連載「キャンプは、冬がいい。」
アウトドア・ラバー諸君、キャンプは夏のレジャーだと思っていないか? 玄人たちは、口を揃えてこう言うものだ。「キャンプは、冬がいい」。極寒の世界で特別なレジャーに挑んでみよう。
雪山で野生動物のフィールドサイン探し(
連載4回参照)を楽しんだら、腹の虫が鳴ってきた。日が暮れる前に炭火の準備をはじめ、あったかグルメを堪能しよう。ふたたび北軽井沢スウィートグラスのマネージャーの玉井宏和さん指導のもと、体が芯から温まる夕食作りにチャレンジした。
キャンプの王道・ダッチオーブン。1時間で完成する「丸鶏のグリル」
「夏と冬で、火を起こす方法に大きな違いはありません。ただ注意したいのは、冬は乾燥シーズンであること。今年も別のキャンプ場で、テントが全焼する火災がありました。テントに近すぎる場所での炭火や焚き火は絶対に避けましょう」(玉井さん)。
晩メシに使うのは炭火だから、手順は簡単。ある程度組んだ炭の間に、ライターで点火した着火剤を炭の間に押し込む。このキャンプ場で入手できる着火剤は持ちがよいため、扇がずに放置すれば、ほどなく火を起こすことができる。少し物足りないほどの楽チンさだが、寒い環境ではかなりありがたい。
さあ、本題に取りかかろう。今日のメニューは、キャンプ場の名物「まるまる丸鶏」と、体がポカポカと温まる「とろ〜りコンソメ生姜スープ」である。「まるまる丸鶏」はインパクト大。見よ、この堂々たる姿を!
丸鶏の中にはウズラの卵やミニトマトなどの具材が詰め込まれ、味付けもされている。ダッチオーブンに放り込んで、炭火にくべるだけでOKだ。「ちょっとしたコツは、焦げつき防止のためにキャベツを下に敷き、周囲に野菜を配置すること。玉ねぎは外側の皮を鍋肌に触れるように配置すると美味しく出来上がります」。
スノーキャンプ5-1
バランスよく野菜を配置。仕上げに臭み取りのセロリを上に乗せる。
ダッチオーブンを炭火にかけて10分経ったら、鶏の中心に切れ目を入れると火が良く通る。
蒸気が出てきたら、炭火を乗せて30分焼く。炭火から遠ざけて10分ほど蒸らしたら完成。
食材でできる体を冷やさない工夫。とろ〜り生姜スープで温まる
次にとりかかったのは、生姜スープ。極寒のフィールドでは、体を冷やすのはNG。野菜の中には体を冷やしてしまうものがある(夏は逆に都合がいいのだが)。たとえば、ナス、キュウリ、トマトなどがその典型。つまりは、夏が旬の野菜を選ばないように注意したい。一方、体を温めてくれる野菜は、生姜、玉ねぎ、かぼちゃといったラインナップだ。
生姜、玉ねぎ、ベーコン、人参をカットしたら、鍋で炒めて水を投入。煮立ってきたら、コンソメの素を放り込んで煮込んでいく……が、ここで完成ではないのがミソ。最後に水溶き片栗粉を入れて、とろみをプラス。
スノーキャンプ5-2
ガソリン燃料のツーバーナーの火力でも、寒さで熱が通りにくい。じっくりと炒めていく。
とろみをつける作業。片栗粉をもっていくのは面倒だろうが、スープの味を濃厚にもしてくれるので、キャンプにはぜひ持参したい。
というのも、零下の環境だと水分が急激に熱を失っていくから。現場でも実感したが、日が暮れた頃から、気づくとペットボトルの水がシャーベット状になっていたり、人参や玉ねぎが凍りついていたりする。食材や飲料は、温度を保つクーラーボックスに入れるのはマストだ。
じっくり焼いた丸鶏とあったかスープ、いただきます。
さて、そろそろ丸鶏の蒸らしもよい頃合い。フタを開けて覗いてみると……。
火起こしから2時間ほど。飯盒で炊いたご飯とともに丸鶏をワンプレートによそったら、完成だ!
丸鶏を頬張ると、肉の旨味とスパイスの香ばしさが口全体に広がり、スープは体を温めてくれる。とろみが付いているおかげで冷めにくい。極寒のなかでのあったかグルメは、まさに至福。これは病みつきになりそうだ。
次回は冬キャンプの夜アソビを実践。雪に音が吸収され、静寂が広がるフィールドには、大人がゆっくり楽しめるアソビがたんまりある。今回はこのあたりで〆ることとしよう。
>1回「
スノーキャンプの魅力と注意点」を読む
>2回「
防寒着とギア選び」を読む
>3回「
スノーキャンプのテント設営」を読む
>4回「
雪山のアニマルハント」を読む
【取材協力】
北軽井沢スウィートグラス
住所:群馬県吾妻郡長野原町北軽井沢1990-579
電話番号:0279-84-2512(予約センター)※水曜定休
※営業時間・定休は季節により変更
https://sweetgrass.jp澤田聖司=撮影 芋川 健=取材・文