この夏、あれもしたいし、コレも欲しい! Vol.25
2020.08.08
LEISURE

今年は自宅で花火をしよう。長い歴史と消えない火花を持つ2つの線香花火

濃紺の空のキャンバスに開く大輪の火花。今どき、玉屋に鍵屋と掛け声する人もいないかもしれないが、今夏、大きな花火大会は、軒並み中止の様相だ。

ならば。我が家の小さな庭で、ベランダで、小さな火花を咲かせてみないか。そう、線香花火。それも国産の。

わびさびが生んだ火花の芸術をいざ知らん。

 

この夏は線香花火を知る

この夏は線香花火を知る

時は、バブル崩壊後の1998年。日本の物作りが、次々中国へと流出していった時代。日本の三大花火産地である、長野、愛知、福岡の線香花火工場がひとつ消え、ふたつ消え、最後の一軒が閉鎖して、国産線香花火もほかのプロダクト同様、絶滅したかに思われた。

が、ほぼ同時期に、その伝統を守るべく別々に動いていた人たちがいた。東京の花火問屋の五代目、山縣常浩さんと、福岡の花火製造所の三代目、筒井良太さんだ。

「山縣商店」の線香花火
「山縣商店」硝石、硫黄、松煙という3つの原料を、職人の手により調合。手染めの美しい和紙に包み撚って一本の花火に仕上げた伝統的なタイプ。牡丹〜松葉〜柳〜散り菊といった、美しい火球の移ろいを楽しめる。下方に斜め45度くらい傾けると、より長く楽しめるとのこと。「大江戸牡丹」 600円[10本入り]/山縣商店 03-3862-3927

「山縣商店」は、大正3年の創業から100年以上続く老舗花火問屋。家業を受け継いでいた山縣さんは、問屋のつてを活かしつつ、製造技術を復活できる花火工場を訪ね歩いた。その結果、愛知県の三州火工という工場に出会い、研究開発を重ねた2年後に国産の線香花火を復活させた。

一方、福岡県で 約90年続く花火工場「筒井時正玩具花火製造所」を継いだ筒井さん。

線香花火は製造していなかったため、国内で製造していた最後の工房が消えるというそのときに、製造技術のいっさいの継承を願い出た。その修業で培った技術が今も、福岡で続いているという。

「筒井時正玩具花火製造所」の線香花火
「筒井時正玩具花火製造所」300年変わらないといわれる線香花火の原形で、ワラスボの先に火薬をつけたつくり。ワラが豊富な関西地方を中心に親しまれたといわれる。こちらは、火の粉が吹き出すタイプ。ワラスボの先をやや上に向けて楽しむ。パッケージも繊細で美しい。「西の線香花火」 600円[15本入り]/筒井時正玩具花火製造所 0944-67-0764

この有志たちによって、消えかけた火が再燃。国産線香花火として、ブランド化にも成功。特徴は、火球が大きく長持ちする点だ。

大輪もいいが、チリチリと弾けるこの一輪もいい。物作りの情熱を片手に新しい夏の宵を過ごしてはいかがか。

 

鈴木泰之=写真(静物) 松平浩市、来田拓也、平 健一、窪川勝哉=スタイリング 増山直樹、いくら直幸、髙橋 淳、小山内 隆、髙村将司、まついただゆき、今野 壘=文

# 線香花火
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