https://oceans.tokyo.jp/lifestyle/2018-0317-7/

妻へ贈るオリジナル・コーヒーカップ。その一杯は、より深い味になった

このエントリーをはてなブックマークに追加

愛で、創り、使う。セラミックアーツ入門 Vol.6
ストイックでお堅いイメージのある、陶芸。自作の食器に興味はあっても、地味なイメージは拭えない。なにより食卓に完成品を並べることをイメージするとオシャレ度にやや難あり。……と思っていたけれど、最先端の陶芸、もとい「セラミックアーツ」は驚くほどカッコいい。本連載ではアーティスト・中野拓氏に教えを乞い、進化した陶芸の魅力に迫る。さあ、愛で、創り、使う楽しみを味わい尽くそう。

「セラミックアーツ入門」を最初から読む

苦労して作り上げた、世界にひとつだけの器。そんな贈り物を、妻は喜んでくれるだろうか。

本連載もついに最終回。前回までは、陶芸工房「彩泥窯」オーナー兼セラミックアーティスト・中野拓さんの教えのもと、妻へと贈るコーヒーカップを制作。妻のゆかりの地である神奈川県相模原市にある「烏山用水」をモチーフにし、いつでも故郷を思い出せる一生モノの作品に仕上がった。

今回はホワイトデー当日。妻にサプライズとしてプレゼントを渡し、さらに器を使う楽しみも一緒に堪能する。いささか照れくさいが、日頃の感謝の気持ちを伝えられたらうれしい。


ドキドキのサプライズプレゼント。はたして妻の反応は?

さて、来るホワイトデーの夜。コーヒーカップは袋に入れてスタンバイさせてある。あとは渡すタイミングだ。

すると夕食を終え、アフターコーヒーの用意を始める妻。今だ、とばかりに袋を渡し、ホワイトデーのプレゼントだと伝えた。妻は中身を取り出し、目を丸くする。

意外な贈り物に驚く妻へ、コーヒーカップを自作したこと、彼女の思い出の地をモチーフにしたこと、そして日頃の感謝の気持ちを伝える。表情がパッと華やいだ。

さらに別の器も取り出し、嬉しそうに手触りを確かめる。既製品にはない土の香りも気に入ったようだ。

ソーサーを手に取り、むき出しの土のざらつきにも興味津々。

実家の庭から採取させてもらった土で作ったと種明かしすると、声を上げて驚いていた。これはサプライズ大成功、といったところか。何はともあれ、喜んでいる姿にホッと胸をなで下ろす。「大切にするね」と言ってくれた。


自分で作った器を使う楽しみ。

しかし、やはり器は使ってこそ輝くもの。普段は妻にコーヒーを淹れてもらっているが、今回は筆者がその役を担いたい。妻との出会いは学生時代の喫茶店のアルバイト。その頃の思い出を脳裏によぎらせつつコーヒーを淹れる。

用意したのはグアテマラの豆。妻のお気に入りのひとつだ。

コーヒーを抽出する製法はハンドドリップ。まずはカップにお湯を注ぎ、容器そのものを温めておく。

コーヒーミルに1杯分の豆をセットし、中挽きでガリガリと砕いていく。久しぶりなので手つきはたどたどしいが、「美味しくなれよ」と念じた。

ドリッパーにフィルターをかけ、挽いた豆を入れる。全体をムラなく抽出できるように、トントンと叩いて豆の表面を平らに。

沸騰したお湯をわずかに冷まし、95℃に調整。フィルターに直接お湯をかけないよう気をつけながら、「の」の字を描くイメージで注いでいく。まずは20ccだけにとどめ、20秒ほどじっくりと蒸らす。

さらに80cc、40cc、最後に20ccと細切れにお湯を注いで丁寧に抽出する。美味しいコーヒーを飲んでもらうために、ディテールにはこだわりたい。

最後にコーヒーをスプーンでかき混ぜ、カップの底に沈殿した濃い液体を馴染ませる。この一手間がコーヒーの味を引き締めるコツだ。

できた!

ゆらゆらと立ち上る湯気に乗って、コーヒーの芳香が鼻腔をくすぐる。待ちくたびれた様子の妻にさっそく振舞ってみると……。

「美味しい!」と好反応。心のなかで小さくガッツポーズ。

さらに「このコーヒー、なんだかホッとする」という言葉も。どうやら故郷を思い出すからか、心安らぐコーヒーブレイクがより穏やかな時間になってくれたようだ。

同様に自分のコーヒーも淹れ、妻と一緒に味わってみる。確かに美味しい。コーヒーそのもののコクや風味も良いが、ここに至るまでの陶芸体験の記憶も蘇り、なんとも感慨深い一杯になった。

コーヒーをすすりながら、他愛もない雑談にふける。それは大切な時間だった。こうしてプレゼントを渡してから気づいたが、仕事に追われていると家族とのコミュニケーションを疎かにしがち。この体験をきっかけに、心の距離を埋められたのは大きな収穫だ。


中野さんに教わった現代の陶芸は、単に”モノ”を作るだけの趣味ではなかった。そこには自分自身を見つめたり、大切な人に思いを馳せたりするかけがえのない時間もあるのだ。そんなセラミックアーツの世界を、ぜひ味わってみてほしい。


取材・文=佐藤宇紘

【取材協力】
彩泥窯 表参道工房
住所:東京都渋谷区神宮前4-6-2-1F
電話番号:03-6447-1105
http://saideigama.com/

今回教えを乞うた中野さんの公式HPでは、“世界にひとつだけの作品を贈る”プレゼント企画を実施中。詳しくは以下のURLまで。
http://taku-nakano.com/news/2939/


このエントリーをはてなブックマークに追加
大人を本気にさせるレジャーを求めて。〜ブッシュクラフト〜
2018.08.10
親子のキャンプスタイルは、チェア&テーブルが左右する!
2018.07.22 / オーシャンズとレジャー 37.5歳から始める大人の趣味入門
ランタン、寝袋……。キャンプの夜は、ギア選びでこんなに快適に!
2018.07.15 / オーシャンズとレジャー 37.5歳から始める大人の趣味入門
我が子に、よき相棒を。親子ウクレレを堪能するための“アイテム選び”
2018.06.10 / オーシャンズとレジャー 37.5歳から始める大人の趣味入門
無地Tにデニムで決める。シンプルでかっこいい代表例
2018.08.15
ストライプに黒で合わせたカジュアルコーデ。トートの柄もいい
2018.08.15
ショーツから足元まで、う〜んなんとも涼やか!
2018.08.15
夏の男と一目でわかる。青×カモ柄って合うんだね
2018.08.14
ブランドならではのトートの素材感。これ、大人の選び方
2018.08.14
全身黒? いや足元に「白」。かっこいいとしか言えない!
2018.08.13
カメラをアクセがわりに。アメカジにそれは反則かも?
2018.08.13
上から順に黒白……。このまとめ方、お見事!
2018.08.13
黒系の色ながら表情豊か。バッグが絶妙アクセント
2018.08.13
白の無地Tとミラーサングラスがベストマッチのシンプルスタイル
2018.08.12
オーバーオールを今っぽく。こんなにお洒落でかっこいい!
2018.08.12
ビッグシルエットをメガネで締める。知的に着こなすミリタリー
2018.08.11