妻を説得する心理テク Vol.5
連れ添う年月を重ねると、何も語らずとも通じ合うツーカーな関係になる一方、妻の興味は子供へ移り、自分の主張が軽くあしらわれることも多くなる。夫婦関係のこと、お金のこと……、面倒そうなことならなおさらである。なんとか打開策はないものか? 「妻へお願いごとをする」、そんな場面を有利に運ぶための心理学テクニックを学んでみよう。
「妻を説得する心理テク」を最初から読む今の会社から転職したい。将来と自分の目指す場所を見据え、何日も必死に考え抜いた末の決断。「きっと妻も応援してくれるに違いない」と思っていたら……「転」の字を口にする間も無く猛烈な反対に遭ってあえなく撃沈。じつはそんな例は多く、転職業界では「嫁ブロック」と呼ばれている。
一家にとって一大事ではあるけど、少しは説明させてほしいもの。けれどこの反応、ある意味、科学的に真っ当な反応なのだと、臨床心理士の山名裕子先生は語る。
「男性に比べ、女性は『不満』より『不安』を避ける傾向にあります。たとえ現在の旦那さんの給料が低くても、転職や独立という未確定な将来に飛びこむよりマシなのです。そのため、『現在のままでいてほしい』と意見してしまうんですよ」。(山名先生、以下同)
嫁ブロックを打ち砕く「ハードトゥゲットテクニック」
そう言われてしまうと、困りどころ。突破口を作るのがまずは一苦労、と認識すべきというのはわかったが、果たしてどうしたらいいのだろう? ここで教えてもらったのは「ハードトゥゲットテクニック」だ。
「これは特別感を演出するテクニックです。『あなただから、この価格で!』という詐欺の常套文句がありますよね。そうアレです(笑)。『君と一緒だからこういう決断ができたんだけど……』という言い方で奥さんに頼ってみてください。はじめは頑なな態度でも、相談の回数を重ねると、『私と彼なら乗り越えられるかも』と受け入れやすくなります」。
人は頼られるとうれしいと感じるもの。特に専業主婦は、ずっと家にいるので承認欲求をくすぐられると弱いのだ。嫁ブロックを打ち砕くには、嫁の承認欲求を満たしてあげるのが吉、と言えるかもしれない。
心理テクニックで“長期的に仕込む”、という手も有効
また、ちょっと回りくどいものの、長期的に仕込んでいく方法もあるという。
「人は期待をされたら、その通りの成果を出すという心理的行動があります。ピグマリオン効果というのですが、これを子育てで応用してみると、いい“布石”を打てるかも。例えば、『ピグマリオン効果って知ってる? 子供が何かやりたいって言った時は、止めないほうがいいんだって』と吹き込んでおくんです。すると、奥さんの脳裏には『挑戦は止めないほうがいい』と刷り込まれ、旦那さんが転職を相談した時も、頭ごなしの反対は受けにくくなるかもしれせんよ」。
つまり、子育てを利用して、後々の自分の“挑戦”を受け入れやすくさせよう、という計画である。もちろん、目論見が外れたとしても子育て自体にプラスの効果はあるので、やって損はない。さらに地道ながら確実に効果のあるテクニックも。
「会えば会うほど、聞けば聞くほどその人のことが好きになってしまう『単純接触効果』というものもあります。普段から転職先の会社のことをしきりに奥さんに話して、頭の中にプラスのイメージを刻み込んでください。そうすれば、転職や独立の相談をしたときも、『え?なにその会社?』と邪険に扱われることは少なくなるはずですよ」。
今日から使える! テクニックのおさらい
・「ハードトゥゲットテクニック」で、妻の承認欲求を満たしつつ相談せよ
・子育てで「ピグマリオン効果」を駆使し、妻の「挑戦を受け入れる姿勢」を長期的に仕込む
・「単純接触効果」を狙って、転職後や独立後のイメージをしきりに話すべし
「嫁ブロック」に悩む夫は多い。しかしそれは、妻が安定した未来と幸せを願っているからに他ならない。転職の無理解に憤るのではなく、まずは妻の気持ちを察した上で、上手にお互いの本音を話し合い、家族のより良い未来を考えたいところだ。今回のテクニックがその一助になれば幸いだ。
次回は、世の多くの夫が最も妻にお願いしたいこと「小遣い」について取り上げたい。鉄壁の防御を誇る家計をこじ開けるにはどうすれば……? 乞うご期待!
いのうえゆきひろ=取材・文
【取材協力】 山名裕子 1986年5月7日、静岡県生まれ。臨床心理士。「やまな mental care office」を東京青山に開設。心の専門家としてストレスケアからビジネス、恋愛などあらゆる悩みへのカウンセリングを行っている。まだカウンセリングに対する偏見の多い日本で、その大切さを伝えるためにメディア出演や講演会活動を行う。日本テレビ「ナカイの窓」では心理分析集団「ココロジスト」を務める。新書に『読むと心がラクになる めんどくさい女子の説明書』(サンマーク出版)がある。