パパは家事も育児も一生懸命やっているつもり、ママにも最大限気を使っているつもりなのに、なぜかママがいつもイラっとしている。そんな夫婦間のギャップの原因を、ママ目線から解説するこの連載。今回は、この季節特有の問題、クリスマスへの向き合い方と年末年始の過ごし方にまつわる夫婦間のギャップに迫ってみたいと思います。
「自己評価の高いパパ」と「いつも何かが不満なママ」を最初から読むクリスマスの過ごし方は“育ってきた環境”によって違う結婚する前は、クリスマスといえば恋人とのデートや食事を楽しむ日として、ワクワクしながら心待ちにした記憶がある人も多いことでしょう。ところが、結婚し子供ができた後は、クリスマスの主役は子供。ツリーを子供と一緒に飾ったり、クリスマスケーキを食べたり、いつもよりちょっと豪華な食事を作って家族でクリスマスパーティをするという家庭もあると思います。
しかし、クリスマスをどうお祝いするかは、夫婦それぞれが育った環境によって、そのモチベーションはかなり違ってくるようです。
自営業で小2と年長の2人の子供を育てる沙弥香さん(仮名)は、パパのクリスマスに対するモチベーションの低さに、結婚当初、かなりイライラしたと言います。
「うちの夫の実家では、クリスマスをお祝いする習慣が無かったそうで、クリスマスを祝うことを毛嫌いしていました。『キリスト教徒でもないのに…』なんて言って。こちらとしては、1年の終わりに家族でその年を振り返りながら、楽しくパーティできればいいかな……と思っていたのですが、そんな感じなので、クリスマスパーティやるよと言っても、仕事を早く切り上げて帰って来ることもなく、数年間は私と子供だけで、ケーキを食べる程度ですが、ささやかなクリスマスパーティをしていました。でも、やっぱりパパも一緒にいてくれたらいいのにな……とずっと思っていて」
しかし、3年ほど前から沙弥香さん一家では、新しいクリスマスの過ごし方の定番ができたとか。
「3年前、夫が急にクリスマスには1泊で温泉宿に泊まりに行こうと言い出したんです。確かに、クリスマスっぽい料理などは食べられないけど、泊まりに行ってしまったほうが私も楽ができるしいいな……と。夫もそういう過ごし方ならいいみたいで、去年もせっせと自分で宿を予約していました。必ずしも家でパーティをする必要はないので、家族みんなでゆっくりできるなら、こんなクリスマスもいいかな……と思っています」
こんな過ごし方なら、クリスマス反対派のパパも楽しめるということですね。年末に一年を振り返りながら、一家が温泉でのんびりするというのは、なかなか素敵なクリスマスです。
沙弥香さんのケースとは逆に、夫の実家でのクリスマスが本格的だったため、それと比べられてママが困ったというのが、公務員の雅子さん。
「私の実家では、クリスマスになるとケンタッキーでチキンを買ってくるのが恒例だったんです。ケンタッキーって、私が子供の頃は近くにお店があまり無かったので、クリスマスだけの特別感があって、それを毎年楽しみにしていました。そのため、結婚して最初のクリスマスにも、何の迷いもなく仕事帰りに張り切ってケンタッキーを買って帰ったのですが、それを見た夫が『なんでケンタッキーなの?』とひと言。彼の実家では、毎年お母さんが、手作りでローストチキンやケーキを作ってお祝いしていたそうで、そんな環境で育ってしまったため、なぜ手料理じゃないのか……と違和感があったそうです」
「専業主婦で料理上手なお母さんと比べられても困る」というのが雅子さんの正直な気持ち。しかも、年末は仕事が忙しい時期。クリスマスにそこまで時間とパワーを割くことはできません。
「夫は最初ちょっと不満そうでしたが、毎年毎年ケンタッキーを買い続けていたら、いつの間にかこれが我が家の定番になりました(笑)」
家庭ごとに色々な過ごし方のあるクリスマス。些細な違いで夫婦ゲンカするくらいなら、子供の頃の思い出を夫婦で語りながら、自分たちなりの新しいクリスマスの過ごし方を見つけていった方が建設的ではないでしょうか。
お正月の実家への帰省をどうするか。子供が小さいと、さらに揉める原因にもう1つ年末ならではの夫婦間の揉め事といえば、実家への帰省ではないでしょうか。お互いの実家が遠方にあるため、特に子供が出来てからは、どちらに帰省するかで揉めたというのが、会社員の理恵さん(仮名)。
「夫の実家は山形、私が静岡なので、子供ができる前は年末に私の実家、元旦に夫の実家に移動して過ごしていました。でも、まだ子供が小さいので、そんな忙しいスケジュールで過ごすのは無理です。それなのに、夫は子供ができてからも、両方に帰省しようと言い出して喧嘩になったことが何度かありました」
無理をさせると、せっかくのお休みなのに子供が熱を出したりしかねないと心配する理恵さん。しかも夫の実家は東北でかなり寒いので、この時期に帰省すると子供が風邪をひきやすく、正月明け早々、また保育園を休ませることになるのが怖いと言います。
「しかも、子供が風邪を引くのはまだしも、過去には夫自身が年末年始に熱を出したことが何度もあって、それだけはもう勘弁してほしいですね。せっかくの長期休みなのに、夫の看病をして過ごすのはもう嫌なので(笑)。お正月明けもまた、仕事がお互いに忙しくなるので、家族みんな体調を万全にして仕事を始めたいんです。そのあたりをもう少し気にしてほしいんですよね」
そんなわけでここ数年、年末年始はママの実家へ、パパの実家にはゴールデンウイークに行くというパターンが定着したそうです。
ママは、ちょっと無理をすると自分も子供も体調を崩すことがわかっているので、体調管理には細心の気配りをしますが、パパは意外と無頓着。パパが張り切って、タイトなスケジュールを組んだりしがちですよね。
年末年始から仕事初めの時期まで、家族みんなが元気に過ごせるように、できればママと子供の体力に合わせて、余裕のあるスケジュールで過ごすのが良さそうです。そのためには、前もって年始の仕事のスケジュールもお互いに共有し、子供も自分たちも無理をしないように、夫婦でよく話し合っておくといいですね。
普段とは違ってイベントが多い年末年始は、どうしても価値観の違いで意見の相違が生まれたり、夫婦ゲンカも増えがち。せっかくゆっくり過ごす時間が取れるタイミングでもありますから、夫婦で1年を振り返り、来年も協力して仕事や子育てを乗り切れるよう話し合う機会としてみてはいかがでしょうか。
文/相馬由子
編集者、ライター。合同会社ディライトフル代表。子育てをテーマにした雑誌、ウェブ、書籍などの企画・編集・執筆を手がける。2017年より某育児・教育系ウェブメディアの編集長を務めている。再来年に娘の小学校入学を控え、学童に入れるのかが目下の悩み。
イラスト/佐野さくら