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2019.04.03

ライフ

“へんないきもの展”の“へんな説明文”を書いた人は“へんなおじさん”なのか


いきなり何事かと驚かれたかもしれない。実はこれ、迷惑メールの類ではなく、池袋のサンシャイン水族館で始まった「へんないきもの展3」で展示中の、タラバガニに関する説明文の一部なのである。
今回で3度目の開催を数えるこの特別展。動員数は累計約20万人にものぼるが、人気の理由のひとつがこのアクロバティックなキャプションだ。ライターは『へんないきもの』(新潮文庫)の著者・早川いくをさん。ネタバレになるので全文はお見せできないが、要するにタラバガニはカニではなく、ヤドカリの仲間なのだということが書かれている。
見渡すとこれだけが例外なのではなく、どれもこれも“早川節”が利いているではないか。一体どんな人物なのか、さぞ“へん”に違いない。居ても立ってもいられず、ご本人を直撃した。
『へんないきもの』の著者、早川いくをさん。後ろにあるのは「花魁型ターミネーター」とタイトルを付けたハナミノカサゴのキャプション。
「僕自身は生き物の研究者ではなく、出版社から『本を書かないか』という依頼があったので、リサーチして書き始めただけなんです。でも調べているうちに愛着が湧いてくるし、こんなに奇妙な生き物がいるって知ったら人に伝えたくなりますよね」(早川さん)。
意外にもマトモそう。いや、むしろ男前である。研究者やマニアではなかったというのは驚きだが、そんな早川さんが人に伝えたくなるほど奇妙な生き物って?
「例えば以前、“ハダカデバネズミ”という生き物をご紹介していたのですが、これが蜂や蟻のように女王を持つ生き物なんです。でも、展示したのは下僕たちばかりで。女王がいない下僕って、もう露骨にサボるんですよ(笑)。コタツで寝てる酔っぱらいそのもの! もうオッサンみたいで、それが人間くさすぎて」。
その様子がコチラだという。
これは……本当にベロベロに酔ったオッサンのようだ。(写真提供:早川いくを)
思った以上にちゃんと「オッサン」してました。これは面白いし、確かに人に言いたくもなる。今回の特別展では約20種の厳選された「へんないきもの」たちが展示されているが、どれもこれもパンチの効いたクセモノ揃い。だけど、じーっと眺めていると、不思議と愛着が湧いてくる。
へんないきもの
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早川さんに「花魁型ターミネーター」と名付けられたハナミノカサゴ。花魁のような華やかさとは裏腹に強力な毒を持つ。獲物を襲うときは見境なく、その生態系を破壊するほど。
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ふわふわのロン毛が特徴のアンゴラウサギ。体毛は10cm以上に伸び、顔まで容赦なく覆い尽くす。
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エレファントノーズフィッシュ。象の鼻のようみ見える部分は鼻でもストローでもなく、下アゴ。尾びれの付け根に発電器官を持ち、電流をレーダーのように使って獲物を探し出す。早川さん曰く「ハイテクなジョブズの新製品」。
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サメの仲間、エポーレットシャーク。魚だけど4つのヒレを使って歩くことができる何とも珍しいサメ。
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「お客さんの反応は意外なものばかり。グロテスクな風貌の生き物を女の子が眺めていたので、『さぞ驚くだろうな』と思っていたら『可愛い!』って言っていたり、変わったナマコを眺めながら一歩も動かない人がいたり。『へんないきものを見て、自分の悩みがちっぽけなものに感じた』と言っていた人もいましたね」。
さらに早川さんは言う。
「我々は仕事や家庭、プライベートでも、多少なりともストレスを感じながら生きています。だけど、こんな楽しい生き物たちがたくさんいる“奇跡”みたいな星に住んでいる。そのことをここで思い出してほしいですね。僕の“へんなキャプション”が生き物に関心を持つ入り口になってくれればいいなと思います」。
ということで、あの破天荒なキャプションにはそんな深い意味が込められていたのだ。週末やゴールデンウィークに、子供と一緒に「へんないきもの」を眺めながら地球が生んだ神秘を感じてみるのもよさそう。
「会場にはときどき顔を出しているので、見かけたらぜひ声をかけてください。ご説明しますよ」と最後まで早川さんは優しかった。“へんなおじさん”かもと疑ってごめんなさい。
 
[イベント詳細]
へんないきもの展3

期間:2019年7月5日(金)まで
開館:9:00〜21:00 ※4月27日(土)〜5月6日(月)は8:30〜 最終入場は終了30分前。
会場:サンシャイン水族館 特別展会場
東京都豊島区東池袋3-1 サンシャインシティワールドインポートマートビル・屋上
電話番号:03-3989-3466



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