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2019.06.10

ライフ

あるシリア難民、新たな人生は海とともに 〜A Syrian Surfer〜


ただくつろぐだけでも気持ち良い時間を過ごせ、サーフィンをした瞬間に人生は大きく変わってしまう。ひとつのシーンからそんな海の魅力を発見していくコラム。


今回は「A Syrian Surfer」




日本が自衛隊を派遣したイラク戦争が始まったのは16年も前のこと。ゆえに記憶はもう曖昧かもしれない。だが「アラブの春」に端を発するシリア危機は9年目に突入。国連UNHCR協会によれば、この現在進行形の内戦において国外へ脱出した難民は560万人に及ぶといい、実に北海道の人口以上の人たちが他国へ逃れ続けている。

そのうちのひとりがアリ・カッセム(写真右)。家族でレバノンへ避難し、彼はそこで生まれて初めて海を目にした。ローカルサーファーたちが楽しく波に乗る様子を見る日々を過ごし、やがて自分もトライしようと決心。

ローカルたちは彼を迎え入れ、ギアを与え、レッスンを施し、サーファーとして生きる道へ誘った。今では「波を求めて世界を旅し、いつかシリアでサーフィン教室を開きたい」と夢を抱く。海は中東でも楽しさに溢れていたのだ。悲しいニュースが多いかの地にあって、少なくともレバノンの海には笑顔が浮かんでいるのである。



memo
難民に関する微笑ましいニュースは一例で、総じて彼らの日々は未来の見えないもの。自国を追われた全難民が安全な地にたどりつくまで進む距離は年間で総計20億kmといわれる。そしてその距離の果てしなさに触れられるキャンペーンを国連UNHCR協会は展開。1日に進んだ距離をサイトなどから入力し、参加者の総計で20億kmを目指す。なかなか増えていかない数字に難民の過酷な環境が見えてくる。www.japanforunhcr.org



UNHCR / Hussein Baydon=写真 小山内 隆=編集・文

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