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2018.10.09

ライフ

サーファーの自叙伝、米国ジャーナリズムの頂点へ 〜The Surfer’s Life〜

ただくつろぐだけでも気持ち良い時間を過ごせ、サーフィンをした瞬間に人生は大きく変わってしまう。ひとつのシーンからそんな海の魅力を発見していくコラム。

今回は「The Surfer’s Life」


執筆者の立ち位置が海側だけに寄らないところが面白い。サーファーである自分がいれば、ジャーナリストとして社会に生きる自分もいる。海と陸の両方を行き交うスタンスが絶妙で、間口の広いエンタテインメントに仕上がっている。ウィリアム・フィネガンによる『バーバリアンデイズ』のことだ。
2016年のピューリッツァー賞「伝記・自叙伝部門」を獲得した同書は、半世紀をかけサーファーとして生きた筆者の自叙伝。物語はカリフォルニアで生まれた筆者が幼少期に移り住んだハワイから始まり、サーファーとして成長した後年、良い波の追求と見聞を広めるための旅に出る。
南アフリカでは人生を決める出来事に遭遇。アパルトヘイトを目の当たりにし、ジャーナリストを志すようになった。今もスタッフライターに就く「THE NEW YORKER」誌では人種差別や政治などのテーマを扱ってきた。筆力は抜群で、ゆえに彼の描くサーファーの哲学と心理は、サーフィンをしない人にも届いたのである。
ピューリッツァー賞は、ニューヨークにあるコロンビア大学が運営を行う、米国のジャーナリズムにおける最も権威のある賞。2016年に同賞を受賞したウィリアム・フィネガンは、ロサンゼルスとハワイで少年時代を過ごし、サーファーとして成長していった人物。彼の半世紀に及ぶサーフィンライフをまとめたのが本書となる。サーファーの価値観に触れられるだけではなく、波を友とし、若者から大人の男にいたる成長物語としても読める。
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小山内 隆=編集・文


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