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2018.11.01

ライフ

遠藤憲一の底知れぬ魅力の正体。彼が求める「究極のゴール」とは?

知らなきゃ男が廃るが、知ってりゃ上がる。気にするべきは、顔のシワより脳のシワ。知的好奇心をあらゆる方向から刺激する、カルチャークロスインタビュー。

「内容も数字も伴って、初めて作品は完成する」

1961年、東京都生まれ。’83年のデビュー以来、数多くの映画、ドラマ、バラエティに出演。2017年はタレントCM起用社数ランキングで1位を獲得。幅広い世代の支持を集める。現在ドラマ『ドロ刑ー警視庁捜査三課』(NTV系)に出演中。
フォトセッション中にカメラへ向けた鋭い眼光に触れ、アウトローを演じるのに役作りは必要ないのだな、と思えた。そのため最新主演映画『アウト&アウト』で元ヤクザの探偵を演じた遠藤憲一に、以前も強面の役柄が多かったので慣れたものでしょう? と問うと、彼は苦笑いしながら「いやぁ、むしろ苦手なんだよね。訓練してるから演じられるけど、自分とは真逆のタイプだから」と答えた。
撮影現場では冷徹で執念深い男を演じながら、7歳の相棒、栞役を演じた女の子とずっと遊んでいたという。「お手紙や飴玉をもらったりして、ずっとベタベタでしたね。俺、よく小学生みたいって言われるくらい幼稚だから、子供と気が合うんだよね」と破顔した。
役柄から受ける印象とは異なる柔らかな存在感を放つ遠藤は、今や好感度抜群の人気俳優だ。近年では映画、テレビドラマ、CM、イベントにと八面六臂の活躍を見せる。
「本音は年がら年中休みたいと思ってるよ(笑)。でもキツイことと何かを生み出すことはつながってるから。やり続けないと出てこないことってあるし、何でもやってみるしかない。たとえそのときに成果が出なくても、経験した苦労はどこかで役立つものだと思ってるんだよね」。
究極のゴールは、内容は文句なしに面白く、かつたくさんの人に楽しんでもらえる作品に関わること。
「例えば黒澤明の『七人の侍』みたいな圧倒的なやつ。でも、名作になるかどうかなんて作ってみなきゃわからない。与えられたことを何でも一生懸命やるしかないんですよ」。そのためにはあえて“結果”にもこだわりたいのだと言う。
「いい作品ができたという自己満足だけでなく、今は数字を残すことも重要だと思うんです。映画ならお客さんがたくさん入って、テレビであれば視聴率を取る。内容もビジネスもしっかり評価される。そこまで揃って“完成”だと思ってますから」。
仕事に厳しく向き合う姿には人気俳優ならではの矜持が感じられる。最近は日課だったお酒もやめたそうだが、「今年は凄まじい量の仕事をさせてもらってるけど、酒を飲んでいたらできなかった。いいときにやめたと思うよ」と事もなげだ。
ストイックであることを微塵も感じせないスマートさを漂わす遠藤に格好良い大人の条件を聞いてみる。すると途端に上体を仰け反らし「えっ、ないよ〜!(笑)。だって俺、格好良くないし」と必死で否定した。
世間に知られる強面な顔と、その裏に隠されたお茶目な素顔。ギャップはあまりに大きく、あまりに大きいからこそ、人間としての魅力は底知れないのである。
『アウト&アウト』
©2017「アウト&アウト」製作委員会
監督:きうちかずひろ/出演:遠藤憲一、岩井拳士朗、白鳥玉季、小宮有紗、中西 学、成瀬正孝、阿部進之介、竹中直人、高畑淳子、要 潤ほか/配給:ショウゲート/11月16日(金)よりTOHOシネマズ 新宿ほかにて全国ロードショー
http://out-and-out.jp
7歳の少女、栞(白鳥玉季)とともに探偵事務所を営む元ヤクザ、矢能(遠藤憲一)。彼のもとに舞い込んだ依頼は、複雑な人間模様と社会の闇を浮き彫りにする事件だった……。遠藤がアウトローながら強く優しい男をクールに熱演。原作・監督は漫画『ビー・バップ・ハイスクール』を描いた、きうちかずひろ。
PAK OK SUN(CUBE)=写真 中本コーソー(Leinwand)=スタイリング 村上まどか=ヘアメイク 美馬亜貴子=取材・文 イッセイ ミヤケ メン=衣装協力


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