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2019.05.08

ライフ

「取材が世界で一番キライ」と断言するトーマス・キャンベルが東京で話したこと【後編】

ヴィスラとのプロジェクトで作った限定のサーフボードを頭に乗せたトーマス・キャンベル(右)。一緒に写っているのは、このボードを削ったトラビス・レイノルズ。
ヴィスラとのプロジェクトで作った限定のサーフボードを頭に乗せたトーマス・キャンベル(右)。一緒に写っているのは、このボードを削ったトラビス・レイノルズ。
取材日の朝、滞在先のホテルを出る際に「世界でいちばん嫌いなことがインタビュー」とこぼしたというトーマス・キャンベル。カリフォルニアのアートシーンを牽引する男は、そんな言葉とは裏腹にご機嫌で取材に応えてくれた。今回の東京トリップについて聞いた前半に続き、今回は家族のことからインタビュースタート!
 
ーー父親でもあるよね。家族ができてインスピレーションの源泉に変化はあった?
家族は大きな存在だよ。彼女たちのおかげで毎日が幸せなんだ。日本に来るちょっと前には妻と3歳になる娘とメキシコにバケーションに行った。

ーー何をしたの?
海の近くでゆっくり過ごしたんだけど、2人が楽しそうにしている様子を見てるだけでもいいもんだよ。
間違いなく今の僕にとって家族は最優先事項。だから家族と仕事のバランスがうまく取れるように意識している。偉大な父親に思われるようにならないとね。同じように、世界中の人たちの誰もが好きなことをして、楽しく暮らしていてほしいと思う。愛や平和をより強く意識するようになったってことかな。
ーー今回のショーでヴィスラのプロジェクトはひと段落?となると、家族との時間を増えそうだよね。

ただ、最近はスケートボードのムービーを撮り終えたから、新しいサーフフィルムへの取り組みをスタートさせたんだ。今は編集をしているところで、順調にいけば年末もしくは来年の早い時期に発表できるはず。タイトルは「Wi’ Wo」。これまで僕が創ってきた作品とは異なり、クリエイティブであるとは何かを伝えるような、実用性には乏しい内容になると思う。
ーーフォーカスしたサーファーは誰?
ライアン・バーチ、アレックス・ノスト、ジャレッド・メル、カリナ・レゾンコ、デイブ・ラスタヴィッチ、トレバー・ゴードン、クレイグ・アンダーソン、ジョエル・チューダーといった面々。彼らのサーフィンはとても素晴らしいからね。
ーー東京オリンピックを目指すようなサーファーとは違う顔触れだね。
僕は大会にあまり興味がないからね(笑)。サーフィンのオリンピック種目化は良いことだとは思うよ。けれど、僕が見ているサーフィンとは違う。

ハイパフォーマンスのサーフィンという点からすれば、世界チャンピオンを決めるワールドツアーがあって、今年なら年間11戦の試合を通じて王者を決める。いわば今の最高のサーフィン、最高のサーファーがそこで見られるわけだよね。
でもオリンピックは1回勝負。出場者の誰でも勝者になるチャンスがある。ケリー・スレーターやジョン・ジョン・フローレンスのような、ワールドツアーで結果を残してきたサーファーが勝つならいいことだとは思うけど、1回勝負ならではのウィナーを探すとすれば……僕はやっぱり……興味はないな。
ーープロジェクトに次ぐプロジェクト、そして家のことで、忙しくも充実した日々を送ってるんだね。
今回の東京は1週間に満たない滞在だけど、年内にまた来るかもしれないしね。というのも、1990年代のニューヨークでアレッジド・ギャラリーをやっていたアーロン・ローズが、ドキュメンタリー映画『ビューティフル・ルーザーズ』の10周年を記念したエキシビジョン「ナウ&ゼン」をやってるんだ。
6月に来日するって言ってたよ。彼のプロジェクトには参加したいと思ってるから、2カ月後、もしかしたら僕も東京にいるかもしれないんだよね。

今回のヴィスラとのプロジェクトで9部限定リリースされたソーイングブックは即完売。人気の高さを伺わせた。
こうして終わった約1時間のインタビュー。結果、トーマスが暮らすサンタクルーズと同じくらいゆるくて心地よい時間となり、握手を交わして別れた。次に会えるときが楽しみだ。
 
PROFILE
トーマス・キャンベル●カリフォルニアを拠点に活躍するアーティスト。サーフ&スケートのシーンと密接に関わり、映像や写真、ペインティングなどあらゆる手法の作品を発表する。メロウなサーフムービー『スプラウト』『ザ・プレゼント』は傑作。妻と娘の3人暮らし。
 
吉澤健太=写真 小山内 隆=取材・文
 


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