OCEANS × Forbes JAPAN Vol.28
2020.10.06
LEISURE

目立ってはいけない不自由な時代。「ソロキャンプ」という休みのすすめ

当記事は、「Forbes JAPAN」の提供記事です。元記事はこちらから。

キャンプなら、それがすぐに叶う。泊まりで行くピクニックのようなものだからだ。
自然が教えてくれるシンプルな暮らしを

知らぬ間にGoogleカレンダーの予定を埋められ、タスクという名で仕事が管理され、メールの言葉選びに悩み、Slackでは迅速なやりとりが要求される。そんな毎日を過ごしていたら、生産性を考えずに「自然のなかでのんびりしたい!」と願うのは当然だろう。

キャンプなら、それがすぐに叶う。泊まりで行くピクニックのようなものだからだ。

キャンプグッズは緊急事態宣言中も順調に売れた

第二次キャンプブームと言われてから、すでに5、6年の歳月が過ぎ去ろうとしている。第一次ブーム(90年代)の子どもが親になった、フェス文化から流入してきた、オシャレなギアが増えた、インスタグラムでママ層が興味を持った、アニメやユーチューバーの影響で若者にも火かついたなど、その要因は多いが、どこから入っても「自然のなかでのんびりしたい」というゴールは変わらない。

また、清潔なトイレやシャワールーム、充実の子ども向けフィールド、素敵なコテージを備えたキャンプ場なども登場しており、人気の施設は予約が取れないほど。絶好調のなか今年もキャンプシーズン幕開け、というときにコロナ騒動が起きた。

「キャンプグッズは、緊急事態宣言中でもECを中心に売り上げを伸ばしました。また、宣言解除後は、自分の目で新作を確かめたいというお客さんで実店舗も混雑しました」と語るのは、アウトドア専門のフリーランスPR兼コーディネーターのB.O.W代表・牛田浩一さんだ。

アウトドアスタイリストの近澤一雅さんも、「自宅でも使えるキャンプグッズがよく動いたと聞いています。ついにテントも売れ始めたようですから、完全に戻ってきたんでしょうね」と語る。

キャンプ気分でテレワークをしたい

キャンプが趣味という人にとっては「だろうな」という感想になるだろう。というのも、軽量性やコンパクト性など、機能面に優れたものがキャンプグッズには多く、ギア好きにはたまらない領域であるからだ。ガレージブランドと呼ばれる小規模のメーカーも増え、趣向を凝らしたデザイン性の高いものが市場に増え続けている。「これは便利かも」「これは映える」と、物欲を刺激されるものが次々と登場するので、財布の紐がゆるむのである。

また、この2、3年で「自宅でも使えるアウトドアギア」という提案を各社が推し進めてきた功績も大きい。テーブルや椅子、キッチンツールなど、機能性もデザイン性も高いキャンプ道具を日常的に使う。これが、テレワークで椅子やテーブルが必要になった人たちに、「キャンプ気分で仕事をしたい」「キャンプでも使えるし」という思いを抱かせた。時間に余裕が生まれたことで、買おうか迷っていた「不要不休急なギア」をついポチッてしまった人も多い。

キャンプに限らず、趣味というのは「来たるべき日を思い浮かべながら過ごす」というだけで気分が高揚するもの。買い物も大きなリフレッシュ方法なのである。

部屋のインテリアにもすっきりと馴染む、メラミン樹脂を基調としたダークトーンの天板。
部屋のインテリアにもすっきりと馴染む、メラミン樹脂を基調としたダークトーンの天板。木目調なのでリラックスした雰囲気が生まれる。高さを70、60、44cmと3段階で調整することが可能。収納ケース付きでコンパクトになるのも魅力。「バタフライテーブル90」 17600円(税込)問い合わせ:コールマン ジャパン
かつてイギリス軍に採用されていた、ランドローバートラックの車載装備だった椅子が「ローバーチェア」
かつてイギリス軍に採用されていた、ランドローバートラックの車載装備だった椅子が「ローバーチェア」。その堅牢性や使い勝手の良さ、座りやすさ、そしてデザインの良さで人気が高い。こちらはテントファクトリーがミドルハイの高さにリデザインしたモデル。「TFローバーチェアMH(オリーブグリーン)」 5800円(税別)問い合わせ:テントファクトリー
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では、現在のキャンプ場はどうなっているのだろうか。コロナ感染へのケアは必要だろうが、風通しのいい野外で過ごすのは密とは程遠い。我が家だけでのファミリーキャンプであればまったく問題がないのではないか。

「キャンプ場は予約制限をしながら、6月初旬からオープンし始めました。8月からやっと本番という感じではないでしょうか。トイレと炊事場は共用なので、そこは気を付けるポイントかなと思います。飛沫感染を防ぐために、トイレは蓋をしてから流すといったエチケットも必要です」(牛田)

あとは風呂の問題が残る。キャンプ場近くのスーパー銭湯に行く人が多いが、気になるなら風呂なしで過ごすのもいい。縦走登山をする人にとっては風呂なしが普通だが、家族からはブーイングがおこることもある。その点はそれぞれの価値判断でとしかいえない。

注目はソロキャンプという新スタイル

そんななか、この状況を想定していたかのようなブームが起きている。それが「ソロキャンプ」というスタイルだ。

2、3年前からじわじわ人気が高まっていたが、お笑い芸人でユーチューバーでもあるヒロシの影響で一気に広まった。小売り各社は、コロナ禍以前から2020年のトレンドを「ソロキャンプ」と想定し、関連商品をプッシュしていく算段で動いていたほどだ。

「ソロキャンプ」とは読んで字の如く、「ひとりで行くキャンプ」のこと。これもまたキャンプブームの副産物といえる。インスタ映えやグランピングなどが話題になった頃、すでにキャンプを趣味としていた人たちは「私も行きたい、連れて行って」と一躍人気者になった。しかし、それが仲間内であろうと知り合い家族であろうと、装備を持たない初心者と行くキャンプは、経験者にとって負担が大きいのである。

ワンポールテントは、デザイン性と居住性の高さで人気。
ワンポールテントは、デザイン性と居住性の高さで人気。こちらはソロキャンプ向けに開発されており前室の広さが特徴。一般的にソロテントは登山用のものが多く、使い勝手よりも軽量性重視。ゆえに、独自性の高い「パンダ」シリーズは常に品薄が続くほどの人気商品。 20300円(税別) 問い合わせ:テンマクデザイン

キャンプ上級者であっても「自然のなかでのんびりしたい」という気持ちは同じ。それが、準備から後片付けまで大忙しで、ヘトヘトになる経験を何度も味わうことになる。「こんなことなら、ひとり気ままに過ごしたい」。これがソロキャンプ・ブームの大きな要因となった。そして現在、パンデミック化での安全な遊びとしてもフィーチャーされ始めている。

「密になりようがないですからね。ひとりを想定した道具も充実していますし、実際に売れ行きもいいです」(牛田)

側面を外せば大きな薪も使える焚き火台。焼き網付きで湯沸かしや調理も可能。
横幅36cm、縦幅23.7cm、高さ17cmとコンパクトながら、側面を外せば大きな薪も使える焚き火台。焼き網付きで湯沸かしや調理も可能。約423gと軽量なのもポイント。焚き火を最大の楽しみとするソロキャンパーの必需品。「焚き火台 TABI」 10000円(税別)問い合わせ:ベルモント
米ソルトレイクシティ発の新興ブランドでありながら、アンティーク風なデザインで人気のベアボーンズ
米ソルトレイクシティ発の新興ブランドでありながら、アンティーク風なデザインで人気のベアボーンズ。このライトは、上部のカラビナで引っ掛けたり、自立して使うことができる、幅7.6cm、高さ15.2cmとコンパクトなLEDライト。「ビーコンライトLED」 5500円(税別)問い合わせ:エイアンドエフ

おひとりさまはキャンプ以外でもキーワードに

キャンプというのは、気軽さゆえに「底が浅い」遊びでもある。段階によってキャンプそのものが変化するからだ。

便利な道具を揃え、スムーズに組み立てられ、火が熾せたら中級者。その後、見栄えの良さや手の込んだ料理へとシフトするが、やりすぎると「自然のなかでのんびり」ができなくなるので、ある時期から装備がシンプルになり料理も簡素化され始める。さらに削ぎ落としていくと「ソロキャンプ」となり、その先には極力自然から物資を調達する「ブッシュクラフト」へと繋がっていく。または、キャンプはあくまでも野営の手段という基本に戻り、登山やカヌーといったアクティビティに精を出すパターンもある。

「自然のなかでのんびりしたい」。そんなキャンプへの思いはコロナ禍が長期化するほどに高まってくるだろう。しかし、家族ですら躊躇せざるを得ない空気がある。それならば、必要最小限の荷物で自由気ままに「ひとりで行く」。または、同じ自己完結スタイルの仲間と現地集合。そんなソロキャンプというスタイルが、新たなトレンドになることは間違いない。

不自由な時代の「休み」は目立ってはいけない、人と離れなくてはといけない。「おひとりさま」は、キャンプに限らず新しい生活様式の「遊び方」として頭角を現すだろう。

 

富山 英三郎=文

記事提供:Forbes JAPAN

# コールマン# ソロキャンプ# フォーブス# ベアボーンズ
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