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器は空っぽ、だから人生を込める。セラミックアーツの奥深い世界

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愛で、創り、使う。セラミックアーツ入門 Vol.1
ストイックでお堅いイメージのある、陶芸。自作の食器に興味はあっても、地味なイメージは拭えない。なにより食卓に完成品を並べることをイメージするとオシャレ度にやや難あり。……と思っていたけれど、最先端の陶芸、もとい「セラミックアーツ」は驚くほどカッコいい。本連載ではアーティスト・中野拓氏に教えを乞い、進化した陶芸の魅力に迫る。さあ、愛で、創り、使う楽しみを味わい尽くそう。

陶芸の世界に、新しい風が吹いている。九谷焼に代表されるような「伝統的な焼き物」のイメージも今は昔。それを覆すような器たちが登場し、普通の趣味では飽き足らない、目ならぬ手の肥えたオッサンもハマるという。

そんな「現代陶芸」を体験するべく、訪れたのは表参道の裏路地にある「彩泥窯」。陶芸というと山奥にアトリエがあるイメージだが、まさか都会の真ん中でもできるとは驚きだ。

教えを乞うのはアーティスト・中野拓さん。宇宙をテーマとした作品を手掛け、数々の賞も受賞。芸能人の指導も行う現代陶芸の申し子だ。


この作品群からもわかるが、伝統的な陶芸とは全くの別物。今回は、現代陶芸の素晴らしき世界を教えてもらった。

器の由来は「空っぽ」。だからこそ自分の人生を吹き込む

「これまでの陶芸は、歴史的な影響を強く受けていました。なかでも『日本六古窯(ろっこよう)』という代表的な6流派があり、その伝統の範囲内でしか器を作れなかった。現代陶芸にこうした“型”はなく、自由に材料を選び、オリジナルを追求できます」。(中野さん、以下同)

“職人技”のイメージがある陶芸だが、一般人にも親しみやすい存在になったらしい。親子の趣味に陶芸を楽しむファミリー、記念日のサプライズに陶芸体験するカップル、さらにはチームビルディングを育むための企業研修など、彩泥窯はあらゆる層に支持されている。

現代陶芸は「セラミックアーツ」とも呼ばれることがある。「創作的な陶芸」であり、醍醐味は自分だけの器を作ることだ。

「セラミックアーツでは、器に自分のパーソナリティーを吹き込みます。故郷の土を使ったり、子供の手形を入れたり。人生を見つめ直しながら作るからこそ、完成した器への愛着もひとしおですよ」。

中野さんの故郷・淡路島の砂を使った陶器。淡路島のオレンジ色の砂浜とエメラルドグリーンの海を表現している。

器を設計する前に、人生について語り合うことも多いとか。自分のルーツとビジョンを明らかにし、どう器に反映させるか考えるのだ。

「器という言葉の由来は、空っぽを意味する空(うつ)。中に何かを入れることで、はじめて器は完成します。さらに器は、各部位に口・腰・胴などの名称がついており、人間を見立てて作られている。だからこそ、そこに作り手の人生を吹き込むのは、陶芸の自然な姿でもあります」。

陶器を通じて宇宙を表現。未知への憧れを追い続ける「アストロマンティック」

そんな美学が詰まっているのが、中野さんの作品。純金、プラチナ、チタニウムといったスーパーノヴァ(超新星爆発)から生まれる素材にこだわり、宇宙を表現している。

「テーマは『アストロマンティック』。アストロとロマンティックを組み合わせた造語です。僕は学生時代にボート競技の日本一などを経験し、自ら限界を決めないことを大切にしてきました。これからも未知の世界への憧れを忘れず、挑戦し続けたい。そんな想いを込めています」。

スーパーノヴァをモチーフにした陶器。ガラス質の釉薬とチタニウムを使用し、光の角度によって輝きを変える「ラスター現象」を引き起こした。

左から太陽、地球、火星、木星をモチーフにした陶器。太陽には赤い裂け目を描き、内側から湧き上がるフレアを表現した。凹凸の不思議な火星は、「タコのような火星人」という大衆イメージから着想を得たらしく、確かにどこか生命感がある。

遥か遠く、スーパーノヴァから生まれた陶器を見つめていると、男心がうずいてきた。

「恒星はいつか生涯を終えて、大爆発を起こす。それがスーパーノヴァです。でも、そのときに撒き散らされた元素が星間ガスになり、長い時間をかけて集まると惑星ができます。そして、生命を構成する炭素やアミノ酸も、スーパーノヴァに由来するもの。私たちはみんな、“星屑のこども”なんですよ」。

陶芸を通じ、自分の心と深く向き合うセラミックアーツ。人生の折り返し地点に差しかかる37.5歳には最適の趣味ではないだろうか。家族や友人と過去を振り返りながら、ぜひ挑戦してみてほしい。

取材・文=佐藤宇紘

【取材協力】
彩泥窯 表参道工房
住所:東京都渋谷区神宮前4-6-2-1F
電話番号:03-6447-1105
http://saideigama.com/

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