2018.05.09
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「老けない人」は大人になっても遊んでいる! 遊びと仕事に境界線はいらない?

当記事は、「東洋経済ONLINE」の提供記事です。元記事はこちらから。

2014年3月、「ハフィントンポスト」のシニアライター、キャロリン・グレゴワールが書いたひとつの記事が爆発的ヒットとなった。そのタイトルは「創造性の高い人がやっている18のこと」。クリエイティブ思考の人々と習慣を探ったこの記事は瞬く間にシェアされ、フェイスブックの「いいね!」は50万にものぼった。

このことは、効率化や生産性向上ばかりが議論される時代において、創造性の重要性を改めて認識させる契機となったと言える。この記事の元となった研究を行っているペンシルベニア大学の心理学者、スコット・バリー・カウフマンとグレゴワールの新著『FUTURE INTELLIGENCE これからの時代に求められる「クリエイティブ思考」が身につく10の習慣』から、実際にクリエイティブ思考を持っている人たちの習慣をいくつか紹介しよう。

子供時代の遊びがインスピレーションに

●1年間対話するより、1時間ともに遊んだ方が、相手の人柄はよくわかる。
――プラトン

1952年に生まれ、子供時代を京都北西部の山村で過ごしたその少年は、いつも夢見がちだった。木切れと紐でおもちゃを作り、指人形を作っては芝居を演じ、漫画を描き、村の周囲の山や渓谷を探検した。

成長するにつれて、少年はますます多くの時間を自然の中で過ごすようになった。8歳の夏には、山を歩いていて洞窟を見つけた。その夏の間、彼はしばしばその大きく暗い洞窟にこもり、イマジネーションをめぐらせた。

大人になった彼、宮本茂は、こうした屋外での探検にインスピレーションを得て、きわめて影響力のある作品を生み出した。テレビゲームの「スーパーマリオブラザーズ」である。

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自分が築いた想像の世界で子供時代を過ごした宮本は、大人になると自らの想像の世界を世界中の人々と共有することになった。テレビゲーム界のウォルト・ディズニーとも呼ばれる彼が生み出したのは、「スーパーマリオブラザーズ」だけではない。同じく大ヒットした「ドンキーコング」や「ゼルダの伝説」、Wii本体、それに任天堂の400を超すゲームを監督したのだ。

テレビゲーム産業は1982年にアメリカのテレビゲームメーカー、アタリ社が経営破綻したが、1985年に「スーパーマリオブラザーズ」が発売され、息を吹き返した。それは、口ひげを生やしてオーバーオールを着たイタリア人配管工マリオとその右腕のルイージのコンビが、キノコ王国でピーチ姫を救うための冒険に乗り出すという内容だ。

「スーパーマリオ」をはじめとする宮本のゲームは、世界中のゲーマーと意欲的なゲームクリエイターの称賛を集めた。彼のテレビゲームは、これまで作られた中で最も優れており、最も収益を上げたと言われている。

遊ぶように仕事に取り組む

しかし、なぜ宮本は世界中で最も愛されるゲームを生み出すことができたのだろう。この任天堂のスターは、年を重ねても遊び心を失わなかった。ゲーム「シムピープル」のクリエイター、ウィル・ライトは語る。「彼は遊ぶように仕事に取り組む。そうあるべきなのだが、たいていの人はそれができない」。

さまざまなジャンルで優れた成果を上げた人々もまた、宮本のように子供時代に空想を楽しみ、大人になってもその遊びのセンスを仕事で発揮している。

心理学者のラリッサ・シャヴィニナは、有望な若手の起業家や発明家や科学者の暮らしぶりを研究し、リチャード・ブランソン、ウォーレン・バフェット、ビル・ゲイツのようなビジネスの革新者は、幼い頃から起業家めいたことをしていたことを発見した(たとえばブランソンは12歳でクリスマスツリーの栽培と販売を始めている)。

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スイスにある「森のようちえん」では、4歳から7歳の子供たちが終日、屋外で遊んでいる。雨の日も晴れの日も、子供たちは森の中を駆け回り、一緒にゲームをし、見つけた物で何かを作り、周辺の自然の中を探検する。

子供たちに課される目標や期待値は極めて低い。例えば、地面に自分の名前を書く、といった程度で、算数や読み書きは一年生になるまで教わらない。

「真剣さ」と「遊び」のうまいバランス

この幼稚園では、子供たちが自由な遊びを通じて大切な社会情緒的スキルや運動スキルを身につけ、生来の好奇心と想像力と創造力を磨くことをなにより重視している。この重要な基盤が確立されて、ようやく小学校で習う学科の準備段階に入るのだ。

大人も同じように、子供のような遊びの感覚を養っていれば、働き方を変えることができる。

わたしたちはどんな内容であれ、とかく仕事を深刻で難しいものとみなしがちだ。もちろん仕事で成功している人は、真剣に考え、仕事に多くの時間と努力を注ぎ込んでいる。

しかし傑出した結果を出す人たちは、仕事における「真剣さ」と「遊び」のバランスをうまくとっている。仕事で遊ぶことができれば、柔軟な心で新しいアイデアを練ることができ、また、長時間働いても強いストレスを感じたり、消耗したりせず働き続けることができる。

クリエイティブな仕事には、真剣な時間と遊びの時間がある。往々にして最善の結果が出るのは、両者をうまく組み合わせたときなのだ。一方、遊びと仕事をきっちり分けるのは、現実的でないばかりか、害さえ及ぼす。研究により、子供でも大人でも、仕事と遊びを混ぜ合わせると、学習にも創造性にとっても、望ましい結果につながることがわかっている。

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テレビゲームデザイナーのジェイン・マクゴニガルもまた、わたしたちがしていることの多くはゲームと同じく「ただ楽しむため」のものであり、それは人生を幸せかつ柔軟に生き、仕事で結果を出すために欠かせない、と語っている。

誰もが思い当たるように、わたしたちは大人になるにつれて遊び心と好奇心を忘れ、生活は仕事とまじめな事柄に支配されがちになる。かつてジョージ・バーナード・ショウはこう言った。「人は老いたから遊びをやめるのではない。遊びをやめるから老いるのだ」。

遊び心が常識的な考えから脱却を促す

もちろん、大人が「子供の心」を取り戻す方法もある。ある実験で、大学生をふたつのグループに分け、ひとつのグループには、「その日の授業が休講になった」と想像してもらい、もうひとつのグループには、「自分が7歳の子供で、学校が休みになった」と想像してもらった。

すると、「自分は7歳で今日は学校が休みになって喜んでいる」と想像した学生のほうが、その後で受けた拡散的思考テストでクリエイティブな答えを出したのだ。つまり、遊び心は常識的な考え方からの脱却を促すのだ。

現在、誰も彼も遊び不足で、遊びが許容され歓迎される空間が渇望されている。最近の調査では、遊ぶことの多い大人はストレスを感じにくく、ストレスをうまく扱い、人生により満足し、より多方面で成功を手にしていることが示唆された。遊び心を持ち続ければ、年をとった後もクリエイティブ思考とバイタリティを維持できるのだ。

スコット・バリー・カウフマン : 心理学者
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記事提供:東洋経済ONLINE

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