37.5歳の人生スナップ Vol.96
2019.12.01
LIFE STYLE

「友達と仕事するってどう?」同級生コンビROTH BART BARONの差し向かい対談

近頃、クリエイティブな人たちの間で何かと話題になっているバンドがある。ROTH BART BARON(ロット バルト バロン)——三船雅也(ヴォーカル&ギター、作詞・作曲)と中原鉄也(ドラムス)の2人を中心としたユニットだ。

ROTH BART BARON(ロット バルト バロン)——三船雅也(ヴォーカル&ギター、作詞・作曲)と中原鉄也(ドラムス)の二人を中心としたユニットだ。
ROTH BART BARON(ロット バルト バロン)●中原鉄也(左)と三船雅也(右)を中心とした音楽ユニット。2014年『ロットバルトバロンの氷河期』でデビュー。以来アメリカ、カナダ、イギリス、中国など国内外で活動する。11月20日(水)に4作目となるフルアルバム『けものたちの名前』をリリース。2020年5月には彼らの地元である目黒のパーシモンホールでワンマン・ライヴを行なう。www.rothbartbaron.com

三船と中原の2人は中学校からの同級生で、人生の半分以上をともに過ごす仲。気心知れた友達同士だからこそ、プロとして音楽をやっていくことには人知れぬジレンマや苦労もあるに違いない。そう思って設定した「差し向かい対談」。出会いからバンド結成、そして現在までの歩みを辿るうち、驚きの告白も飛び出ることにーー。

 

部活の相棒から人生のパートナーへ

ーー2人はもともと中学の同級生で、部活も一緒だったんですよね。

三船 はい。テニス部でペア組んでました。

中原 最初はクラスも同じだったけど、部活に入ってから親密になった感じですね。

三船 クラスで会って、部活で会って、休みの日も中原くんちでゲームやったりして遊んで。中学のときは常に一緒にいましたね。

ーーそこからどうやって「バンドやろうぜ」ってなったんですか?

澁谷征司が撮ったロットバルトトロン
澁谷征司=写真

三船 中学を卒業して、お互い違う高校に行ったんですけど、僕は高校を中退して引きこもり生活に入ったんです。自宅で誰にも会わず、ずっとひとりで音楽を作ってたんですけど、20歳くらいのときかな、なんかのきっかけで中原くんに再会して。中原くんは高校時代の同級生とバンド組んでいてドラムやってたんですね。そこで「お前も音楽やってんの?」って盛り上がって、そこからまた一緒に遊ぶようになったんです。

中原 そう、それで当時僕がやってたバンドに三船を呼んだんですよ。スタジオに遊びに来れば? みたいな感じで。

三船 その頃は僕も引きこもりを脱してリハビリし始めてたときで。音楽の知識はあるけど経験はないから、人とやってみるのも面白そうだなと思って、彼のバンドのスタジオ練習に行ったら、メンバー同士が取っ組み合いのケンカを始めて、結局ベースの人が辞めることになったんです。で、『三船、代わりにベース弾いてくれない?』って言われて加入することになった(笑)。

中原 (笑)当時はボーカルの子が書いたオリジナル曲と、ブルーハーツとかミッシェル・ガン・エレファントとかのコピーをやってたんですけど、三船が入ってからは、やる曲も変わっていきました。

三船 僕が引きこもってた3年間で聴いてたのは古い音楽ばかりでしたから。ビートルズとかビーチ・ボーイズとか、60年代、70年代を掘りまくってたから。ベースもミッシェルにならずに若干ポール(・マッカートニー)風になるんですよ(笑)。

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友達と仕事をするうえでのモチベーション論

ーーそんなふうに始まったバンドだと、続けていこうという強い意志がなければなかなか続かないと思うんですけど、何が2人を結びつけていたんですか?

中原 なんだろう……節目節目で「もっと頑張ろうぜ!」ってポイントがあったってことですかね。大学卒業するくらいのタイミングでYAMAHAのコンテストに出ようってなって、そしたら次は「CD出してみない?」って話になり……そういうふうに目標ができるたびに「やってみよう」ってモチベーションが上がったんですよね。そこは体育会的なノリというか。

ーーそのときは2人のやりたい音楽のビジョンは共通してたんですか?

中原 最初のビジョンは……彼は自分のやりたいことを最初から持っていて、それを紙に書いてみんなで共有してましたね。

三船 俺、何書いたか覚えてない。

中原 武道館目指そうぜ、とか、そういうんじゃなく「自分が聴いていたような洋楽の大物バンドと肩を並べる存在になりたい」みたいなやつ。

ーーいきなりそんな大きすぎる目標を聞いてどう思いました?

中原 あんまりピンとこなくて「そうか」って普通に受け入れてました(笑)。

ーー(笑)三船さんは、中原さんがそれに付き合ってくれるだろうって確信があった?

三船 そのときはまだわかんなかったですけど……でも、僕が楽しいことを提供し続ければ付き合ってくれるとは思ったかな。

中原 まあ、お互いの波がうまいこと合ったという感じですかね。

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うまくいく秘訣は「公私混同」

日本を代表する写真家、上田義彦も彼らを撮っている。背中合わせに座ったのには、意味はある?

ーーユニットという形は、2人の人間が常に向き合わざるを得ないから大変なこともあるでしょうね。

三船 大変ですよ(苦笑)。

中原 うん、大変だね(苦笑)。

ーー史上「これはヤバかったぞ」という時期はありましたか?

三船 今ですね。

ーーえっ!?

中原 うん、間違いなく今だな。

ーーえーと(汗)、それは音楽に対する姿勢が違ってきたとか、そういうこと?

三船 そう。僕から見て、中原くんが辿り着こうとする目標に対して怠惰だったりとか。

中原 う〜ん……それは怠惰というよりも、なんか、自分に対してブレーキかけてる部分があるんですよね。

ーーそれこそ補完関係なんじゃないですか。一方が熱くなったら、もう一方が「落ち着こうよ」っていうのは、理想的な関係に思えるけど。

中原 ……そこらへんのことがわかったら、もっとうまくいくと思うんですけどね(苦笑)。

三船 今、絶賛解明中なんです。2人の関係を再定義しているところです。小さいときからずっと一緒にいるから、ある種当たり前すぎて、ありがたみに気づいてないのかもしれないし、関係を俯瞰して見る必要があるのかも。

ーー長く付き合っているとそうなりますよね。

三船 音楽作ってるときは毎日感情のアップダウンがあるから、衝突もありますしね。でも、そんな状況でもこの人、スーパー・マイペースなんで気にしないんですよね(笑)。それが関係が続いてる秘訣かもしれない。

ーーそれで三船さんが助かってる部分はあると思いますよ。

三船 わかってるんですよ、それは(笑)。いい意味でも悪い意味でもブレないんですよね。そこは見習いたい。

写真家、澁谷征司が撮った一枚。

ーーそんな2人のパワーバランスはバンドにどう影響していますか? 友達とはいえ、仕事となるとシビアになる場面もありますよね。

三船 うん。でも情はあるんだよね、いつも。その辺のバランスはホント難しいんですよ。本当にビジネスとして捉えて、このパートにはこの人が最適だと思って人選して構成したバンドじゃなく、不思議な形で癒着したまま育ってきてるから。でも、僕のモットーが「公私混同」なんで(笑)。生活と仕事が混ざり合ってる状態でこれまでやってきたし、そういう意味では、そもそもドライにはなり得ないんですよ。

中原 ずっと一緒にいるから、成長したとしてもお互いあんまり見えてないし。たまに会った人が三船に「ギター上手くなったよね」とか言ってるんですけど、そういうのも僕は気づいてないので(笑)。彼なりにいろいろ試行錯誤して、歌い方を変えたりしてるのはわかりますけど。

ーーそういうのは「わかってるよ」って伝えるの?

中原 いや、言わないです(笑)。

ーーハハハ。なんか、長続きしてる理由がわかってきた気がします(笑)。

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2人の最新の“仕事”に込めた想い

ーー新作『けものたちの名前』について聞きたいんですが、前作の『HEX』がとても高い評価を得て、バンドも違うフェイズに入った感覚があったじゃないですか。それを踏まえて、どういうアルバムを作ろうと?

『けものたちの名前』ROTH BART BARON(felicity)
『けものたちの名前』ROTH BART BARON(felicity)

通算4作目のフルアルバム。映像を喚起させる多元的なサウンド、壮大な世界観、シンプルな言葉で紡ぐ人間の普遍的な感情——彼らがこれまで培って来た要素を最良の形で封じ込めた意欲作。純粋無垢な「こどもの視点」を通して、現代に生きる大人たちの姿を鮮やかに浮かび上がらせる楽曲が揃う。未知数の魅力を持つ13歳のシンガー、HANAをはじめ、ザ・ナショナルを手掛けたジョナサン・ロウ、チャンス・ザ・ラッパーを手がけたL10Mixeditがエンジニアとして参加している。

三船 前作の延長でもあり、かつ深化でもあり、という作品です。あらかじめ「こういうことをやろう」というふうには決めないで、むしろ自分にないものを求めて。「手の届かないリンゴを背伸びして取りに行く」みたいな感じだったな。そのためには自分の心に、どう深く潜っていくのか……2010年代をどういうふうに終わらせるかっていうテーマもありました。

ーーそのビジョンは共有していたんですか? 中原さんが三船さんに「次はこうしたらいいんじゃない?」という提案をしたりとか?

中原 共有はしてましたけど、提案に関しては、僕からは具体的なことは言わないです。

ーーちなみに、中原さんが、三船さんが書いた曲の中で「すごくいい」と思ってるものはありますか?

三船 フフフ、いい質問ですねぇ(笑)。

中原 えっ……(めちゃくちゃ照れている)……今作で言うと『けもののなまえ』とか……いろいろありますよ。

三船 (中原に向かって)ありがとうございます(笑)。

ーー普段、こういう話もしないんですね。

三船 しないですよ。そのへんはお互い日本人らしくてね。褒めない(笑)。

ーーピュアで豊潤で、確かな世界観としなやかな強さが感じられる堂々とした作品だな、と思います。これは目指していた通り? それとも、思ってもみなかった仕上がり?

三船 基本、不確定要素も楽しめるようにスペースは残してあるんです。バンドでやるってことは、イレギュラーなことが起こるってことだから、自分以外の人が入ってきた意味を作品の中に取り込めるようにしないと。本当に譲りたくないところや作品の根源は保ちつつ。特に今回はたくさんの人たちが参加してくれたんですけど、イレギュラーなことがいろいろ起こって作品に影響したという意味では、それは予想通りだったと言えるかもしれない。

中原 もともとバンドの芯の部分がちゃんとあって、そのうえで余白も楽しめるようになっているから、ほかの人が入ってきてもバンドの本質は変わってないですけど。

三船 今回はゲストヴォーカルのHANA(13歳のシンガー)はじめ、多様な年齢、性別、人種を作品に取り入れて、ダイヴァーシティ(多様性)を確保しながら、バランスを取ったアルバムにしたかった。でも実際出来上がってみると、そうした属性を越えたものになっていて、それがちょっと驚きでした。結局、いいものは年齢も性別も関係なくいいってことが実感できた。そのことに感動しました。

ーー音楽と向き合うことは、自分と向き合うことでもあります。2人がアーティストとして活動してきた歳月の中には、どんな“気づき”がありましたか?

中原 ツアーで海外も含めいろんな場所を回って、いろんな人と出会って、世界には本当にいろんな人がいるんだっていうことを再認識したんですけど、その多様性の中で自分という存在をどう保つか……そのことを改めて考えさせられました。そういう体験の中で得たものが、僕らの作品として、自然とアウトプットされてるんじゃないですかね。

三船 そうだね。僕はたまたま、日本人離れした見た目ということもあって、昔から自分は他の人とはちょっと違うなっていう意識があった。だからこそ“違い”に寛容になったんだけど、日本って、とかく横並びだから、“人と違う”ということが“生きづらさ”に繋がったりするでしょ。だからこそ余計に、ユニバーサルな観点で、あらゆる属性に関係なく誰にでも楽しめる音楽、というのを意識して作るようになった。“違い”に寛容ということは、自由度が広がることでもある。今回、『けものたちの名前』で、それがある程度達成できたのかな、と思います。

 

美馬亜貴子=取材・文

# ROTH BART BARON# けものたちの名前# バンド
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