履けば履くほど「次」が欲しくなる、この奥深き世界よ。やっぱりスニーカーはやめられない Vol.10
2019.03.07
LIFE STYLE

アリ・マルコポロスの眼を通して感じる、ストリートの権化

知らなきゃ男が廃るが、知ってりゃ上がる。気にするべきは、顔のシワより脳のシワ。知的好奇心をあらゆる方向から刺激する、カルチャークロスインタビュー。

最初は誰かを真似しても、好奇心は大切にしたほうがいい

写真家 アリ・マルコポロス
1957年、オランダ・アムステルダム生まれ。写真家。’80年にニューヨークへ移住。アンディ・ウォーホル、アーヴィング・ペンに師事。以降、ビースティ・ボーイズをドキュメントした『パス・ザ・マイク・ビースティ・ボーイズ1991-1996』などの写真集や、シュプリームをはじめとするアパレルブランドのビジュアルを数多く手掛ける。

雨が降る真冬の東京・表参道。オープニングレセプションの会場に着くと、若いスケーター2人が「やばい、俺、話しちゃったよ」と言い合いながら興奮した様子で外に出てきた。場所はファーガス・マカフリー東京。ニューヨークのチェルシーに本拠を構え、現代美術を紹介してきたギャラリーの日本ブランチであり、そのコンセプトからストリートとは縁遠い空間だと思っていた。が、やはり写真家アリ・マルコポロスはストリートの住人だった。

中へ入ると彼の立ち位置はより鮮明になった。今回のエキシビションは3つの映像と3枚の写真が展示されたもので、ハイライトは58分に及ぶ映像作品「ザ・パーク」である。

「近所にある公園の日常をいつかドキュメントしたいと思っていて、ある日の午後に三脚を持って行ったんだ。映し出されているのは平凡な光景だよ。でも刻々と変わる情景が、日常とは予測不能でドラマチックなものなんだと教えてくれるんだ」。

内容は、ブルックリンにある公共のバスケットボール用コートをほぼ定点で撮影したもの。若者たちはプレーを楽しみ、コートの外をアフリカや東欧などあらゆるルーツを持つ人たち、老人、幼児を連れた家族が通り過ぎる。その光景を公園のベンチから眺めているような気分にさせる映像は、路上に生きる人の感性が息づくリアリティに富むものである。

一方、先頃ハーレムの伝説的テーラー、ダッパー・ダンをフィーチャーしたグッチの写真集『ダッパー・ダンズ・ハーレム』が発売されたが、その撮影を手掛けたのも彼。ハイファッションの世界においても路上で磨いた創作の手法は有効なのである。

「仕事に対して大切にしているのは、まず興味のある内容かどうか。そして、何ができるか。創作に制限があるなら引き受けたくはないかな。以前、バートンがバックカントリーでの撮影者を探していたとき、未経験ながらスキーなら簡単だろうと引き受けたことがある。雪山は未知の世界だったからね。現場ではジム・リッピーという当時のトッププロがスキーの手ほどきをしてくれたよ。行ってしまえばなんとかなる。好奇心は大切にしたほうがいい」。

故郷アムステルダムから23歳でニューヨークへ移住し、アンディ・ウォーホルやアーヴィング・ペンに師事した。彼らの仕事を見聞きした経験を幸せに感じながら、自身はストリートに身を置き続ける。

「最初は彼らを真似た。でも写真は、好きなように撮り、表現すべきだ」。

街を歩きながら、気になる対象に遭遇したらポケットに忍ばせたカメラで撮る。偶然性を大切にする手法は60歳を超えた今も変わらない。

『アリ・マルコポロス展 Ari Marcopoulos. 3 Films. 3 Photographs.』


会期:3月9日(土)まで
会場:ファーガス・マカフリー東京 無料
開館:11:00〜19:00 日・月曜、祝日休館
http://fergusmccaffrey.com

ファインアートとストリートフォトグラフを横断する作品で人気のアリ・マルコポロス。本展では新作の映像と写真を3作品ずつ展示。映像「ザ・パーク」はジェイソン・モランによる即興演奏の音源をBGMに使用している点にも注目したい。

森滝 進(MAKIURA OFFICE)=写真 小山内 隆=取材・文

# アリ・マルコポロス# インタビュー# ストリート# 写真家
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