【保存版】オーシャンズが徹底調査。僕らが海を目指す理由 Vol.14
2018.06.05
LIFE STYLE

表現者・井浦新の人生論「いつでも全力疾走、オフるのは最期でいい 」

知らなきゃ男が廃るが、知ってりゃ上がる。気にするべきは、顔のシワより脳のシワ。知的好奇心をあらゆる方向から刺激する、カルチャークロスインタビュー。

【井浦 新】

1974年、東京都生まれ。’98年に映画『ワンダフルライフ』で映画初主演を果たす。以降、俳優として活躍する一方で、ファッションデザイナーとしても活動。2007年には自身のブランド、エルネスト クリエイティブ アクティビティを立ち上げた。2児の父としての顔も持つ。シャツ1万8000円/フィル ザ ビル フォースティーブン アラン(スティーブン アラン トーキョー 03-5428-4747)

俳優とファッションデザイナー、2つの顔を持つ井浦新。映画のなかでは、井浦新という存在を消して、2つどころか作品ごとに異なる顔を見せてきた。最新主演映画『返還交渉人 いつか、沖縄を取り戻す』で見せる新たな顔は“昭和の豪傑”。第二次世界大戦後、米国の統治下にあった沖縄の返還のために闘った実在の外交官、千葉一夫だ。

「戦後の厳しい時代に、千葉さんは沖縄を“返してもらうのではなく取り戻す”ため、戦勝国のアメリカや、外交に強気で臨む千葉さんを目障りに思う日本政府の人たちとも闘った。そんな信念の人がいたことを、脚本を読んで初めて知って驚きました。まさに昭和の豪傑ですね。以前からそういう豪傑に興味を持っていて、千葉さんを演じるには普通の芝居ではダメだと思いました」。

そこで井浦は千葉に関する資料を集め、彼を知る人物に話を聞き、流暢に話したという英語を毎日特訓。そして単身、沖縄へと向かった。

「千葉さんが沖縄で感じたことを自分でも感じたかったんです。残念ながら、今も沖縄の基地問題は解決していません。基地のフェンス越しに戦闘機の爆音を聞くと殺されるかと思うくらい恐ろしい。爆音を聞きながら、千葉さんが感じた恐怖や怒りを自分の腹の奥に溜め込んで、それ作品にぶつけようと思いました」。

実在の人物を演じるにあたって大切なのは「その人物の心に向き合うこと」と語る井浦。今回も千葉の心に向き合い、その人生を追体験したことは貴重な経験だったという。

「僕が千葉さんや昭和の豪傑たちから学んだことは、自分の仕事を真っすぐな気持ちで全力でやるということです。そうした姿勢を続けることで次の課題が見えてくるんです」。

20年以上も井浦は俳優とファッョンデザイナーの仕事を両立させてきたが、どちらも全力疾走だった。

「それぞれを同じ時期にスタートしていて、両方やって当然という感覚で続けてきました。両方あるからこそ面白い。家族と過ごす時間も全部ひとつながりで、オンとオフの違いはなくて常にオン。そのほうが自分に合っているんです」。

常にオンであること。井浦にとって、それは表現者であり続けるために当然の生き方なのだ。

「自分に飽きたら表現者として終わり。前と同じ芝居をしたら引退だと思ってます。そうならないために常に新しい自分に出会いたいし、その手段として仕事がある。だからオフになってる暇なんてないんですよ。人生の最期を迎えたときに、すべてオフればいい(笑)」

そう言って微笑む姿に、平成の豪傑を垣間見た気がした。

 

『返還交渉人 いつか、沖縄を取り戻す』

監督:柳川 強/出演:井浦 新、戸田菜穂、尾美としのり、中島 歩、みのすけ、佐野史郎、大杉漣、石橋蓮司ほか/配給:太秦/6月30日(土)よりポレポレ東中野、7月7日(土)より桜坂劇場ほかにて全国順次ロードショー

www.henkan-movie.com

日米の間で沖縄返還交渉が始まった1960年代。沖縄の人々のために返還交渉にあたり、怯むことなくアメリカと渡り合った“鬼の外交官”、千葉一夫の活躍を描く。昨年、NHKのドラマとして制作されたものを、新たな撮影を加え再編集して映画化。秘められた歴史に焦点を当てた社会派人間ドラマである。

 

PAK OK SUN(CUBE)=写真 上野健太郎(KEN OFFICE)=スタイリング 樅山 敦(BARBER BOYS)=ヘアメイク 村尾泰郎=取材・文

# インタビュー# ニューウェーブ# 井浦新# 映画# 返還交渉人
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