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日常を忘れ、没頭すればいい。「現代陶芸」にオッサンがハマるべき理由

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愛で、創り、使う。セラミックアーツ入門 Vol.2
ストイックでお堅いイメージのある、陶芸。自作の食器に興味はあっても、地味なイメージは拭えない。なにより食卓に完成品を並べることをイメージするとオシャレ度にやや難あり。……と思っていたけれど、最先端の陶芸、もとい「セラミックアーツ」は驚くほどカッコいい。本連載ではアーティスト・中野拓氏に教えを乞い、進化した陶芸の魅力に迫る。さあ、愛で、創り、使う楽しみを味わい尽くそう。

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黙々と土をこねて、ろくろを回し、納得いく仕上がりになるまでそれを繰り返す。そんなストイックなイメージの陶芸は、外から見ると楽しさがわかりづらい。だが、酸いも甘いもかみ分けたオッサンだからこそ味わえる“深い楽しさ”があるという。

「陶芸で作った器は、身近でありながら半永久的に使えるもの。そのため、深い想いと意味を込められるんです」。

そう語るのは、アーティストの中野 拓さん。表参道の陶芸教室「彩泥窯」オーナーであり、宇宙をテーマとした斬新な作品を手掛けている。

「例えば、自分のルーツを掘り下げて、オリジナルのデザインに落とし込む楽しさ。それを苦労しながら形にしていく楽しさ。そして焼きあがったときの感動と、実際に使って我が子のように愛でる楽しさ。作品づくりには十人十色のストーリーがあり、それに伴って味わい深さも増していきます」。

30〜40代の男性で通う人も多いこちら。現代陶芸こと「セラミックアーツ」にオッサンがどうハマっていくのかを教えてもらった。

日常を忘れて没頭するだけでいい

「40代近い人ならば、日常を忘れてものづくりに没頭できることが十分な魅力と言えるでしょう。人生の折り返し地点に差し掛かり、過去と未来を見つめ直すタイミングの皆さんには、そんな“静かな時間”も必要なはずです」。

現在50歳の中野さんは、どこか懐かしむように答えてくれた。確かに働きざかりの多忙な日々の中では、目の前の職務を全うするだけで毎日が過ぎ去ってしまう。

「自分のルーツを振り返り、それを作品に反映していくセラミックアーツは、頭と心を整理するのに最適です。雑念のない“静かな時間”を持つことで、日常を客観的に振り返ったり、物事の本質を考えたりする余裕も生まれますよ」。

中野さんがこう語るのは、実体験によるところが大きい。前職のビジネスマン時代、陶芸との出会いによって挫折を乗り越えたのみならず、価値観まで一変させられたという。

「それまでの私は、いわゆる“勝ち続けてきた”人間でした。高校時代からボート競技にのめり込み、大学では日本一を経験。バブルの好景気に乗って大企業へと就職すると、そこでも成果を出し続け、本社のエースポジションを勝ち取りました」。

そんな常勝無敗の人生が、突如として揺らぐ。

「ある日、地方転勤を言い渡されて。左遷でしたね。その頃の私は、数字を出していることを鼻にかけ、上司にも横柄な態度をとっていた。まさに自業自得ですが、当時は苦しい挫折でした」。

一度、自分を見つめ直そう。そう思って新たな趣味を探し、陶芸サークルとの邂逅を果たした。

「陶芸に挑戦して、価値観がガラリと変わったんです。それまでの私は高級ブランドの服を身につけたり、ビジネスマンとして『いかに低コストで良いものを作るか』だけを考えたりしてきた。でも、陶芸は何もかも真逆。作るのには手間暇かかるし、手塩にかけて作った作品が『ベルサーチ』のジャケットのように売れるかと言ったらそうではない。なのに、自分で作った陶器のほうが愛着も沸くし、プレゼントしても喜ばれるんですよ」。

「自分とは真逆の世界に飛び込むことで、忘れていた大切なことに気づかされました。だからこそ、忙しい“動”の時間を過ごしている皆さんには、対極にある“静かな時間”が必要だと思うんです」。


「彩泥窯」にいた、静かな時間を愛する“先輩”

中野さんは、そんな静かな時間を愛する“先輩”も紹介してくれた。「彩泥窯」に通う陶芸歴4年の中澤 一さん(36歳)だ。

「仕事のことばかり考える毎日でしたが、陶芸と出会って趣味に没頭する時間ができました。いいリフレッシュになっていますね」。

10年、20年と続けられる趣味を探し、陶芸に挑戦したという中澤さん。これからはじめるなら、一生モノの趣味がいい。

今回作っていたのは丼。左が中澤さんが作った焼く前の作品。これに釉薬をかけて焼き上げると、右のように黒くなる。

過去に約30個もの作品を作ったという中澤さんは、家の食卓も自作の陶器であふれているとか。その一部を見せてもらうと、なんとも彩り豊かなラインナップ!

「自分で作った料理を、自分で作った器で食べる。格別の時間ですよ。買った器での食事より何倍もおいしく感じられます」。

日常から一歩距離を置いて、まっさらな自分として没頭できるセラミックアーツ。多忙な人こそ休日は足を止めて、自分を見つめる“静かな時間”を過ごすべくぜひ門を叩いていただきたい。

取材・文=佐藤宇紘
撮影=澤田聖司

【取材協力】
彩泥窯 表参道工房
住所:東京都渋谷区神宮前4-6-2-1F
電話番号:03-6447-1105
http://saideigama.com/


連載「愛で、創り、使う。セラミックアーツ入門」過去記事一覧
第1回 器は空っぽ、だから人生を込める。セラミックアーツの奥深い世界

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