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その凸凹さえ、愛らしい。故郷を再現したコーヒーカップが遂に完成!

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愛で、創り、使う。セラミックアーツ入門 Vol.5
ストイックでお堅いイメージのある、陶芸。自作の食器に興味はあっても、地味なイメージは拭えない。なにより食卓に完成品を並べることをイメージするとオシャレ度にやや難あり。……と思っていたけれど、最先端の陶芸、もとい「セラミックアーツ」は驚くほどカッコいい。本連載ではアーティスト・中野拓氏に教えを乞い、進化した陶芸の魅力に迫る。さあ、愛で、創り、使う楽しみを味わい尽くそう。

「セラミックアーツ入門」を最初から読む

「セラミックアーツ」への挑戦もいよいよ大詰め。前回は陶芸の花形「ろくろ作り」を体験し、ホワイトデーに妻へと贈るコーヒーカップを成型した。あとは陶器を色づけし、焼き上げたら完成だ。

しかし、形作りの手法は「ろくろ作り」だけではない。初心者でも大いに楽しめる別の技もあるというのだ。今回は、粘土を手でこねて成型する「手びねり」を学び、形の異なるコーヒーカップをもうひとつ作りたい。


土をこね、道具を操る。簡単なのに創意工夫もできる「手びねり」

「手びねりは、文字どおり粘土を手でこねる手法。初心者でも形を作りやすいため、創意工夫を施すのにもぴったりです」。

まずは粘土を用意し、作品を作るのに必要なコーヒーカップ分のサイズをテーブルに乗せる。

これを両脇の「たたら板」でグッと挟み、板の表面に沿って「しっぴき」と呼ばれる糸を引く。一連の動作を繰り返し、同じ厚みの数枚の粘土へと“スライス”する。

ここからは、粘土を巻きつけるだけでカップを作れる雛形を使用。カップの底になる部分にしっかりと粘土を敷き詰めたら、雛形の外周をスライスした粘土によって包み込む。

まずは中野さんにお手本を見せてもらった

さらにペタペタと貼り付けると、徐々に器の形を成してきた。粘土同士の隙間は、未使用の粘土を切り貼りして埋めていく。

表面の凹凸は平らに馴染ませ、見栄えを整えながら空気の侵入も防ぐ。また、飲み口をまっすぐに揃えたいときは、定規やヘラを差し込み、手ろくろを一回転。余分な箇所を切り落とせる。

仕上げに泥を塗るなど、思い思いのデザインをつけて成型完了!

さて、中野さんの技を目に焼き付けたところで、筆者も手びねりに挑戦。雛形を使っているからか、驚くほどスムーズに成型できた。中野さんのように洗練された仕上がりとはいかないが、ハンドメイド感のある粗削りな見た目も気に入った。

さらに、妻の庭から採取した石でニュアンスをつける。

あえて表面に凹凸を。自分のルーツを手触りで感じられる、というのも粋な演出ではないだろうか。

持ち手をつけて完成! こうして並べると、中野さんと自分の力量の差は一目瞭然だが、無骨さもチャームポイントということでご容赦を。

また、コーヒーカップとペアになるソーサーも作成。作り方はシンプルで、スライスした粘土を皿の形に整え、あとは好きにデザインするだけ。

これまた妻の庭から採取した葉をかたどり、きめ細かな葉脈をスタンプに。加えて、妻の故郷にある「烏山用水」の川をモチーフとしたソーサーも作った。初心者でも簡単に創意工夫できるのは、手びねりの楽しさのひとつだ。


驚きの色変化と、手に触れる興奮。オリジナルの器、ついに完成!

さあ、ついに最後の工程、色づけと焼き上げに取り掛かろう。いま作った器に加え、前回の「ろくろ作り」で作った器も仕上げていく。

色づけと焼き上げの作業には、3つのステップがある。まずは700度ほどの熱で「素焼き」を済ませ、次に釉薬をかけて染色、最後に1240度ほどの「本焼き」によって形と色を固定させるのだ。

ちなみに、焼成時の破損に備えて器はあらかじめ乾燥させる必要があるため、実際の作業は日を改めて行った。さっそくだが、素焼きを終えた状態から見てほしい。

のっぺりとしていた粘土が、土らしい質感を一気にまとった。色合いも明るくなり、大幅な変化にびっくり。

釉薬をかけて色を付ける。左の器には「黄瀬戸」と呼ばれる温かな黄色の釉薬を、中央と右の器には「織部色」と呼ばれる深緑の釉薬を使い、烏山用水の木々を表現。内側にはそれぞれトルコブルーの釉薬をかけ、用水路を流れる相模川の水に見立てた。

それにしても、現時点での色から黄色や緑になるのは想像できない。「本焼きすると驚きますよ」と中野さんは笑うが、はたして……?

おお……!

あまりの色合いの変化に唸らされてしまった。想像以上に美しい出来栄えだ。色ムラによるグラデーションがまた、なんとも味わい深い。

完成した器の感触を、興奮気味に確かめる。実は今回、ブラウンの部分は釉薬で色がつかないようにあらかじめワックスを塗っており、焼き上がった後にむき出しの土の感触を楽しめる仕様になっている。いつでも故郷に触れられるコーヒーカップの誕生だ。

ソーサーの底も土をむき出しにし、滑り止めの役割も兼ねた。長く使ってほしい器だからこそ、実用性にもこだわりたい。

[写真右]提供:相模原市観光協会

比較すると、妻のゆかりの地・烏山用水の彩りを再現できたように思える。

焼き上がった瞬間の感動はたまらない。想いを込め、形を作り、色を付け……そうした記憶の一つひとつが、作品から蘇るのだ。ちょっとした凹凸さえも愛らしく見える不思議な体験は、やってみてこそわかるはずだ。

さて、次回で連載は最終回。妻はどんな反応をしてくれるだろうか。

取材・文=佐藤宇紘
撮影=澤田聖司

【取材協力】
彩泥窯 表参道工房
住所:東京都渋谷区神宮前4-6-2-1F
電話番号:03-6447-1105
http://saideigama.com/


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