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2019.08.21

あそぶ

遊び心を込めた公共デザイン。「虎党」の鉄道マンが作った驚きの路線図アート

当記事は、「東洋経済ONLINE」の提供記事です。元記事はこちらから。

阪神タイガースの「虎マーク」を表現した路線図 阪神タイガースの「虎マーク」を表現した路線図(写真:大森正樹)


地下鉄の駅構内に掲示されている大きな路線図の前を子どもたちが通り過ぎる。一見すると何の変哲もない地下鉄の風景だが、路線図をよく見ると、「あれ? どこかで見たことがあるマークだぞ……」。

描かれているのは虎の顔だ。「虎党」ならずともプロ野球ファンならピンと来るはず。この虎の顔は、阪神タイガースの球団旗やユニホームに描かれている「虎マーク」なのだ。

駅名の代わりに選手名が


ここでようやく「こんな路線図は存在しない」ということに気づくだろう。この路線図は、関西の鉄道会社(阪神電鉄ではない)に勤務する大森正樹さん(52)の創作だ。
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大森さんは阪神タイガース検定・会場試験に合格したほどの筋金入りの虎ファン。大学でデザインを学び、鉄道会社入社後は車両デザインに携わる。つまり、タイガースと鉄道とデザインの3分野に造詣が深い希有な人物であり、東洋経済オンライン2016年8月19日付記事(「阪神『虎マーク』が80年間も変わらない理由」)も執筆している。

「この写真は2006年の年賀状用にデザインしたんです」と、大森さんが笑う。「A Happy New Year」という記載とともに大森さんの名前が書かれており、右側に2006という数字と犬のイラスト、左側には2005という数字と鳥のイラストがあることからも確かに年賀状である。鳥のイラストがかつての南海ホークスの「鷹」マークであることに気づいて、ニヤリとした人もいるだろう。

写真ではわかりにくいが、この路線図は駅名の代わりに選手名や歴代の監督名が記載されており、優勝年の打順などで選手名が並んでいる。じっくり読み込んだら正月3が日があっという間に過ぎてしまいそうだ。

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大森さんの年賀状デザインは毎年、タイガースにちなんでいる。2006年の年賀状をデザインするにあたり、大森さんは思いついた。「虎マークは80年以上前にデザインされたにもかかわらず、今見てもまったく古びていない。虎のデザインを路線図で表現できたらすばらしい」。完成までに2週間程度を要したが、選手や監督の名前をどうやって入れるかを考えるのは非常に楽しい作業だったという。

今年4月、大森さんの「路線図」は別の形で多くの人をうならせた。第1作の公開から今年で50周年を迎え、新作も公開される「男はつらいよ」シリーズ。映画を製作する松竹は、50周年を盛り上げるためのイベントとして、優れた「男はつらいよ」のイラストを表彰する「男はつらいよ ファンアートコンテスト」を開催した。

虎と寅が共通しているからというわけではないが、大森さんは大の寅さんファン。得意の路線図を使って、寅さんのイラストを描き、このコンテストに応募したところ、見事最優秀賞を勝ち取った。

「寅さん」を路線図で表現


受賞作品は「寅さんの50作を路線図で表現しました」と、大森さん。虎マークの路線図同様、寅さんの路線図も駅名の代わりに50作の題名が記載されている。
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路線図で寅さんの顔が表現されているのは見事というほかないが、公共デザインの専門家である大森さんが最も注目してほしい点は、男はつらいよの舞台となることが多い常磐線、京成線、山手線などが、実際の路線に比較的忠実に描かれている点だという。加えて、江戸川を路線図に描き込んだ点についても注目してほしいという。

「男はつらいよ」シリーズの寅さんを描いた路線図 「寅さん」を描いた路線図。駅名は作品名になっている(写真:大森正樹)


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