Camp Gear Note Vol.5
2019.08.22
LIFE STYLE

「欲しいものをつくる」。多彩なアイテムを生み出す「モンベル」のシンプルな信条

連載「Camp Gear Note」
90年代以上のブームといわれているアウトドア。次々に新しいギアも生まれ、ファンには堪らない状況になっている。でも、そんなギアに関してどれほど知っているだろうか? 人気ブランドの個性と歴史、看板モデルの扱い方まで、徹底的に掘り下げる。

ロゴ

国内はもちろん、世界中から高く評価される日本発信のアウトドアブランド「モンベル」。一人の若きクライマーから始まった登山用品メーカーが、なぜ指折りの名門になりえたのか? 90年代から同社を見てきた広報部課長の金森 智さんが答えてくれた。


創設者は世界でも知られるクライマー

金森さん
国内だけでも1000名以上社員のいる「モンベル」。学生時代からクライミングにハマりっぱなしの金森さんは、社員数約70人の頃からの生え抜きである。

——国産アウトドアブランドの雄として知られ、幅広い層から支持されている「モンベル」。いつ、どのような経緯で誕生したのでしょうか?

現会長の辰野 勇が1975年、自身28歳の誕生日に登山用品メーカーとして立ち上げました。

1969年、彼は21歳でスイスはアルプスのアイガー北壁登攀(とうはん)に成功。当時、日本人第二登であり世界最年少記録でしたから、若きトップクライマー辰野 勇の名は広く知れ渡ることに。そして、1970年に日本初のクライミングスクールを開校。少年時代から登山に関するビジネスを興すのが夢だったそうです。

モンベル
写真提供:モンベル

——アウトドアマンがスタートさせたブランドは数多くありますが、「モンベル」は抜きん出た才能から始まっているのですね。

過酷な環境を知る創設者と登山好きが集まって始めた手作りの会社だけに、「自分たちの欲しいものを作る」という考えがスタートから根底にありました。例えば1976年に完成したスリーピングバッグ。

写真提供:モンベル

かつて辰野が使っていたのは米軍払い下げのモデルで、濡れると重くなり防寒性も損なわれる代物でした。そこで、最新素材だった米国デュポン社のダクロン(R)ホロフィル(R)に着目し、環境に左右されない高性能寝袋を誕生させたわけです。

初期に製作した寝袋と雨具が大ヒット

金森さん
「日本の厄介な気候に対応するアイテム作りは、我々の永遠のテーマです」。

——特に日本は雨が多く湿った気候。水に強くコンパクトなスリーピングバッグは心強い味方になります。

おっしゃる通り。スリーピングバッグはヒットし、立ち上げ直後の会社にとってありがたいブースターとなりました。

続いてデュポン社の特殊繊維、ハイパロン採用のレインギアを製品化。こちらも軽くてコンパクトに折り畳める、当時としては画期的な性能が好評でした。新素材をチェックし、積極的に取り入れる姿勢は今も同じなんです。

——「自分たちの欲しいものを作る」とは現場を知るアウトドアマンならではですよね。

現在も社員のほとんどがアウトドア愛好家。「モンベル」ではアルバイトを含めた全従業員がリクエストシートに記入できるようになっており、半年ごとに集計して商品開発のヒントにしています。

自分たちのアイテムを相当使い込んでいるので非常に要望が細かい。店舗スタッフはお客さんからの意見も届けてくれて、とても参考になりますよ。愛用者の声なくしてプロダクトは進化しませんから。

金森さん
「社員からお客様まで、いかなるリクエストも拾い上げ、企画部で真剣に検討します」。

——今では登山だけではなく、アウトドア全般をカバーしていますよね。

1979年にムーンライトテントを発表し、翌年にはシンサレート(TM)やゴアテックス(R)といった、ハイテク素材採用のウエアをいち早くリリース。社員が増え、年を重ねることで欲しいもの(ニーズ)が拡がり、商品ラインナップが拡大していきました。

——‘82年に発売したストームクルーザージャケットは、今もレインウエアの最高峰と称えられています。

ゴアテックス(R)を使用した当時の最先端軽量レインウエアで、若かりし僕も憧れていました。ただ、学生には値段が高くって(笑)。モンベルに入社して真っ先に購入。新モデルが発売されると新調しています。

ストームクルーザー
写真提供:モンベル

地域活性の一助としてさまざまなエリアとコラボを

品川店
モンベル 品川店をはじめとする直営店が、ブランドとユーザーを繋げるハブに。

——ビッグブランドに飛躍したきっかけは何だと思いますか?

いくつかのきっかけがあるなかで、ひとつは直営店の展開でしょうね。1991年、第一号店の大阪を皮切りに六甲、恵比寿とオープン。ひとつの店だけですべてが揃う、ワンストップショッピングをテーマに、今では120店舗を数えるほどとなりました。直接お客様に商品の魅力を伝えられるのは、大きなアドバンテージだと思います。

——今後の展開はどんなものに?

いろんな自治体、地域とのコラボレーションをしています。地方に活力がないと、そこにしか存在しない自然の遊び場も失われてしまいます。そんな寂しい事態、アウトドアブランドとして見逃せません。

現在92万人以上のメンバーがいる年会費制(1500円)のモンベルクラブでは、ショッピングだけでなく各地の提携施設でもさまざまなサービスが受けられます。今は約1800の施設と協力していますが、もっと増やしていきたい。そして、地域活性の一翼も担えればうれしいですね。


【取材協力】
モンベル 品川店
住所:東京都港区高輪4-8-4 モンベル高輪ビル1階
電話番号:03-6866-7501
営業:平日11:00~21:00、土・日曜、祝日10:00~20:00
無休

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平安名栄一=写真 金井幸男=取材・文
# Camp Gear Note# アウトドア# ブランドヒストリー# モンベル
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