オーシャンズとレジャー 37.5歳から始める大人の趣味入門 Vol.9
2017.03.31
LEISURE

よりおいしいコーヒーがあれば、週末がより味わい深くなる①

大人がこだわる飲み物の筆頭格にお酒を挙げたとしたら、いささかもったいないことだ。たしかにウィスキーやワイン、日本酒など、アルコールにはこだわるべき歴史と深みがある。だが、健康をさほど害さずに平日から休日まで楽しめ、アルコールほど“行動”を制限しない選択肢がある。それは、コーヒーだ。高いコストパフォーマンスと、自ら味わいを追求する喜びも備える。さあ、酒神バッカスにしばしの別れを告げたなら、めくるめくコクと香ばしさの旅に出かけてみよう。

コーヒーの概念を覆す、あっさり&フルーティーな1杯に出会う

西田佐知子が1961年に歌った「コーヒールンバ」の歌詞についてざっくり言えば、「恋を忘れた男でも、コーヒーさえ飲めばテンションが上がり、若い娘に恋ができる」ということ。
琥珀色した液体には、それだけの魔力があるのだ。まんぜんと飲んでいては無調法だ!

コーヒーのおいしい淹れ方を学べば心が豊かになり、おいしいコーヒーとともに過ごす週末は、きっと豊かな満足感が得られることだろう。

コーヒーに心を砕きたい……豆を砕くように。そこで訪れたのが、中目黒にあるオニバスコーヒー。

コーヒー好きの注目を集める新鋭だ。オーナーの坂尾篤史さんが、「まずは」とタンブラーで出してくれた1杯のホットコーヒーに、早速衝撃を受ける。

コーヒーらしい豊かな香りを感じる一方、苦みが薄く、フルーティーな酸味を強く感じる。ライトな飲み口はお茶にも近く、砂糖は入っていないのに甘みすら感じる。なんじゃこりゃ!

「浅煎りのホンジュラス産の豆を使っています。豆選びと淹れ方を工夫すれば、このくらいの味が出せますよ」
筆者はドリッパーでコーヒーを淹れた経験すらほぼない初心者だが、こんな自分でもいいんですか? いいんですね!? いいそうです! これは期待せずにはいられない。

豆選び、焙煎度合い、挽き方。準備に手間を掛ける喜び

おいしいコーヒーへの第一歩は豆選びから。
オニバスコーヒーでは主に「ホンジュラス」「ルワンダ」「エチオピア」「グアテマラ」の4種類の豆を使っているとか。
今回はルワンダ産をチョイス。コーヒー豆と言えば黒褐色のものを想像するけど、もともとの豆は白い。それを火に掛けて焙煎することで、こんな色になるのだそう。

「深く煎れば煎るほど、苦みとコクが強くなっていきます。浅めにしておけば、爽やかな風味。そのあたりは好みです。豆を買って試す場合、自家焙煎のお店でしたらこだわっているケースが多いですね。ちなみに最近は自宅用の焙煎マシンも販売されているので、自分で試してみるのも面白いですよ」

オニバスコーヒーは浅煎りが専門。先ほどいただいたような、フレッシュで果実感のある爽やかな味わいを創り出すためだ。とはいえ豆は煎りたてではなく、どんな豆でも1週間ほど寝かせたほうが発生したガスが飛び、クリーンな風味をより楽しめるのだそう。

「続いてはミルで細かく挽きます。一概にはいえませんが、粗挽きは薄く出ますし、細挽きだと濃くでることが多いです。今回はその中間の中弾き。お店では電動ミルを使いますが、ハンドミルでしたら気軽に購入できますよ。ただ手で挽くのはけっこう疲れる作業ですから、毎日淹れたい人には正直電動ミルがオススメです」

坂尾さんオススメのコーヒーミル。自宅用と屋外用を使い分けるのもアリかも?  ナイスカットミル/Kalita(左)コーヒーミル/ポーレックス(右)

やってみると……たしかにひと手間。1人前(13g)の豆を挽ききるのに3分ほどかかるほか、腕力もいる。だが、手間を無駄と捉えては粋じゃない。
たとえば休日に窓からの景色を眺めながら、コーヒーの下ごしらえをするなんて、なかなか優雅な過ごし方じゃないか。かくしてコーヒーパウダーのできあがり。ここから先がコーヒーの味を決める“お湯”との語らいだ。

「豆の量もそうですが、しっかり計ることが大切です。スプーンの軽量線に合わせるのではなく、ちゃんとスケールで重さを計って下さいね」

ドリップはお湯とのセッション。決まったリズムを刻むべし

「お湯は1杯分225mlを沸騰させてください。ここで気をつけていただきたいのが、お湯の出る量が一定のポットで注ぐこと。電気式のテーブルポットでも、注ぎ口が長いものをセレクトしましょう」

コーヒーフィルターにパウダーを乗せたら、大きく円を描くように注ぎながら、ティースプーンで攪拌。きっかり40ml注ぐ。そんなの難しい? いやいや、デジタルスケールに一式乗っけてゼロ表示しておけば簡単だ。

「以前は100円玉サイズの円を描いて注ぐ……というのがセオリーでしたが、実は香りを出すためには大きく円を描くように注ぐのがいいんです。パウダーは顕微鏡で見るとハニカム状の構造をしています。内部空間にお湯が行き渡って均一に蒸らせるよう、ティースプーンでしっかり混ぜながら注ぎましょう」

こぼれなければけっこうグイグイ回して大丈夫だ。注ぎ終わったら40秒の蒸らしタイム。そのころ部屋には、コーヒーのいい香りが充満していることだろう。しっかり蒸らしたら、ここからがいよいよ忙しい。40〜50mlを、20秒おきに注いでいくのだ。タイマーをしっかり見ながら、ルールを守って注いでいけば、1分40秒ほどで注ぎ終えるハズだ。ここからドリッパー内のお湯が落ち終わるのを持って、これでできあがり。

コーヒーとの出会いは一期一会。再び出会うためには、腕を磨こう

「時間を掛けてじっくり出す手法もありますが、うちではサッと淹れています。そのためのお湯の回し掛けでもあるんですよ。淹れたてがおいしいですよ。どうぞ」

う〜ん、苦さというより果実感と甘さを感じる。最初に飲んだホンジュラス産と比べると酸味が強く、バニラっぽい甘さも感じる。だがあくまでライト。コーヒーらしいコクは、アイラ島産のウィスキーで感じる“ピート”のように、後味を包み込むように訪れる。

湯を沸かし始めてから完成するまで、およそ10分程度のこと。インスタントコーヒーなら5分もかからないかもしれないが、あえて掛ける手間と時間に豊かさが宿るとはむべなるかな。ある程度集中を要する時間だが、仕事の集中とはまた趣の違う豊かさがある。

「農産物ですから、毎年同じ豆はできません。2度と会えないおいしい1杯に出会ったこともありますし、一般の方でもプロをしのぐ味わいを作ることがあります。ぜひいろいろ試して下さい」

香りや味ととともに、作る時間も楽しむ。楽しく場数を踏むことで、腕は自然に磨かれることだろう。これぞ大人の週末の醍醐味。さて次回は、さらにコーヒー豆と淹れ方について学んでいこう。楽しく精進あるのみだ!

 

■教えてくれた人

坂尾篤史さん
1983年生まれ。オーストラリアでカフェの魅力に取りつかれ、帰国後バリスタ世界チャンピオンの店でコーヒーの修業。2012年、奥沢にオニバスコーヒーをオープン。トレーニングやワークショップなど行いながらコーヒー農園にも積極的に訪れる。14年、渋谷に『ABOUT LIFE COFFEE BREWERS』をオープン。15年「RATIO coffee & cycle」、16年にオープンし、今回訪れたオニバスコーヒー中目黒店は、駅からほど近い大人の止まり木だ。

住所:東京都目黒区上目黒2-14-1
電話:03-6412-8683
営業時間:9:00〜18:00(不定休)
http://www.onibuscoffee.com

■緊急告知!

坂尾さん直伝!「オーシャンズ」読者向けワークショップを5月28日(日)に開催!!
※募集は終了いたしました。たくさんのご応募ありがとうございました。

おいしいコーヒーについてより詳しく知りたいなら、坂尾さんに直接教えを請うべし! というわけで5月28日(日)に、「オーシャンズ」読者に向けたでワークショップを開催(午前・午後の2回予定)。おいしいコーヒーを淹れるポイントを映像&レクチャーで、さらに飲み比べとハンドドリップを実践することで、週末を楽しむ大人のコーヒーマスターへ一歩近づけるかも!? 「オーシャンズ」定期購読者なら、なんと無料で参加できる!

日時:5月28日(日)
①午前の部 10:00〜12:00(09:30受付開始)
②午後の部 13:00〜15:00(12:30受付開始)
場所:ONIBUS COFFEE 中目黒店
〒153-0051 東京都目黒区上目黒2−14−1

取材・文=吉州正行
撮影=小島マサヒロ

次回を読む

# コーヒー# 趣味
更に読み込む