大人も知らないニオイの世界 Vol.3
「スメルハラスメント」が問題となるなか、自分のニオイが気になる人も多いはず。一方で、ニオイの感じ方は人それぞれで、人によっては「むしろ好き」という人がいるから不思議。身近なだけに意外に知らない“ニオイ”の奥深い世界を、一緒に深掘ってみませんか?
本来なら不快なはずのニオイなのに、好きな異性のものだと気にならない。そんな経験はありませんか? 一体どうしてなのか、臭気判定士で「ニオイ刑事」としても活躍中の松林宏治さんに聞きました。
加齢臭を“いいニオイ”と感じる人も……記憶とニオイとの関係
「ニオイの“好き・嫌い”は個々が生まれ育った環境によって左右されると言われていますが、異性のニオイの好き・嫌いについても、その人の経験値に寄るところが大きいです。例えば、過去に体臭がきつい人が好きだったことのある人は、付き合う人の体臭がきつくても気にならない、むしろ“好き”と感じる人がいてもおかしくはありません」。(松林さん、以下同)
松林さんいわく、世の中に存在するニオイの種類は約40万種類。それぞれのニオイの成分を特定することはできますが、その“快・不快”については一概には言えないそうです。
「例えば、以前とあるテレビの企画で、“加齢臭”の基となる成分を、加齢臭とは言わずに若い女性複数人に嗅いでもらったことがあるんです。そして、そのニオイが好きか、嫌いかを尋ねてみると、ごく僅かではありますが『好き』と答える女性がいらっしゃいました。ひょっとしたらその方は、お父さんとの良い思い出があって、そのニオイが好きになったのかもしれませんね」。
“残り香”という言葉もありますが、どうやらニオイは人の記憶と深く結びついているよう。その記憶の種類によって、ニオイに対する反応は変わってきそうです。
女性は“顔”よりも“ニオイ”で異性を判断する!?
「ちなみに、好きな人のニオイが気にならない人は、女性よりも男性に多い傾向にあるのだそうです」と、松林先生。一体どういうことなのでしょうか?
「男性は、“顔”を基準に異性を選ぶという傾向が女性よりも強いという調査結果があります。つまり、顔が好みであれば、ニオイはあまり気にならないということ。逆に女性は嗅覚が敏感なので、顔がいくら良い男性でも、ニオイが気になると付き合えないという人も少なくないのかもしれません」。
そう言われてみると、「会社では、女子社員に気を遣ってニオイケアをしている」という男性も多いような……。
「ただし、人を不快にさせるほどのニオイを発する人って、本当はそんなに多くないと思います。ですから、あまり神経質になりすぎないことが大切です。また、ニオイに関しては視覚的な影響も大きいところですから、自分のニオイが気になる人は、ニオイケアと併せて、清潔感のある見た目を心がけましょう」。
【取材協力】 臭気判定士・松林宏治さん 1976年、愛知県名古屋市出身。1999年、南山大学経済学部卒業後、一般企業を経て2003年、消臭専門会社である共生エアテクノを設立。脱臭装置の設置、悪臭調査と対策提案・設計などを行っている。「クサイに挑むプロフェッショナル」として、“におい刑事(でか)”の異名で、数々のメディアでも活躍中。2016年、電子書籍『ニオイで女性に嫌われない方法』を上梓。・共生エアテクノ ・臭気判定士/におい刑事(デカ) におい110番~深呼吸空間を創造します~取材・文=周東淑子(やじろべえ)