OCEANS

SHARE

2018.04.18

ライフ

実は大人の教養? 読みやすく復活したマンガ『銀河英雄伝説』

「大人のCOMIC TRIP」を最初から読む
1982年に原作小説の第1巻が発売された『銀河英雄伝説』(田中芳樹/徳間書店)。本作の累計発行部数は1500万部を突破し、86年にはコミカライズ版も登場した。その後、アニメシリーズに舞台にと縦横無尽のメディアミックス展開を見せ、今もなお、不朽の名作として語り継がれている国産SFの超大作だ。読んでいない人でも、一度くらいはそのタイトルを耳にしたことがあるだろう。
この4月からはリメイク版として位置付けられた新アニメシリーズ『銀河英雄伝説 Die Neue These 邂逅』も放送されているうえ、2019年には『銀河英雄伝説 Die Neue These 星乱』が全国の映画館にてイベント上映される予定だ。
とはいえ、大作ゆえにどこから手をつけたらいいかわからない。——そんな人の入門書としてオススメなのが、現在『週刊ヤングジャンプ』で連載中の同名タイトルのコミックス版『銀河英雄伝説』(田中芳樹 原作、藤崎竜 マンガ/集英社)だ。
『銀河英雄伝説』(田中芳樹 原作、藤崎竜 マンガ/集英社)
物語の舞台となるのは、人類が宇宙への進出を果たした未来の世界。広大な銀河は、専制君主制の「銀河帝国」と民主共和制の「自由惑星同盟」とにわかれ、理念の違いによる戦争を150年以上も繰り広げていた。本作は血湧き肉躍る戦記モノであり、戦争と政治における人間の醜さや愚かさが、克明に描かれている。
藤崎氏が手掛けるコミックス版は、この複雑で壮大な物語をわかりやすく噛み砕いているのが特徴だ。主要人物であるふたりの天才戦略家、ジークフリード・キルヒアイスとラインハルト・フォン・ローエングラムとの幼少期の出会いから描かれており、原作と違って物語が年代順に展開されていくため、まさに初心者にうってつけ。キャラクターの内面も丁寧に掘り下げられているため、SFに苦手意識を持っている人でもとっつきやすいだろう。
また、藤崎氏の代表作である『封神演義』(集英社)にも見られることだが、キャラクターの言動に現代的なアレンジを加えている点も、読みやすさにつながっている。かといって、カジュアルに落とし込み過ぎているわけでもない。その絶妙な塩梅が、読者を作品世界へと没頭させるのだ。
原作第1巻が発売されてから、36年。多くのファンを生み出した名作ともなれば、飲み会や商談中の話題として、高いポテンシャルがある。自分たちより上の世代へのアプローチのフックとして、まずはコミカライズ版でそのストーリーラインを勉強しておこう。これもまた、大人の教養のひとつになるはず。そして何より、作品としての出来映えが秀逸なのだ。
五十嵐 大=文
’83年生まれの編集者・ライター。エンタメ系媒体でインタビューを中心に活動。『このマンガがすごい!2018』では選者も担当。


SHARE

次の記事を読み込んでいます。