなる。その事実を、野村監督は身をもって教えてくれている。
 

野村監督の名言③
「この人には感謝しています」という人が一人以上いればいい

野村監督が野球選手を志すきっかけとなったのは、女手ひとつで育ててくれた母への感謝である。
母に良い暮らしをさせてあげたい、恩返しをしたいという思いが数多の困難を乗り越えさせ、その思いは監督時代に選手を見る指針にもなっている。
「最近の野球選手にはこういった感謝の心が少ない。そういう思いが薄くなっているように見受けられる。両親、親戚、恩師……世話になった人に、感謝をすることが大事だ」。
感謝の心を持つこと。それは、良好な人間関係を築くうえでも非常に重要である。そして、相手への敬意はきっと伝わり、やがて相手からの敬意を生むのだ。
「感じる力というのは、感謝する心からスタートしている。感謝を持っている人間は感性も鋭い」と野村監督は語った。その尊い気持ちは人間関係を円滑にし、仕事をするうえでもポジティブな要素となるに違いない。
野村氏は、よくミーティングをする監督で知られる。その際、“人”という字を例にとり、勝利におけるチームワークの重要性と、良い人間関係を築くことの大事さを説いていた。
「謙虚」「縁」「感謝」。この3つを心に留めることで、人間関係は大いに開けるのではないだろうか。
春のなんでも3選’S
この春の やりたい! 知りたい! 手に入れたい! アレコレをジャンルレスでピック。それぞれの“3選’S”を披露する。上に戻る
菊地 亮=文
参考資料
『野村克也の「人を動かす言葉」』(新潮社)
『野村克也100の言葉 〜人を育て、動かすヒント〜』(宝島社)


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