連載「撮りたい、愛でたい、アナログカメラ」
メカの香りが漂うフィルムカメラは、男を夢中にさせるアイテムだ。ただ、一眼レフでは大げさすぎるし、よく見る使い捨てカメラよりこだわりたい。ならば、プロダクトとアナログ写真の良さを堪能できる、“サマになる”カジュアルカメラを選びたい。
前回は、’00年代と’10年代のアナログカメラブームの違いやカメラ選びについて、Lomography(ロモグラフィー)の日本唯一の直営店「Lomography+(ロモグラフィープラス)」で教えてもらった。
ビギナーには、インスタントカメラや名機・LOMO LC-A+がおすすめとのことだったが、スタンダードよりはすこし変わったものを、という背伸びを楽しみたいオッサンも多いはず。
「それなら、仕上がりの変化を楽しめる機種を選んだり、アナログカメラならではのテクニックを試してみてはいかがでしょうか」とアドバイスをくれたのは、ロモジャパン・広報の佐々木梨帆さん。今回は、アナログの“ならでは感”があふれるギアと遊び方をお伝えしよう。
背伸びを楽しめる、変化をつけるギア選び
スタンダードな撮影に使えるうえ、ひと味違う仕上がりも味わえるのがこちらの機種。背面のスイッチを切り替え、通常の1コマ分の面積に2枚の像を焼き付けることができる。“ハーフフレーム”と呼ばれる手法で、対比やストーリーを表現しやすいフォーマットだ。
中判のフィルムを使うだけでも印象は変わる。LOMO LC-A 120では、1つのフィルムで12枚しか撮れないが、一般的な35mmフィルムの約4倍の解像度の120フィルムで撮影可能。じつに鮮やかな仕上がりになる。シャッターチャンスを厳選する緊張感も楽しさのひとつに。
アナログカメラ2-3
Fisheye No. 2 Caspian 9154円
写真の特殊効果といえば、コレ。いわゆる魚眼レンズを搭載するカメラも押さえておきたい。一般的な35mmフィルムで170°の視点を丸く切り撮る。日常をアーティスティックに撮影できるのがポイントだ。
3つのギアで共通するポイントは、いずれも操作が簡単であること。2機種はオート露出で扱いやすく、Fisheye No. 2も魚眼撮影なので焦点が合いやすく、ボケも味に昇華できるのだ。ちょっと特別なカメラだからといって、足踏みする必要がないのがうれしい。
背伸びを楽しめる、アナログなテクニック
フィルムというデバイスを用いるからこそ楽しめる「多重露光」もちょっとした背伸びのために知っておきたい。
「同じフィルムのコマに、2回以上シャッターを押し、像を写すテクニックです。例えば、ビル群と花・人や、同じ像を上下・左右反転させたものを重ね、簡単に合成写真のような仕上がりになります」。
パソコンのソフトで合成したように見えるこの写真も、同じフィルムのコマで2回シャッターを切っただけなのだ。
方法は2つある。1つめは、1つのフィルムを撮りきった後、フィルムを最初まで巻き直して改めて写真を撮って重ねる方法。2つめはLOMO LC-A+などに搭載された「MXレバー」を使う方法だ。後者の場合、フィルムを巻き戻す必要はなく、1コマ撮った後、MXレバーをグッと引けば簡単に何度も像を重ねることができる。
近距離の物と風景などを組み合わせると、立体的な仕上がりになる。組み合わせを計算して作ってもいいし、例えば最初は父親がフィルムを撮りきって、それを子供に渡して写真を合成する、という親子の遊びにもしてもよさそうだ。
もっと背伸びするなら、こんなモノも……
ちなみに、ここからは背伸び、というよりビギナーにとってはジャンプの領域に入るが「アートレンズで遊ぶ」という方法もある。
こちらはキャノンとニコンの一眼レフカメラに対応した、ロシア製プレミアムガラスのレンズ。デジタルカメラにも装着可能で、その効果はグルグルとした背景ボケを楽しめること。例えば、こんな感じである。
脇からプレートを挿入することで、このグルグル具合を調整できる。
ここまでいくとビギナーの域はとうに超えているので、参考までだが、ちょっと背伸びをするだけで違う楽しみが見えてくる。
ただ撮るのだけじゃつまらない、そんな人ならギミック込みで楽しめるはず。カジュアルにカメラを抱えながら、ちょっとした小ネタとして使ってみてもいいだろう。
【取材協力】ロモグラフィープラス 住所:東京都千代田区外神田6丁目11-14 アーツ千代田 3331 1F-102 電話番号:03-5817-8597 営業時間:12:00〜19:00 定休日:月・火(及び施設休館日)www.lomography.jp/小島マサヒロ=撮影、芋川 健=取材・文