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2019.05.07

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「取材が世界で一番キライ」と断言するトーマス・キャンベルが東京で話したこと【前編】

トーマス・キャンベル●カリフォルニアを拠点に活躍するアーティスト。
ポカポカ陽気の午後に訪れた、東京・千駄ヶ谷にあるロンハーマンのショールーム。
ほのぼの気分で椅子に座り待っていると、アテンドをしている人がポツリ。「世界でいちばん嫌いなことがインタビューと言われているんです」とこぼした。
「え!? 機嫌悪いのかな……」と悪しきイメージが頭をめぐり、どこか落ち着かない気分でいると、颯爽と待ち人、トーマス・キャンベルはあらわれた。しかも「お、キミたちか。久しぶりだね」といった穏やかさで。手も差し伸べてきた。
なんだ、ご機嫌じゃない。
そしてみずから着席。「よし、この自然の流れを壊さないように」と、まずは他愛もない会話から始めることにした。
 
ーーなんだか久しぶりの東京じゃない?最後に来たのはいつ?
原宿にあるギャラリーのコモンで個展「スライド アウト ブレインズ アウト 1997-2012」をやったときだね。
6年前の秋かな。原宿にあるギャラリーのコモンで個展「スライド アウト ブレインズ アウト 1997-2012」をやったときだね。同タイトルのアートブック発表と、それにまつわる写真や、パッチワークによる作品を展示したんだ。いっぱい人が来てくれて、6時間くらいはサイン書いてたよ。
ちなみに初めての東京は1997年だから22年前。それ以来、少なくても10回は来てるよ。
ーーお気に入りの場所はあるの?
和の朝食が好きなこともあって、今回泊まっている渋谷のホテルにあるレストランは良かった。25階にあるから眺めも良くてね。朝はいつも和定食さ。
同じ渋谷では、JBSに行くこともある。寡黙なマスターがいる喫茶店で、壁にたくさんのレコードが収められている。音も最高なんだよ。行くときは午後遅め、客が少ないタイミングが多いかな。あとはお店じゃないけど、街中で人を見ているのも好き。日本人はスタイルは面白いよ、ホントに。
ーートーマスが住むサンタクルーズとは雰囲気がまったく違うもんね。
サンフランシスコから1時間ほど南下したレイドバックしたビーチタウンだからね。ムードはゆるいし、東京とは時間のスピードも人の多さも違うよ。
ーーそのサンタクルーズに去年の2月にいったとき、ダウンタウンでたまたま見つけたミュージアムでトーマスの作品展がやってたよ。
MAH(サンタクルーズ・ミュージアム・オブ・アート・アンド・ヒストリー)のことかな。個展ではなく入場無料のスペースに作品を飾っていたやつね。2013年にはそこで大々的な個展をやったんだ。目玉は壁一面に描いた壁画。下書きなしで描いた作品で、カリフォルニアではけっこうな話題になったんだ。
 

ヴィスラとのプロジェクト、クリエイションの源について

ーーそして今回はサーフブランドのヴィスラとのプロジェクト。いつもプロジェクトをいくつも同時に手掛けているの?

どうだろうね。進行中のプロジェクトがなくても、毎日何かをしているから。アーティストとしてのキャリアは長いけど、いつも新人の気持ちでいるように心掛けていて、日々、新しいことにトライしたいと思ってるんだ。ときには仕事としての側面が強いプロジェクトもあるから楽しいことばかりではないけど、それでもクリエイションを生業にできているのはハッピーなことだよ。
ーー今回、ヴィスラのために特別に行ったクリエイションはある?
この夏に向けたヴィスラとのコレクションは、Tシャツ、ボードショーツ、キャップ、ビーチタオルに僕のアートワークをのせたもの。今までサーフテイストを感じる作品を多く創ってきたけど、これほどボリュームあるサーフブランドのプロジェクトに携わったことはなかったんだ。
お馴染みの波モチーフを胸にプリントしたTシャツ。その他ヴァリエーション豊富に揃う。Tシャツ5600円〜/トーマス・キャンベル×ヴィスラ
刺激的だったし、心地良いモノが作れたと思ってるよ。なかでもパッチワークは素材の組み合わせにこだわったね。
写真なら、今回のためにコスタリカで撮った写真もあれば、2003年に撮った未使用の写真も選んだ。サーフボードのフィンやライディングの写真もあって、新しく撮り下ろしたものはポラロイドによるもの。風合いが良いんだよね。そしてアートピースにも新しいモチーフを取り入れた。葉のデザインや、これまで使用したことのないカラーを採用したんだ。
ヴィスラとのプロジェクトで作った2本限定のサーフボード。トーマスのアートワークが出色。60~70万/トーマス・キャンベル×トラビス・レイノルズ
改めて、アートとは学びのようなものだと思ったよ。イメージをより良く具現化するために、内なる自分と語り、ほかから学び、新しいことに挑戦しながら自身を進化させていく。その過程は、とても幸せなものだったね。
ロンハーマン千駄ヶ谷店「R」に生まれたトーマスの出張アトリエ!?
ロンハーマン千駄ヶ谷店の一角にトーマス自ら、自宅から持ち込んだアートピースをペタペタ。
今回のヴィスラとのプロジェクトは、RHC ロンハーマンとロンハーマン「R」で先行リリースされた。そのお披露目として誕生したのがこのスペース。ロンハーマン千駄ヶ谷店「R」の一角にトーマス自ら、自宅から持ち込んだアートピースをペタペタ。1週間限定で公開されていたのだ。この世界観を身に纏えるワードローブは現在も販売中。“着るアート”としてぜひチェックを!
“取材嫌い”という前評判を覆し、ハッピーに終えたインタビュー前半戦。次回は、トーマスの家族の話し、そして今進行中のプロジェクトについて。
 
PROFILE
トーマス・キャンベル●カリフォルニアを拠点に活躍するアーティスト。サーフ&スケートのシーンと密接に関わり、映像や写真、ペインティングなどあらゆる手法の作品を発表する。メロウなサーフムービー『スプラウト』『ザ・プレゼント』は傑作。妻と娘の3人暮らし。
 
吉澤健太=写真 小山内 隆=取材・文


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