SEAWARD TRIP Vol.49
2018.11.12
LIFE STYLE

大都会と大自然の狭間に生きて 〜Hanalei Bay〜

ただくつろぐだけでも気持ち良い時間を過ごせ、サーフィンをした瞬間に人生は大きく変わってしまう。ひとつのシーンからそんな海の魅力を発見していくコラム。

今回は「Hanalei Bay」

サーフィン中にサメに襲われることは間々あることだ。豪州や南アフリカには、サメが海岸近くに入ってこないよう、沖合にシャークネットを張るビーチがある。ハワイも沖合をサメが回遊し、オアフ島でさえ毎年のように目撃情報がある。

カウアイ島では同島出身の女性プロサーファー、べサニー・ハミルトンが片腕を失った。そして村上春樹原作の『ハナレイ・ベイ』は、主人公の息子がカウアイ島で片脚を失い、命を落としたところから物語が始まる。

もし愛する人が、海外旅行中にサメに襲われ失命したと聞いたら、そこにリアリティは伴うだろうか。マリンスポーツ経験が豊富な人なら受け入れられるかもしれない。しかし自然の息吹を感じにくい日本の都会に生きる市井の人は、はたしてどうか。

村上春樹は、誰もが自然の循環の中に生きている、と書く。そのことに気付けると、人はどう変わるのか。映画でのラストシーン、主人公を演じる吉田羊の表情に、その答えは込められる。

公開中の映画『ハナレイ・ベイ』の原作は村上春樹による同名小説。同作は短編集『東京奇譚集』に所収されている。息子がサーフィン中にサメに襲われ亡くなったと聞き、同島へ向かった主人公のサチは東京・六本木でピアノバーを経営するシングルマザー。

世界屈指の眠らない街で多くの時間を過ごす彼女が、大自然がすべてを凌駕するカウアイ島と出会い、手にしたものは? 絶望の淵から新しい人生を獲得していく再生の物語。


2018『ハナレイ・ベイ』製作委員会=写真 小山内 隆=編集・文

# seaward# ハナレイ・ベイ# 村上春樹
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