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モデル・大石学さんが3度めのヒマラヤ旅で感動絶景に辿り着くまで

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モデル・大石学さんは無類の旅好きだ。2013年、37歳のときには世界一周旅行を敢行している。それでも「まだ見ぬ世界」を求めて最近はトレッキングにどハマり。2019年は正月早々ネパールへヒマラヤ歩きの旅に出た。

大石 学(おおいしがく)●1975年、大阪市生まれ。甲子園を目指し主将を務めた岡山・作陽高校卒業後、20歳からモデルとして仕事を始める。旅と山を愛する山男。

二週間のヒマラヤ旅で歩いてきた格好いい山々

出発は2019年1月4日。17時の便で日本を発ち、中国・成都でトランジット。ネパールへのルートはいくつかあるが、今回は10時間のトランジットを含むルートを選んだ。航空代は、高くても10万円ほどだ。

ネパールの玄関口であるトリブバン国際空港へ到着したのは1月5日の現地時間13時40分(日本との時差は3時間15分)。そのまま、ヒマラヤトレッキングで必要な許可証「TIMS」と入山許可証の申請をするためカトマンズへ向かう。

許可書「TIMS」2000ルピーと、 ランタン国立公園入場料3000ルピーほど(1ルピー=約1円)を現地で申請。
未舗装で土埃が舞う道路。「マスクは必須。現地の人でさえ着けてるぐらいですから(笑)」。
道端に突如現れる大きな葉に乗せた食べ物は、神様へのお供え物だ。

ネパール最大の都市の埃っぽい空気を吸い、これからの旅の始まりを実感する。出会った人と情報交換をしたりして、翌朝に備える。

ヒマラヤ歩きの旅 DAY1 「カトマンズ→シャブルベシ」

各種許可証を入手したら、翌朝、いよいよ出発。6時半に、第1の目的地であるシャブルベシまでバスで向かう。

ヒマラヤのトレッキングは、エベレストルート、アンナプルルート、ランタンルートが3大ルートとされており、最も有名なのはエベレストルートで、観光客にも人気だ。初めて大石さんがヒマラヤをトレッキングしたのもこのルート。2回目はアンナプルルートで、今回は、3つの中で最もマイナーなランタンルートを選択。ランタン・コーラ(川)沿いに歩くコースとなる。

大石さんが実際に持って行った地図。シャブルベシをトレッキングのスタートに、ランタン・コーラ沿いを歩いた。

「エベレストルートと比べると、かなり地味。でも、そこからしか見られない景色があるんですよ」。それを心底堪能するため、大石さんはガイドをつけず、たったひとりで歩く。そのスタイルはアンナプルルートを歩いた前回と同様だ。

バスの所要時間はカトマンズから約8時間。座席は狭く、荷物を膝上に抱えながら、ガードレールはもちろん、舗装もされていない悪路をひたすら走り続ける。

カトマンズからシャブルベシへ向かうバス。ガタガタの道に席も狭かったが、ギュウギュウの荷物で体が席に固定され「8時間、案外寝れましたよ(笑)」と大石さん。
途中、何もない道端でのトイレ休憩を挟みながら、15時頃に到着。

シャブルベシは、ランタンルートにおけるいわば出発地点。チベット国境付近にある町で、チベット民族が住む村だ。気温は昼で10度以上、最低気温もマイナスにはならない1400m程度の標高とあって観光客も多く、宿などの施設も充実している。


ヒマラヤ歩きの旅 DAY2 「シャブルベシ→ラマホテル」

朝食を済ませたら、7時半に出発。いよいよトレッキングのはじまりだ。この日の目的地はラマホテル。標高は2340mと一気に高くなる。そもそもマイナーなルートとあって、トレッカーの数もほかの2ルートほど多くはない。

道中には小さな村が点在。
まだ緑も多く、現地の人の姿も見かける。

ランタンルートは現地住民の生活ルートでもあり、チベット民族のリアルな生活に触れながら歩くことができる。それも、このルートならではの風景だ。8時間ほどのトレッキングで目的地・ラマホテルに到着。時計は15時を指していた。

この日の宿は、その名も「フレンドリーゲストハウス」。

「1泊150円ぐらいで食事代は別。英語が通じるのでコミュニケーションには困らないですね」。この辺りはまだ電線があり、なんとWi-Fiも飛んでいる。現地の人の中にはスマホを使っている人もいた。

ラマホテルですれ違ったトレッカーたち。国籍も性別も多様だ。

1月は本来ならオフシーズンだが、その日はたまたま満室。イタリア、フランス、ブラジル、カナダと、国際色豊かなトレッカーたちと、かまどで調理されたゴハンを食べる。

標高が2000mを超えると夜は冷え込み、洗濯物を干すとすぐに凍るほど。そんななか、薄いベニア板で囲まれた簡素な部屋で、シェラフに身を包み就寝した。


ヒマラヤ歩きの旅 DAY3 「ラマホテル→ランタンビレッジ」

8時に宿をあとにして、次の目的地、ランタンビレッジを目指す。相変わらず現地民が通る生活ルートを歩いていくと、次第にヒマラヤの姿が見えてくる。ここでもまだスマホの電波は届くが、徐々に不安定になりはじめる。

道中、荷物を運ぶ村人と遭遇。頭に布製のベルトを引っ掛けて運んでいる。
景色にも徐々に変化が。

川沿いをひたすら歩き、ランタンビレッジのラサロッジという宿に着いたのは16時。宿泊代は交渉制で、予算があまりないことを告げると無料で宿泊させてくれると言う。ただし、食事は別途。その食事代も、シャブルベシと比べて10%ほど割高になっている。

この日の宿のゲストは大石さんだけ。「宿というより友達の家に来た感じでした。ダイニングでは暖炉を囲み、5〜6人の現地女性が談笑してました。そのうちのひとりが、僕のカメラのフィルムケースに興味を持ったのでひとつあげたんです。タバコ入れにちょうどいいって喜んでましたね」。

標高は3400mほど。富士山山頂(3776m)に近い。「ここまでのルートは緩やかなので、一般的な大人の男性なら、辿り着けると思いますよ」と大石さん。


ヒマラヤ歩きの旅 DAY4 「ランタンビレッジ→キャンジンゴンパ」

7時半に出発し、キャンジンゴンパへ。同地は、ランタンルートの実質的なゴール地点とされ、ほとんどのトレッカーはそこで引き返す。しかし、今回の旅で大石さんが目指すのは、そのさらに先だ。

「誰も行かないって言われると見に行きたくなる(笑)。SNSで検索してもほとんど情報がなくて、写真すらも見れないんです」。

キャンジンゴンパ以降のトレッキングに備え、大石さんはガイドを頼んだ。「この先は本当に人がいないので、何かトラブルがあったらかなり危険なことになると忠告されて」。引き受けてくれたのは、前日泊まったラサロッジのオーナー、サンゲさん。滞在中にいろいろ話して気心も知れたのも安心材料のひとつで、ガイド代は30ドルだった。

キャンジンゴンパに到着したのは11時前。標高は3870メートルと、宿のあるエリア自体が富士山の標高を超える。それでも周りはさらに高いヒマラヤの山々に囲まれている。

たまたま遭遇したガイドのトレーニング隊。夜は外にテントを張って寝ていた。

この日は、標高4550mの山・キャンジンリへ1時間半ほどの登山を満喫し宿泊。夜はマイナス15度まで下がった。


ヒマラヤ歩きの旅 DAY5 「キャンジンゴンパ→ランシサカルカ」

キャンジンゴンパを拠点に目指すはランシサリという山の麓にある、ランシサカルカ。宿からの距離は12kmほどで、往復10時間程度を要するルートだ。

「ただ歩いているだけで感動しました」。

「威厳ある山の姿がどれも格好いいんですよね」。ランシサカルカは前回ネパールを訪れたあとに知ったが、一般的な観光ではまず行かない場所とあって情報はほとんどなし。「ガイドをしてくれたサンゲさんに山の名前などを教えてもらいながら歩いたんで、本当に楽しかった。これまで経験したことのない感動がありました」。

その場にいたのは大石さんとサンゲさんのみ。無音の中、風に吹かれたチベットの5色の祈祷旗「タルチョー」のたなびく音だけが聞こえる世界が広がっていた。


ヒマラヤ歩きの旅 DAY6 「キャンジンゴンパ→ツエリコリ」

翌日はツエルコリへ。地元では丘と呼ばれるが標高は4984m。今回の旅で最も高い場所だ。往復8時間ほどの道を歩きはじめると目の前に頂上が見えてくる。「すぐに到着しそうに見えるだろう。でもなかなか着かないんだよ」と笑うサンゲさんの言葉通り、道程は過酷なものだった。

ヒマラヤを背に休憩中のサンゲさん。

今回のルートで最も高低差があるだけに足を進めるほどに息が切れる。風も強く、時折雪が舞い上げられ、吹雪く。酸素も薄い。

どこを切り取っても格好いい風景。
山頂で神聖にたなびくタルチョー。その数だけ人の思いがある。

「頂上には無数のタルチョーがあって、神がかった雰囲気でした。目線と同じ高さにあるヒマラヤの稜線。約1000m上がるのがこんなに大変だとは思いませんでしたが、登りきった実感は代え難いものがありましたね」。


ヒマラヤ歩きの旅 DAY7〜8 「ツエリコリ→カトマンズ」

ツエルコリの頂上に立ったその日はキャンジンゴンパで1泊、翌日は一気にラマホテルの先のリムチェまで歩く。そこで1泊し、昼にはシャブルベシに到着。そこからバスでカトマンズへ戻り、日本への帰路に着いた。

以上が今回の大石さんの旅の行程だ。


今回の13泊14日の旅で何度も頭をよぎったのは「山って格好いいなぁ」という単純な想いだったいう大石さん。「僕なんかがアルピニストを語るつもりはないですけど、ほんと単純に格好良かったんです」と笑う。

その格好いい山を実際に歩いて、できるだけ近くで見ることで得られる感動。これは、リゾートやパッケージツアーでは得られないもの。

ちなみに、大石さんが経験したヒマラヤ歩きの旅は、実は誰にでも開かれている。許可証などを日本で事前申請し、ツアー会社のガイドをつければ日数も短縮できるとあって、今年5月の10連休で同ルートを辿ることも可能だ。

何も準備ができていない? 大丈夫、歩き出せば必要なものは自然と見えてくるはず。


次回は、大石さんがネパールで出合った「うまい飯」をお届けする。

大石 学=写真  安岡将文=文

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